13.Marika's Slow Life
あれから一ヶ月。
トーアさんの茉莉花へ接近禁止令は解かれた。
それからというもの、また寝顔を覗きに来る。
なんだこの人。
接近禁止令の有効中は、食事の時に顔を合わせる程度だった。
だからなのか、やたらと話しかけてきて食べられない。
でも、それ以外はほとんどトーアさんを見かけることもなくて。
前は、騒がしい人が近くにいるだけだったのに。
静かになってから、少し退屈するようになってた。
今は前と同じくらい騒がしいけど。
それと、スローライフへの大きな進展があった。
この領都近場にある森の端っこに小さな家があるらしいのだ。
桧の森らしい。
風呂でも作ってたのかな。
多分作ってなかっただろうけど。
その家が、しばらく売りに出されているのだとか。
この前トーアさんが話を持ち出してきた。
一度見にいってみたいけれど、この辺りは雪に閉ざされている。
もちろん1日2回の散歩はない。
この前は庭でみんなで雪合戦をした。
寒かった。
冬の外に出て遊べる服を買っていないことに気がついたのだ。
帰った後はホットココアを啜った。
熱すぎてまともに飲めなかった。
結局ある程度冷めてから飲んだ。
猫舌不便なり。
「マーリカちゃん。
あーそぼ。」
「仕事終わったらいいですよ。
この冬の分の仕事。」
この人だけだ。
入ってくる時にノックしないの。
冬になるとみんな籠る。
だから、雪解けまでの仕事を一気に渡されるため仕事が多いらしい。
冬になる前に頼まなきゃ!
精神だとか。
実に迷惑なんじゃなかろうか。
「えー、ひどーい。
全部は無理ー。
じゃ今日の分終わったらご褒美ちょうだい?」
「今日中に明日の仕事終わらせたらいいですよー。
それまで寝てるんで。」
太りそうだ。
冬が明けたら運動しないと。
そういえば年越し的なものはないのだろうか。
クリスマスとか。
なかったら冬はただ退屈なだけの期間では?
「俺も一緒に寝るー。」
「絶対嫌です。」
こんなことも何回も話した気がする。
何回断っても懲りない。
いつかは許可すると思ってるのかな。
絶対嫌だよ。
コンコンコンとドアノック。
「どうぞー。」
基本的にノックしてるのが誰かわからない。
だってみんな同じような音だし。
入る前には名乗らないし。
そこはイメージと違った。
そんな感じで、ノックされたらいつもとりあえず開けている。
「失礼します。
おそらく旦那様がおられるかと。」
うん、いる。
すごくくつろいでる。
人の布団の上ですごくくつろいでる。
「うゎーー。
ベリルが見える………。」
「お仕事を抜け出して何をなされているのですか?
戻りますよ。」
サボってたんだ………。
このキツネがサボった時は、大体ベリルさんが来る。
執事強し。
多分マイラさんは書類整理してる。
メイド優秀。
この屋敷の人は、キツネ以外は大概優秀だ。
キツネが優秀じゃないわけではない。
それ以前におふざけが目立つだけだ。
居候してるのが私じゃなくてご令嬢だったら。
そうしたらもっと丁寧な生活するのかな。
「旦那様がご迷惑をおかけしました。
ごゆっくりお休みください。」
連行されていった。
キツネは仕事、メイドさんたちも家事とかいろいろ。
執事さんも同じく。
護衛さんは部屋の周りで。
私だけじゃない?
何もしてないの。
すごく申し訳ないんだけど。
職もないし。
メイドさんたちに紛れてみる?
少しはお屋敷にも貢献しないとだよね。
だって、居候だよ?
ただの客人ではなく、居候だよ?
私も何かしなきゃ。
今のところマナを生み出すくらいしかしてない。
この部屋にマナが溢れてても、特に需要ない。
アラームかけたりすぐ寝たりにしか、使えない。
だって私怪我してないし。
「何しよう………。
お洗濯?
みんな冷たい中やってるんだよね。
私もお手伝いしてこよ!」
そうと決まれば早速行動だ。
部屋を出て早速迷う。
メイドさんたちってどこで仕事してるんだろう。
掃除くらいしか見かけない。
その辺のメイドさんに聞いてみよう。
いや、いっそ掃除するか。
「あの。
お手伝い、します!」
「え?
いえいえ!
お気になさらず!
旦那様の大事なお客様にそのような真似はさせられません!」
ガーン。
久しぶりのFAIL。
そっか。
私の中では居候だけど、使用人の人たちからすると客人なのか。
そっか。
「うぅーーーん。
どーしよー…………。」
やっぱ自分の家を持つしかないか。
この罪悪感を消すためには。
そのために早く冬よ終われ!
あれ?
今何時?
そろそろ晩御飯じゃない?
これは!
私にもできる仕事きた!
ご飯って一人でやるの大変だよね!
足手纏いになる気がするけどお手伝いさせてもらえないかな!?
「おし!
今お手伝いするよゼビアさん!」
そういえばゼビアさんに会ったことってなかったな。
長く屋敷に居候してるけど。
どんな人だろう。




