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転移の法則〜二十歳で始まりいつか終わる〜  作者: 水たまりに傘と青
檜田 茉莉花の桧暮らし(願望)〜家主によって邪魔される居候のスローライフ〜
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20/30

20.Marika's After Story

「あーかわいーまじかわいー。

 狼さーーん。

 もふもふー!!!」


 引っ越してから、二ヶ月は経っただろうか。

 動物たちは着実に増えていた。

 みんな私の僕(しもべ)になれ。


「狼さん、美味しそうなお肉取ってきてくれる?

 群れで協力してもいいよ。

 自分たちの分にプラスして私の分を少しでいいから。

 うさぎさん一匹くらいの量。

 お願いね。」


「わん!」


 まじ可愛い。

 動物天国。

 庭にあった謎の机と椅子。

 そこに私は今座っている。

 リスが小さい木の実をくれたりする。

 しかも凶暴だと思ってたオオカミも懐いてくれた。

 屋敷にいる動物アレルギーの人は私がご飯を食べに行くたびくしゃみが出るそう。

 すごく申し訳ない。


「ご飯も屋敷で食べるけどさ。

 ……………。

 おやつとかお茶欲しくね?」


 だってスローライフだよ?

 念願かなってスローライフだよ?

 川はある。

 なんなら水道あるらしい。

 この木の実たちは集めてジャムにするし。

 なんかもぐらが畑耕してるし。

 リスが種蒔いてるし。

 私何もしてなくても畑ができそう。


「おやつ?

 俺にもちょうだい。」


「ぴぎゃっ!!」


 潰れたみたいな声出た。

 なんでいんの??

 真昼間ですけど??


「ご飯の時間だよ。

 遅いから迎えにきちゃった。」


 真昼間すぎたらしい。

 アラームかけておけばよかった。

 何回かこうして後悔するけど面倒臭い。


「すぐ行きます。

 鳥さん鳥さん。

 狼さんが帰ってきたらお肉冷やしておいてくれる?」


「ちゅっちゅぴー!」


 この鳥も何かスキルがあるらしい。

 氷属性なのだろうか。

 魔法みたいだ。

 物を凍らせるとかができる。

 大変に便利だ。

 ご飯から戻ってきたら冷蔵庫に入れよう。

 ちなみに冷蔵庫も印具らしい。

 印具は思ったよりも身近にあった。


「じゃあ頼んだからね。

 行ってきます。」


 行く時はこうして声をかけている。

 何も言わないで寝ている時があった。

 一時期。

 そしたら、外から何か聞こえるのだ。

 心配してるのか動物たちの悲鳴みたいな鳴き声が。


「すっかり手懐けちゃったね。

 すごい。」


「貢物を受け取っているくせに何言ってるんですか。

 その木の実美味しいですよ。」


 桧の森だけど、中には桧以外もあるらしい。

 よくわからない木の実ももらう。

 食べれるか聞いて、毒がないものは食べる。

 毒があるものはどうしようかと保管する。

 果実みたいな木の実は洗って食べる。

 胡桃みたいに種子の木の実は茹でるか炒める。

 灰汁が強いものもあるみたいだし。

 リスが苦くて危ないと言ったものは食べない。

 言うというよりは、分類してくれるんだけど。

 苦いものはこっち、甘いものはこっちって。


「ただいまー。

 動物アレルギー覚悟ー!」


 ユウさんが遠くからついてくる。

 アレルギーだったらしく、いつもこんな感じだ。

 私たちが角を曲がると一つ手前の角を曲がる。

 だから多分姿は見えてない。

 たまにキョロキョロしてるのを見かける。

 そして身近なアレルギーの人。

 もう一人は………。


「っくし。」


 ベリルさんである。

 マイラさんは済ました顔してるけど、ベリルさんは。

 鼻を啜っている。

 やっぱり私来ない方がいいんじゃない?

 仕事だけどさ。

 一緒に食べるのが仕事ならトーアさんがご飯を持ってくればよかった。

 けど屋敷で食べるのが仕事だから……。

 一応来る前に手も洗う。

 けどコロコロが欲しい。

 正式名称はコロコロじゃないみたいだけど。


「いただきまーす。」


「いただきます。」


 もう初夏で暑くなってきたからか、冷製スープだ。

 私好き。

 冷製スープ。

 多分もっと夏になればカボチャの冷製スープになるんじゃない?

 今から楽しみである。


「最近どう?

 暑くない?」


「平気です。

 そこまで気温も上がりませんし。」


 地球の初夏に比べればだいぶいいものだ。

 冷房すら必要ない。

 夏になってもあんまり暑くならないかもしれない。


「すごいなー。

 まあクーリーバードがいるし困んないか。」


 あの冷やしてくれる鳥のことだろう。

 頼めば家も冷やしてくれるのかな……。

 大変じゃない?


「いえいえ、まだ全然暑くないですもん。」


「ねえマリカちゃん。」


 急にどうしたんだろ。


「貴族になる気………じゃなかった。

 そろそろ俺誕生日なんだよね。」


 全然関係ないじゃん。

 貴族と誕生日。


「明後日なんだけどさ。」


「ちょっと急すぎます!」


 何も買ってないんですけど!?

 そんな急に言う!?


「ああ、それはごめん。

 まあ、パーティがあるの。

 俺の実家で。

 来てくれない?

 パーティの度に縁談とか面倒で。

 せっかくの誕生日なのにさ。」


「それこそ急すぎますよ!?

 何も準備してないじゃないですか!」


 私着て行ける服もなければ作法もないんですけど!


「断りはしないのね。

 ありがと。

 ドレスとかもうオーダーして完成してるし。

 この二日はまた泊まって行ってよ。

 レイズが作法を叩き込んでくれるよ。」


 あっ。

 用意周到すぎる。

 って言うか、じゃあ強制じゃん。

 って言うか、スローじゃないライフになりそうこの三日!

 虫除けは別にいいけどさ。

 恨まれたりしないかなー。


「断れないじゃないですか。

 あとで一旦帰りますよ。

 荷物とか必要ですし。

 お肉もあるし。」


「うん。

 助かった。」


 てか貴族のパーティに私が出るのか。

 「どこのお家の方!?」

 って言われそう。

 ヴィンソン子爵令嬢事件再来な可能性ある。

 まあ平気か。

 きっとあの人のこともみんな聞いてるでしょ。

 それに、誕生日なら身内ばかりなはずだ。

 トーアさんの。

 多分まだ安心できる。







 トーアさんの誕生日。

 茉莉花はとてもそれはそれは貴族らしい服を着ていた。

 コルセットをギチギチにしめられて。

 ひらひらふわふわの裾で。

 肩から肘くらいまでTHE素肌。


「はず!

 こんなんで人前に出るの!?」


「みんなそんなもんだよ。

 まだマシな方。

 もっとヤバい人とかザラにいるから。」


 ………。

 まだ胸元が開いてなくて手袋があるだけマシか。

 裾もまあそれなりに長いし。


「まあ肩くらいいいですよ。

 これならスク水の方がヤバいですもん。」


「なにそれ?」


 スク水なんて足全部出るからな。

 あれよか本当にマシだ。

 あれで体育合同とかいかれてる。

 高校からは必修科目じゃなくなってよかった。


「なんでもありません。

 じゃあ、行きましょうか。」


「そうだね。

 じゃあ今日は俺がエスコートしないと。」


 貴族らしく振る舞えるかなあ。

 全然貴族じゃないけど。

 田舎者感は出さない方がいい。

 レイズさん直伝。


「行ってきます。」


「いってらっしゃいませ。」





「つきました。

 ラピア公爵邸です。」


 公爵!!?


「待ってくださいトーアさんそれは初耳です。

 どうしよう私なんかが入っていいのかな………。

 作法できるかなあ………!」


「言ってなかったっけ?

 まもう着いちゃったし。

 行くよ。」


 怖い怖い怖い怖い。

 不安だー。


「大丈夫だって。

 ほら、緊張した時はどうするの?」


 緊張した時は、笑う!

 

「私は大丈夫!

 絶対平気!」


「そう。

 じゃあ入ろうか。」


 うぅーーー。

 でもやっぱ怖いよ!




「それでは本日の主役。

 我が弟にして若き伯爵。

 シュートーア・レイベンの入場!」


 ついにきた!

 怖い!

 笑え!

 ヤケクソだ!

 どうなっても知るもんか!


「えっ、レイベン卿が女性を!?」


「あの方はどなた?

 初めて見ますわ。」


 やっぱり注目されてるー!

 ダメだ。

 心が折れる。

 元々人前に立つのは得意じゃないのに!


「笑って。

 みんな見てるよ。」


 だから笑えないんですよ。

 歪でもいいからとりあえず口角を上げよう。

 ああ怖い。


「お久しぶりですな。

 レイベン伯爵。」


「そんな他人行儀な。

 本日は私の誕生日ですよ?

 兄上。」


 今更だけど兄弟いたんだ。

 だから家を興したのかな。


「そうかい?

 じゃあ今日はそう言うことにしようかな。

 トーア。

 ところでそちらの女性は?」


 ほら飛び火した!

 ってか、仲良い人はトーアって呼ぶんだ。

 私もその仲間?

 ちょっと嬉しい。


「私の恋人です。」


 こいびっ…………!!!???

 そ、そっか。

 そうだよね。

 虫除けなんだからそう言われるよね。

 焦った………。


「へえ、あのトーアが。

 初めまして、お嬢さん。

 お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 あっ。

 やばい。

 檜田 茉莉花。

 大ピンチ。

 明らかにこの世界の名前じゃない。


「茉莉花、です。

 お、初にお目にか、かります。

 ラピア公爵様。」


『実家は代替わりしたんだよねー。

 まあラピア公爵って呼べばいいよ。』


 ってさっきトーアさんが言ってた!

 これでいいんだよね?

 貴族らしく礼できた?


「マリカ嬢?

 ご実家は………。」


「両親を亡くしていて、家も取り壊されたそうです。

 それからまだ半年も経っていません。

 あまり深くは聞かないようにお願いします。」


 両親殺された!

 生きてる!

 多分!

 弟もついでに!


「それは、辛い思いを。

 失礼しました。」


「お、お気になさらず…。

 わた…くしは平気ですので。」


 危ない私って言うとこだった。

 せーーふ。


「ならよかったですが……。

 トーア、また拾ったのか?」


 え゛っ!!

 バレた!?

 私がうまくできなかった!?


「拾ったって………。

 違いますよ、保護したんです。」


「それを拾ったと言うんだ………。

 もしやと思うが、平民だろう?」


 バレた!!!

 あんまり大っぴらに言わないのが助かるけど………。


「ええ、まあ。」


 正直に言うんだ!

 え!?

 ヤバい全然わかんない。


「………。

 結婚相手は別に見繕おう。

 私も手伝うから………。」


「必要ありません。

 何度も言っているでしょう。

 後継は養子を組めばいい。

 必要ありません。」


 バレたら虫除け効果ないじゃん。

 どうしよ。


「だが、それではその後継が苦労するぞ。

 貴族の令嬢と結婚せねばお前の立場も………。」


「あんなやつらに私の家には触れさせたくありません。

 ヴィンソン子爵令嬢のことをお忘れですか?

 兄上がつけあがらせたせいですよ。」


 え、そこに繋がるの?

 もしかしてヴィンソン子爵令嬢を勧めてたのかな。

 トーアさんのお兄さんの口添えがあったのかな。

 だから子爵令嬢なのに伯爵に無礼なことを?


「その件は、本当にすまない。

 だが、それとこれとは話が違………。」


「いざとなれば彼女を貴族にすればいい。」


 え!!???

 初耳なんですけど!!??


「トーアさ…。

 レイベン伯爵、何言ってるんですか。

 私を貴族に……!!?」


「本人は随分驚いてるみたいだけど?」


 ほんとに!!

 心臓止まるかと思った!


「初めて言いましたから。

 まあ何回かそれらしいことは言いましたけど。」


「え!?

 いつですか!

 あ、「貴族になる気ある?」ってやつですか!

 それなら私お断りしました!」


 待ってよ。

 「貴族になる気ある?」

 が結婚問題につながる………。

 左手の薬指に指輪………。

 屋敷を出るのを結構渋って…………。

 ………………だからなんなんだっけ。

 さっきまで何考えてたっけ。

 え?

 あれー?

 よくあるやつだ。

 大事なことに限って考えてる途中で忘れるやつ!

 え、本当になんだっけ。

 待って???

 何言おうとした??

 「貴族になる気ある?」

 ないです。

 なんで「貴族になる気ある?」なんだっけ。

 あーもう混乱してきた。

 考えんのやめよ!!


「大丈夫?」


「あ、ごめんなさい考え事してました。」


 内容放棄したけど。


「よかった急に固まるから。」


 私は電波をうまく受信できてないテレビかなんかですか。


「それじゃあトーアはそろそろ主役の役目を果たしたらどうだい?

 みんな待っているよ。」


「そうですね。

 すっかり忘れていました。

 本日は私が主役なのでした。」


 あっ、貴族顔になった。

 兄弟には兄弟顔、客には貴族顔。

 領民のみんなや使用人には領主顔。

 いや、使用人さんたちにはおちゃらけ顔?

 私にもおちゃらけ顔。

 貴族って顔がたくさんあって怖いなー。


「ほらマリカちゃ………。

 マリカ嬢もこちらに。」


 え、なんか照れる。

 嬢だって。

 お姫様みたい!

 私がそう呼ばれる日が来るなんて………。

 苗字だよね、でも基本。

 苗字名乗ったら「ヒダ嬢」になるの?

 ヒダ状みたいで嫌だな。


「これはこれはレイベン伯爵。

 この度はお誕生日おめでとうございます。

 24でしたか。

 そろそろご結婚相手を考えては?

 うちの娘など………。」


「やあ、これはタンター侯爵。

 ありがとうございます。

 ご心配はありがたいのですが、あいにく間に合っております。」


 ひゃぅーーこわい。

 笑顔を保つので精一杯。

 って言うか虫除けではあるけどさ。

 婚約者みたいな言い方したらのちのちトーアさんが困るよ。

 やめといた方がいいって!


「それは残念。

 今度は是非ご紹介ください。

 レイベン伯爵の認めた相手を。」


 え???


「貴方の目の前にいますが?」


 私スルーされたよね今。

 虫除けになってなくない?


「ご冗談を。

 そんな作法も拙い女性ではあるまい?」


「作法が拙くても品のない者よりはマシですよ。

 作法なんて別に見ておりません。

 ゆくゆくはもちろん大事になりますが。」


 作法が拙くて悪かったですね!

 あとトーアさんしれっと喧嘩売りましたね?

 お宅の娘さんは品がないですって聞こえたんだけど。

 そんなこと言っちゃダメだよ!


「失礼な。

 行くぞ、フェーメル。」


「本当ですわ。

 レイベン伯爵がそんな方だとは思いませんでしたわ。」


 え?

 嫌われた?

 嘘だ。

 でも………。


「すぐにまた媚びてくるよ。

 自動発動だからね。

 あのスキル。」


 思考を見透かされた気分。

 そんな皮肉言わなくてもいいのに。

 って言うかトーアさん話遮りすぎ。

 結局あの女の人挨拶できてなかったし。


「レイベン伯爵。

 ご無沙汰しております。

 …………。」






 挨拶は一通り終わったらしい。

 ずっと立っていて疲れた。


「トーアさんそろそろご飯取ってきたらどうです?

 主役が何も食べないわけにはいかないでしょ?」


「じゃマリカちゃんも来て。

 一緒に食べよ。

 ご飯だけとって別の部屋行けばいいしさ。」


 おい主役何抜け出そうとしてんだ。

 でも、賛成。

 本当に大変だった。

 何回も何回も作法がどうたらどこの家だの言われて。

 その度にトーアさんが切り返してほんとに。

 私ほぼなんもしてない。

 言われるがまま言わせるがまま。

 立って挨拶してただけ。








「疲れたーー。

 もう会場戻りたくないーーー。」


「主役が何言ってんですか。

 ちゃんと戻ってくださいよ。

 と言うかお兄さんにどこに行くって伝えたんですか?」


 私が一緒に行動してた限り伝えてないよね?


「兄上はきっとわかる。

 兄上だから。」


 理由になってない。

 とりあえずご飯美味しい。


「ね、抜け出して帰らない?」


「主役が何言ってんですか。

 ちゃんと会場戻ってくださいよ。

 私がbotになる前に。」


 もうなりかけだけど。

 主役が何言ってんですかしか言ってないもん。


「えーー。

 マリカちゃんは帰りたくないの?」


「ものすごく帰りたいです。

 今から明日の今くらいまで寝たいです。」


 でも多分そんなに睡眠は続かない。

 普通に8時間9時間寝たら起きる。

 だいたいいつもそんな感じだし。


「でしょ?

 抜け出して帰ろ?」


「主役が何言ってんですか。

 ダメに決まってるでしょ。

 ちゃんと現実見てください。」


 そんな子供みたいに頰を膨らましてもねえ。

 あれ?

 コンコンコンとちょっと早いスピードでドアノック。


「レイベン伯爵。

 こちらにいるのでしょう?

 失礼いたしますわ。」


 そしてドアが開く。

 誰?


「ああよかった。

 間違っていなくて。」


「ヨルゼン伯爵令嬢。

 入室は許可していませんが。」


 返事も待たずに勝手に開けたもんね。

 あとこっちをチラ見しただけで終わるのやめてくれる?

 居た堪れなくなるから。


「こんなところで何をなさっているのです?

 ダンスのお時間ですわよ。

 ファーストダンス、わたくしとお願いいたしますわね。」


「ヨルゼン伯爵令嬢と?

 すみません。

 貴女がいつも仰るように私は田舎者ゆえにダンスはちょっと………。」


 今ご飯食べてたんだけどなあ。

 ねえちらちらこっち見るのやめてくれない?

 失礼だなー。


「何を仰るの。

 構いませんわそんな些細なこと。

 良いから行きましょう?

 そんな女なんか置いて。」


 貴族令嬢怖すぎる。

 トーアさんがモテすぎるせいだけど。

 あの人気スキルやっぱ不便なのかなあ。


「本日私がエスコートするのは彼女と決めておりますので。

 ダンスは他の方を当たってください。

 他人をすぐに見下すような方とは関わりたくありません。」


「なっ!

 もういいですわ!

 そんなこと言って、後悔なさらないといいわね!」


 ほんとだよ。

 ご令嬢ネットワークは怖いんだよ?

 でもその捨て台詞も面白いけどね。


「どうせ孤立するのはあの人だよ。

 世界は俺の味方だから。」


 人気スキル強すぎるっす。










「今日はありがとう。

 俺の都合だけで大変な役任せちゃって。

 ごめんね?」


 パーティが終わり、時は深夜。

 今から帰るのは大変と言うことで泊まるらしい。

 確かに朝出て夕方くらいに着いたし。

 今から帰る貴族が多いけど、トーアさんの実家だから泊まれた。

 怖い。

 何も起きないかな?

 恨まれたりしてない?

 主にご令嬢を連れてたお家に。


「平気です。

 トーアさんが色々バッサバッサ切り倒してくれましたから。

 帰りは明日の朝ですよね?」


「うん。

 朝ごはんは出してもらえるって。

 兄上も気前がいい。

 さすが兄弟って感じでしょ?」


 トーアさんの場合は気前良すぎるけど。

 家買ったり居候だったりご飯食べて話すだけなのにお金もらえたり。


「トーアさんの場合はもっとお財布の紐を締めないとですね。」


「使い道ないからいいの。」


 あれよ。

 使い道くらいあれよ。

 多分予算じゃなくて私財なんだろうけどさ。

 と言うかじゃなかったらやばいけど。


「じゃあおやすみ。

 なんかあったらすぐに呼んで。

 少しの異変でもすぐに。」


「過保護ですねー。

 わかりました。

 トーアさんもですよ。

 お役に立てるかわからないですけど。

 おやすみなさい。」


 そして部屋に入る。

 真っ暗。

 だんだん目が慣れてきて、一番近くのランプを灯した。

 真っ暗よりも少し明るい方が睡眠の質がいいらしい。

 光源を確保してから、枕元のランプに向かう。

 そしてつける。

 寝るには眩しい。

 最初のランプに戻ってそれを消し、ベッドに戻る。

 ………途中で、ソファに人がいるのが見えた。


「!!!?????」


 おばけ!!???

 やだ怖い!!

 なになになになに!!??

 誰!?


「やっと気付いた。

 警戒心なさすぎだよ君。

 よく今までやってこれたね?

 しかもトーアの横で。」


 トーアさんのお兄さんだ。

 なんでいるの!?

 トーアさん呼ぶ?

 呼ぶ?

 呼ぼ?


「僕がきたのはトーアに内緒にしてくれるかな。

 怒られちゃうからね。」


「……………。

 なんの、用ですか。」


 まだ、呼ばない。

 本当にやばくなったら、呼ぶ。


「君に忠告だよ。

 まだ守られていて安全かもしれないけど……。

 トーアの近くにいたら君まで危ないよ。」


「知ってます。

 身に染みてますから。

 …………それだけですか?」


 わかってる。

 守られてるだけなのも。

 危ないのも。

 だから一応まあ距離とったはずなんだけど。

 向こうから近づいてくるんだよね。


「いや、わかってないな。

 だって僕が呼ばないでって言ったら本当に呼ばなかった。

 警戒してなさすぎるんだよ。

 もしこれで僕がナイフでも使って君を襲ったらどうしてたの?」


 いやだからわかってるって言ってるじゃん。

 呼ぶ必要なかったから呼ばなかっただけだけど?

 どうせ指輪ですぐ呼べるし。


「知りません。

 呼ぶ必要ないですもん。

 トーアさんのお兄さんがそんな急に何かしてくるとは思えないので。

 トーアさんのお兄さんですし。」


 黙っちゃった。

 一応呼んでおく?


「………。

 そう言うとこが警戒してないんだって。

 トーアに迷惑かけないでね。

 トーアとの結婚は、認めよう。」


「え?

 なんの話ですか?

 結婚?

 何がです?」


 待ってなんでそうなった??

 どうしたの??

 え????


「え?

 トーアと結婚するんじゃないの?」


「いや、そもそも恋仲じゃないです。

 今日は虫除けに呼ばれただけで………。」


 言って良かったのかな。

 お兄さんは縁談持ちかけてこないんだっけ?

 わかんないや。

 まあいっか。


「あ、そう……?

 じゃあ僕の早とちりか……。

 え、いやしかしなあ。

 うーーーん???

 まあいっか。

 ………じゃあ迷惑かけたね。

 お邪魔しました。」


 なんだったんだろ、一体…………。










「おかえりなさいませ。

 夕食の支度が整っております。」


「じゃあ先に食べるよ。

 それでいいね?」


 結局わからず終いだった。

 あの後は何も言ってこなかったし。

 かと言ってトーアさんが何か言われたわけでもないのかな?

 何がしたかったんだろう。

 トーアさんのお兄さん。


「マリカちゃん?

 大丈夫?」


「あっ、すいません。

 なんでしたか?」


 話を聞いてなかった。


「今からご飯でいいね?」


「構いません。

 ですが、昨日は帰ってないので今日は早めに帰りますね。

 動物たちが心配です。」


 もし丸一日鳥さんがお肉冷やし続けてたらどうしよう。

 木の実が溢れてたら………。

 畑にするつもりじゃないところまで耕されてたら………。

 動物たちは賢いけど、人間の常識がない。

 いや、私の常識。


「わかった。

 じゃあご飯にしよう。」


 私がいなくても統率が取れるのか、心配だ。








 七時には帰ってくることができた。

 着いてまず見るのは、庭だ。


「遅くなったー!

 ごめん大丈夫だった?」


 どうやら大丈夫だったらしい。

 鳥さんが肉を冷やし続けてることもないし。

 木の実が溢れてることもない(だいぶ増えてはいた)。

 畑が大きくなり過ぎてることもなかった。


「みんなありがとうって思ったけど、帰ったのかな。」


 夜行性の動物以外はいなかった。

 その子たちにもお礼を言って戻る。

 軽くお風呂に入って、入念に掃除してから布団に入った。


「昨日今日は疲れた………。

 トーアさんの実家のご飯も美味しかったなー。

 私も今度料理したい。

 マジで疲れ…………た………。」


 そんな、変な、タイミングで……。

 発動…すんな……………。

 就寝………………スキル…………………………。



















 茉莉花のスローライフはまだ始まったばかり

 Marika's Slow Life Has Onry Just Begun.

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