16.Marika's Slow Life
家に入った途端、桧の芳醇な香りが鼻を突き抜けた。
やばい至福。
高級感………。
今家族の誰よりも贅沢してるわ私。
家を見終わって、ダイニングで机を囲んでいる。
並んでいるのは美味しそうな料理ではなく、紙。
書類。
「ここ。
納税免除。
俺の土地だし。」
そっか。
あ!!
トーアさんのお金で買うトーアさんの土地ならば。
家賃払えばいいんだ!!
「いえ!
納税を家賃ってことにしましょ!」
名案だろ。
まあ働き方なんてないけど。
「いらないよ。」
「いえ払わせてください!」
なんとかまあ働いて払う。
どこで働くの?
周りに民家なんてないよ?
「職もないのに?
いいよこれくらい。
………。
じゃおっけ。
納税とか家賃の代わりにさ。
屋敷と転移陣繋いじゃお。」
転移陣とはなんぞ??
すごくファンタジーな名前が出てきたけど。
「そしたら俺もすぐこっち来れるし。
マリカちゃんもすぐあっち行けるし。」
「それトーアさんがこっちに来たいだけですよね。」
仕事サボって来たら………。
ベリルさんとマイラさんにこれまで以上に怒られるのでは?
それか仕事終わりにだけ来ていいとかしたら?
「うーーん。
ベリルさんやマイラさんの言うことをちゃんと聞くならいいですよ。
サボるためにこっちに来たら………。
転移陣とか言うやつ森に捨てますからね。
どんなのになるか知りませんけど。」
「えー。
まあ…………。
うーーーん。
うぅーーーーー。
…………それで。」
なんでそんなに渋るんだ。
サボるために来る気満々だっただろ。
「じゃ納税に関してはそう言うことで。
ここ来るの、何日後がいい?」
いろんな準備もあるし、明日とかは無理だ。
一週間あればいいだろうか。
「じゃあ、一週間後で。」
「それで大丈夫?」
居候も、一週間で終わりか。
桧かおる、暖かな家でお昼寝スローライフ。
実現できそう。
あと少しだ……。
「はい、じゃあお金は明日届けさせますね。
ありがとーございました。
帰ろっか、マリカちゃん。」
「は、はい。」
徒歩半日も、馬車で行けば2時間くらい。
やっぱりお馬さんは早い。
でも揺れる。
私が車酔いしない人でよかった。
ほんとに。
「………………。」
前に座ってるキツネさんは不機嫌である。
私たちが乗ってる一台と、サイスさんたちが乗ってる一台。
合わせて2台の馬車と、馬を操っている護衛さん四人。
今日はかなり人数が少なかった。
「……………。
一週間……………。」
たまにこんな呟きが聞こえる。
どうしてそんなに私が出たくの嫌なんだろう。
まあ普段の態度のせいで甘えん坊とは思わないけど。
「………………。」
空気が重くなってきた。
ちょっとトーアさん。
元気出してよ。
「……………………。
貴族……………。」
何かと葛藤してるらしい。
貴族となにで葛藤してるんだろう。
私には想像もつかないな。
あのあと、いつのまにか機嫌を取り直したキツネさんと話していた。
そしたら屋敷までなんて、すぐだった。
でも、妙に空元気な気がする。
本当にどうしたんだろ。
「おかえりなさいませ。
お食事になさいますか?
湯浴みになさいますか?」
「先にお風呂にするよ。
ご飯の準備もお願い。」
この屋敷に来た日から、私のお風呂は大きい風呂だ。
部屋のお風呂には入ったことがない。
ユウさんとミレーさんが連れて行ってくれる方に従ってたら。
「今日はいつものとこじゃないんですね。」
今日はいつもとは違う道を歩いていた。
部屋に行く道でもない。
お風呂が何個もあるって、もしや大きいお風呂も?
「あちらのお風呂場は、今日は旦那様が使われるようです。」
へえ。
トーアさんが。
そっか。
ずっと狭いお風呂だったんだよね?
そりゃ大きい方も入りたくなる。
私ばっかり占領しちゃって。
やっぱり申し訳ない………。
『マリカちゃんさ。
なんでもかんでも迷惑かけるって言うけど、俺から言ってんの。
迷惑だと思ってたら俺から言わないから。』
なんて言われてもさ。
やっぱり思っちゃうものは思っちゃうじゃん?
それが私の性格だから仕方ないっちゃ仕方ないんだけどさ。
あと一週間。
ここにいられるのも、それだけ。
短かったかな………。
いや、長いくらいだ。
引っ越したら、なにしよう。
集まってきた動物を庭で飼うのもいいな。
強そうな動物さんがきたら狩り頼んだり?
お庭で畑作って。
種ないや。
最初の方のご飯どうしよ。
ゼビアさんのご飯が食べたくなるなー。
たまに遊びにきたらダメかな。
いいよね。
嫌だなあ。
なにを今更寂しがってるんだか。
自分で決めたでしょ!
「到着しました。
夜景風呂です。
夕焼けですけど。」
「ありがとうございます。」




