14.Marika's Slow Life
「すいませーん。
ここって厨房であってますか?」
「あってるです!
入ってどうぞです!」
微妙に敬語が違う。
あと声幼いな。
何歳に働かせてるんだあの人。
「失礼します………。
ゼビアさんであってますか?」
「そうです。
私がゼビアです!」
ゼビアさんは、思ったより大きかった。
もっと小学生くらいをイメージしてたけど、中学生くらいではある。
そして言葉もやっと正しい敬語の形になった。
もしかして「です」さえつければいいと思ってるのかな。
「どうかしたのです?」
やっぱり「です」をつければいいと思ってるんだこれ!
ちょっと可愛い。
私よりゼビアさんの方がリスじゃん。
「そろそろご飯の時間ですよね。
お手伝いします!」
「えっと、どなたです?
もしかして、噂の居候ちゃんです?」
噂なんだ。
というか、しらなかったんだ。
そろそろ二ヶ月経たないくらいなのに。
まあ、これまで顔合わせてなかったしな。
「噂になってるんですか………。
まあ、じゃあそうです。
噂の居候ちゃんです。
私だけ何もしてないのが申し訳なくて。
お手伝いすることはありますか?」
「料理できるです?
量が多くて大変だけどです………。」
これ指摘した方がいいのかな。
敬語。
「です」の他にも教えてみたらいい?
でも他の人が話してるのを聞いてるよね。
それでこれならあえて?
流石に違うか………。
「ある程度は、できます!
一人だと大変だろうと思って、来ました!」
「気遣いありがとうです。
でも慣れっこです。
見てて、ペースについてこられると思ったら言って欲しいです。」
そっか。
いつも一人で作ってるなら慣れてるか。
ペースかあ。
ここまで来て無理だったら恥ずかしい。
私にもできてくれ。
最近料理してないから鈍ってるけど。
「が、頑張ります。」
早速始まった。
本当にドンピシャなタイミングでここに来れたらしい。
そして手際がいい。
私には無理な可能性出てきた。
何作ってるんだろう。
シチューかな。
にんじんにじゃがいもに玉ねぎ。
そして鶏肉。
小さな鍋ではすでに何かを煮込んでいる。
同時に大きな鍋で色々炒め始めた。
やっぱ私には無理かもしれない。
というか私がいらないくらいには手際がいい。
小さな鍋の中身を濾している。
なんだろうと思ったけど、もしやブイヨン?
一からやってたの?
すごい………。
多分バターと小麦粉を入れた。
また混ぜる。
そこにブイヨンをちょびちょび入れていく。
いい匂いだ。
入れ切ったら、しばらく煮込むらしい。
別の料理を作り始めた。
牛肉の塊。
すごいな塊って。
さすが金持ち。
なんか色々揉み込んでる。
ローストビーフかな。
ただゆっくり茹でるだけじゃなかったんだあれ。
そしてフライパンで焼く。
何回か転がしてる。
焼くんだ………。
当たり前か。
すごいいい匂いする。
お腹空いてきた………。
数分経って、火を止める。
蓋をしてからシチューに戻って牛乳を入れる。
ゼビアさん料理うますぎない?
尊敬。
かき混ぜながら煮込んで、煮込みながら別のことを始める。
葉っぱを?
洗う。
洗って?
切る。
切って?
盛る。
シチューに戻る。
それだけ?
料理を始めてから約二十分過ぎ。
完成したらしい。
手際すごすぎでしょ。
あの葉っぱの上にはローストビーフが乗っている。
なんならソースもかかってる。
何ソースかわかんないけど。
「終わったです。
ついて来れそうです?」
「無理っぽそうです。
すごいですね。」
私より年下な見た目してるのに、すごい。
「慣れだから仕方ないです。
あとは、運ぶだけだけど、手伝ってくれるです?」
流石に一人で運ぶのも大変か。
いつものワゴンは?
どこにあるんだろう。
「実はワゴンが壊れたのです。
どこがダメなのかわからなくてです。」
壊れた?
うーん。
あんまりそういうことに明るいわけじゃないけど。
ネジの緩みくらいなら直せるかな?
「これです。」
見た感じは、普通。
「動かすとこの通りガタガタするです。」
タイヤのネジじゃない?
タイヤっていうかキャスター。
「ちょっと失礼しますね。
横に倒します。」
「わかったです。」
右前のキャスターだ。
ネジが緩んでる。
タイヤ部分と金属部分を繋ぐとこ。
皿ネジみたい。
ネジとかあるんだ異世界。
「ちょっとハサミ借りてもいいですか?」
「ど、どうぞです。」
もしかしたらハサミのとんがりで行けるかも。
「無理だったらごめんなさい。」
一応、入ったっぽい?
回ればいける。
回れば…………。
回った!
締まった!
「できました!」
「ほんとです!?
よかったです!
ありがとうです!」
動くかは、わからない。
ワゴンを元に戻して、押してみる。
締める前よりスムーズだ。
「直ったみたいです!」
「本当にありがとうです!」
喜んでくれてよかった。
ワゴンは一通り水拭きして、料理を乗せる。
「じゃ、運びましょ。」
「はいです!」
普段配膳はメイドさんがやってくれるそう。
でも、今日はメイドさんが来なかった。
だから自分でやる!
とゼビアさんが言っていた。
どうかしたのかな。
「あれ、マリカちゃんいなかったの?」
「はい。
自室にもおられなくて………。
メイドの一人に掃除を手伝うとおっしゃっていたそうです。」
私の話が聞こえる。
そうだった。
何も言わないで来たんだった。
そりゃ心配にもなるか。
メイドさんが来なかったの私のせいじゃない?
「お待たせしましたです!
本日のお夕食はローストビーフです!」
「あれ?
ゼビアが持ってきたの?
珍しい。」
ゼビアさんはワゴンを押してるから、私がドアを開ける。
通ったら、私も入る。
「あれ!
マリカちゃんじゃん!
なんで?」
「ゼビアさんのところにいました。
ご迷惑をかけてごめんなさい………。」
お辞儀をしてちょっと立ち尽くす。
座った方がいいのか、ゼビアさんを手伝った方がいいのか。
メイドさんが手伝うらしい。
私は席に座る。
「もしかしてマリカちゃんの手料理………?」
「ゼビアさんの手料理です。
私見てただけですから。」
目を輝かせたところ悪いけど、ワゴンの修理しかしていない。
私が作るより美味しいからいいじゃん。
こっちの方が。
「うーん残念。
でもなんで急にお手伝い?」
聞かれると思った。
「申し訳ないからです。
トーアさんはお仕事してます。
メイドさんは家事をしてます。
執事さんも家事をしてます。
ゼビアさんはご飯を作ってます。
護衛さんはちゃんと見張ってます。
私だけ寝てるんです。
私だけ何もしてないんです。
だから、私も何かしないと!
と思いまして。」
「別にいいのに。
マリカちゃんはマリカちゃんでしょ?」
そんなことを言われても。
あの誘拐事件の時、思ったのだ。
恩がデカすぎると。
だから地道なことから恩返ししなければ。
働いてお金を落とすのが一番だろうか。
「それでもです。
恩だってありすぎます。
何もしないより、何かしないといけないんです。」
「あっ。
ありがと。
いただきます。」
ずるい!!
私が話してる時に!!
「ちょっとそれはないですって!
いただきます!」




