↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移の法則〜二十歳で始まりいつか終わる〜  作者: 水たまりに傘と青
檜田 茉莉花の桧暮らし(願望)〜家主によって邪魔される居候のスローライフ〜
PR
17/30

17.Marika's Slow Life

 ご飯。

 あと何回だ。

 1、2、3…………。

 これ含めて13回?

 いや、14かな。

 当日は朝ごはん食べさせてもらうとして。

 あっ、お昼数えてなかった。

 20回か。


「…………。

 いただきます。」


 また元気なくしてるし!


「もー。

 トーアさんずっとそんな調子じゃないですか。

 どうかしました?

 いただきます。」


 むすっとした顔で見てくる。

 子供か!


「一週間。」


 どんだけ根に持ってるんだ。

 一週間嫌いすぎでしょ。


「それまでなにしたい?」


 希望調査。

 進路ではなく遊びの希望調査か……。

 正直大きくなってから物欲とか無くなってきてるからなあ。

 いや、スローライフも似たようなもんか。


「あっ!

 あっ、いや…………。」


「どうしたの?

 お兄さんになんでも言ってみなさい。」


 急に元気になった。

 やっぱ世話好きだなあこの人。


「いや、馬に乗れたらなーって思ったんですけど………。

 馬持ってないし乗れないし。

 どうせ転移陣繋ぐならいいかなって。」


「ベリル。」


 判断が早い。


「かしこまりました。

 ケーレ、良いものを。」


「はい!」


 伝言リレー?

 それベリルさんが間に入った意味は?


「あとはなにしたい?

 あ、ねえ一週間くらいサボ………。

 休んでもいいよね?」


「雪解けですよ旦那様。

 …………。

 週明けの覚悟がおありで?」


 あら優しい。

 それトーアさんがイェスって言えば休ませてくれるの?


「ぐっ。

 背に腹はかえられない………。

 もちろん。」


「では頑張ってくださいね。

 急ぎのものは明日やりましょう。」


 珍しい。

 トーアさんが勝った。

 休みをもぎ取った。

 すごいな………。

 引っ越しパワー。




 そうしてなんだかんだぐだぐだの食事が終わった。

 まだ寝たくない。

 寝たら、明日になってしまう。

 一日、減る。


「やっほーマリカちゃんいるー?」


「やっほーマリカちゃんなんていません。」


 なんかきた。

 あと地味に元気になってる。

 ノックしろ。


「区切るとこおかしくない?」


「わざとです。」


 やっほーマリカちゃん。

 なんか、あれみたいだ。

 車屋さんとかにある謎の細長い顔がついた風船。

 下から風を送られ続けつつ風に煽られるせいでふにゃふにゃしてるやつ。

 くねくねの間違いかな。

 エアダンサーとか言うアレ。


「失礼するね。」


「失礼するなら帰ってー。」


 通じるかな。

 「邪魔すんでー。」

 「邪魔するなら帰ってー。」

 「はな帰るわー。

  ってなんでやねん!」

 のやつ。


「え?

 え?

 やめといた方がいい?」


「ごめんなさいふざけましたどうぞ入ってください。」


 完全敗北。


「あー。

 びっくりした。

 死ぬかと思った。」


 それはびっくりしすぎじゃない?


「それで、何の用ですか?」


「あー、そうそう。

 この部屋とあの家繋ごうと思ってね?

 だから繋がせてーってだけ。」


 なるほど。

 本気で繋ぐんだ。

 向こうの家も、2DKのうち、一部屋は寝室だけどさ。

 あと一部屋余るじゃん?

 そこに転移陣繋げてもらおうかな。

 さすがにトーアさんが来た時に寝室じゃ嫌だから。

 起きちゃうじゃん。


「どこがいいとかある?

 いっそ姿見にしちゃう?」


 おお、すごく王道な感じがする。

 鏡から現れる人。

 ロマンはある。


「クロゼットとか面白そうですよねー。

 いるんでしょ!?

 出てきなさい!

 とか言って。」


「なにそれー。」


 やっぱ伝わらないよねえ。

 ムシの服着た人がたくさん出てきて歌うやつ。

 私音痴がいるバージョンが一番好きだなー。


「ちゃんと歌いながら出てきてあげますよ。

 まあ音聞こえないでしょうけど。

 聞こえたら嫌ですもん。

 音はあとで繋げばいいじゃないですか。

 水鏡とか。」


「じゃそれやるか。」


 え?

 転移陣だけじゃないの?

 できるのって。

 もしかしてトーアさんのスキルだったりする?

 空間接続的な。


「できるんですか?」


「うん。

 お金もかかんないよ。

 俺のスキルだから。

 見る?

 笑われない自信ある。」


 私のみたら笑う自信はあるのに?

 まったくもー。


「見ます。

 でも私のは見せません。

 絶対に。

 心に誓ってるんで。」


「えー、厳重だなー。

 そんなに笑っちゃダメなの?」


 自分のことを笑われるのはいい気分じゃないと思うけど。


「じゃ可視化しておいとくから。

 陣はクロゼットでいいのね?」


「よくないです!!

 姿見でお願いします!!」


 ほんとに歌いながら出ないといけなくなる。

 てかやんないとぶーぶー言われそうなだけでやらなくていいけど。


「じゃ《接界(せっかい)ノ印(いん) 此彼(しひ)》。」


 なんじゃそりゃ。

 へ???

 スキルってステータスウィンドウをぽちぽちして発動するやつじゃないの?

 ボイスコマンドでもいけるの?

 どこかに書いてたりしないかな………。

 でも先にトーアさんのスキル見ちゃお。


 【スキル】

 〈接界:印を置くことで此(あちら)と彼(こちら)で何かを繋げることができる。〉

 〈備蓄:マナを体内に取り込み貯めることで日常生活動作(ADL)を数日必要としなくなる。〉

 〈人気:世界のなにからも愛される。〉


 いやつよ。

 私のへっぽこスキルはなんなんだ。

 つよ。

 …………。

 でも、ああそうか。

 人気スキルのせいで、誰からも嫌われなかった。

 愛されて当然だった。

 なんか意外かも。

 思ってたより、だいぶ闇深くない?

 でも、それって。

 今まで信用できる人はいたの?

 親は?

 家族は?

 それを知ったとき、トーアさんはなにを思ったの?

 トーアさんは、それが嫌だったのかな?

 だから異世界人でスキルの通用しない話し相手が欲しかったのかな?

 世界で一番愛されながら、世界で一番愛を知らない。

 世界一の愛が突然消えたら。

 とても恐ろしいと思う。

 いつもの笑顔もトーアさん。

 貴族の怖い顔もトーアさん。

 でも両方仮面なんじゃ?

 多分素顔は、泣きじゃくる子供?

 そんなまさか。

 どっちも、ほんとのトーアさんなはずだよ。

 わからないけど。

 ほんとは、この人は、なんなの?


「…………。

 トーアさん…………。

 トーアさんのスキルつよすぎますんで備蓄スキルください!

 私の方が使いこなせる!」


「え、急にどしたの?

 なんの張り合い?」


 だってそれがあれば寝てるだけでいいじゃん。

 勝手にマナはできて、そのマナを貯めるから食べなくてよし。

 最高じゃん。

 あっ、ステータスウィンドウ消えた。


「…………。

 見たでしょ?

 俺のスキル。」


「はい。

 見ました。」


 見たから、なんなのだ。

 トーアさんはトーアさんだ。

 この屋敷の人たちがトーアさんを慕っているのも。

 領都のみんながトーアさんを慕っているのも。

 全部スキルのせいだけじゃない。

 トーアさんの人柄もある。

 だって、スキルだけで人間の感情は操作できない。

 できていいはずがない。


「なにも、言わないんだ?

 怒らないの?

 俺のことを俺の性格じゃなくてスキルでみんな慕ってるんだよ?

 騙されてたって思わないの?

 そんな人だったんだって、幻滅しないの?

 嫌いにならないの?

 なんで?」


「思いません。

 いつかトーアさんが言ってましたよ。

 私は私。

 じゃあトーアさんもトーアさんですよね。

 スキルだけで人の感情が固定されていいはずないんです。

 ちゃんと、トーアさんの人望ありきでしょ?

 ちゃんとみんな、トーアさんが好きですよ。

 そんなスキルがなくたって。」


 騙されただなんて、大袈裟な。

 怒るわけがないでしょ。

 人気スキルだって、トーアさんのせいじゃない。

 幻滅もしない。

 嫌いになんてなるわけがない。

 心配性だなー。

 本当に子供みたいだ。


「なんでわかるの?

 言い切れない。

 真相を知ったら、みんなきっと………。」


「どうしてそう悲観的なんです?

 考えてみてください。

 人気スキルがあったとてですよ。

 とんでもない暴君に人気スキルがあっても人は集まりません。

 何故って、スキル以前の問題なんです。

 人に好かれるような人にこのスキルがあってやっと。

 そこでやっとこのスキルは真価を発揮するんですよ。

 ただの憶測に過ぎないですけどね。

 これがわかりますか?」


 ちょっと、捲し立てたかも。

 自分でも、なんでこんなに弁護してるんだか。

 多分、トーアさんにそんなこと思ってほしくない。

 こんな重いトーアさん、見たくない。

 いつもの軽さで笑っててよ。


「人を説得するの上手いなー。

 言い負かすのは苦手なのにね?

 ありがと。

 元気出た。」


「元気出たで終わっちゃいけません。

 人気スキルなんかなくてもトーアさんは人に好かれる!

 はい!

 復唱!」


 困惑しながらちゃんと言う。

 なるほど人をいじる側は楽しい。

 これはトーアさんが私をいじめてくるわけだ。


「ふはっ。

 あははははははは!

 やっぱマリカちゃんそういうとこ面白いわ!」


 笑った。

 最近あんまり笑ったとこ見てなかったかも。

 笑われてるのに前みたいに怒れない。


「笑いましたね。

 元気になってよかったです。

 トーアさんが元気ないと私も元気でないですから。」


「マリカちゃんの元気なかったら俺が元気付けたいとこだけど………。

 今回は俺が元気付けられちゃったね。

 ありがと。」


 私を元気付ける前に自分が元気になりなよ。

 でも、よかった。

 なんか不安も吹き飛んだかも。

 これで心置きなく昼寝スローライフ………。

 あっ。

 お金………。

 なにして働こう。

 いや自給自足するならいらないか。

 育てるの時間かかるけど。


「トーアさん。

 私働かないといけません。」


「え?

 なんで?」


 なんでじゃないよ。

 お金ないって。

 働いてないもん。


「このままだとご飯が買えないんです。

 だから………。」


「ご飯の時間にうちくればいいじゃん。」


 うん?

 それ私が独り立ちした意味は?

 確かに家事も私がやらないといけなくなるけどさ。

 こう…………。


「迷惑じゃないからね。」


 先回りされた。

 でも家を出てった居候がご飯のためだけに戻ってくるのは。

 ちょっと。

 周りの人たちにも申し訳なくない?


「俺がそうして欲しい。

 言ったでしょ。

 俺寂しいと死んじゃうよ。」


「それじゃあとっくに死んでるとも言いましたよ。」


 ムーッとした顔になる。

 なんだその顔。

 どういう時の顔なのそれ。


「マリカちゃんが来る前の俺はもっと大人しかったんだよー。

 こんな気楽な話し相手なんていなかったからさ。

 できちゃったからには手放したくないじゃん?」


 怖いこと言うなー。

 この人なら監禁とかあり得そうで怖い。

 まあそんなことできるほど怖い人じゃない。


「なんでそんなに出ていって欲しくないんですか?

 トーアさんにとっての話し相手の重みもわかりましたけど……。

 うーーーん…………。」


「なんでって、いなくなって欲しくないから?

 俺もあんまわかんない。

 出てって欲しくないものは出てって欲しくない!

 じゃダメ?」


 ダメだと思ったならなんで胸張っていうの。

 納得しないこともないけど………。

 私もよくわかんないや。


「でも…………。」


「お願い!

 うちでご飯食べて俺の話し相手になるって言う「仕事」引き受けて!」


 仕事って言えば引き受けると思ったのかな。

 私が恵んでもらってるだけじゃん。


「お金も払う!」


「ご飯もらっておいてお金もらうわけには!!」


 それただ私だけが得するやつじゃん!

 ダメだよ!


「いや、仕事!!

 お願い!!

 引き受けて!!

 俺への利益は話し相手!

 マリカちゃんだけの利益じゃない!

 お願い引き受けて!

 って言うか引き受けろ!」


 この人初対面の頃からだいぶ変わったなあ。

 こんな人だったっけ。


「命令形!?

 えっ、でも……!」


「そう命令!

 引き受けなさい!

 領主権限ー!」


 公私混同とはまさにこのことである。

 領主の権限を私事に使うなよ。


「よくないですよそう言うの!

 …………。

 仕方ないですねー。

 ゼビアさんやマイラさんが良いと言ったらいいですよ。」


「わかった聞く。

 ちょっと待って。」


 嵐は(一時的に)去った。

 嵐の前ならぬ嵐の後の静かさ。

 このまま寝ちゃおっかなあ。

 にしても、ご飯食べておしゃべりする仕事て。

 なんて楽な仕事。

 それで稼げるだなんて。

 トーアさんが太っ腹すぎる。

 まだ決まったわけじゃないけど。


「一週間か。

 なんだ思ったより長いじゃん。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。