第十一話 神社巡り
「何持ってんの?それ」
「ん、地図」
外で待っていた空兎が図書館から出てきた秋良に何を持っているのかと聞く。秋良は地図を広げながら空兎の問いに答えた。
すると空兎はなぜ地図なのか合点がいったらしく、確認のため秋良にまた1つ質問した。
「その地図見ながらキツネのいる神社を探すってことか?」
「そうそう、でもこういうときに何か調べられる物とかあればいんだけどな」
昔話に今目的のキツネが神社にいると書かれてあった。正確にはキツネの眠っている花畑が今では神社、とあったのだが。
そのため、秋良は今でもキツネがいるのではないかと考え、空兎と共にその神社を探すことにした。しかし、一口に神社と言っても、この町には数多くの神社が存在している。その情報は夏休みに入る前、事前に2人で調べていた。やはり、ハグレとなにか関係があるのだろうか。
「じゃあとりあえず、こっから一番近い神社に行くか。秋良、地図貸してくれ。ここら辺なら秋良よりも俺のほうが道わかってるし」
「確かにそうだな。はい」
秋良は地図を軽くたたんでから、自分に向かって伸ばされた手に地図をポンッと乗せる。空兎は「さんきゅ」と言いながら地図を開いて近くの神社まで道案内を始めた。
「で、ここ曲がったとこだな」
空兎に言われる通りに従った結果、無事に1つ目の神社にたどり着いた。
神社自体は石垣で囲われており、その向こう側に屋根の瓦が見える。相当大きな神社のようだ。
目の前にある大きな門を通って中に入る。すると、少ししたところに真っ赤な鳥居がそびえ立っていた。
鳥居は柱一本が電柱四本ほど太く、高さは一軒家と同じほどある。そのあまりの大きさに秋良と空兎は圧倒されていた。
「すごっ……、いやいや、違う違う」
これが自分たちの目的ではないことを思い出した空兎が首を軽く振り、石の地面を真っすぐと歩き始める。
そのことに気がついた秋良は慌てて空兎の後ろまで行き、鳥居を下から見上げながらその下を通り抜けた。
左右をよく観察しながら歩いていくと視界に映る人の人数がだんだんと多くなってきていた。何かの準備をしているらしく、数人でいろんなものを運んだりしている。屋台のようなものも準備されているため、今日、この神社で夏祭りが開かれるのだろう。
そんな人達を横目で見ながら空兎と秋良はさらに進んでいく。すると、この広い境内に見合う神社の本殿が見えてきた。鳥居と同じ真っ赤な色合いで、太陽が照っているためその赤がさらに強調されている。
建物へと続く道の左右には一つずつ狛犬が設置されており、まるで、害をなす者は通ることを許さん、とでも言っているようだった。
2人とも目は狛犬に向いているが狛犬のところまでは行かず、その場で足を止めた。
「パッと見た感じ居ねぇな」
「そうだな、まぁ、そんな気はしてたけどさ」
そう、今回神社に来たのは参拝が目的ではない。本当の目的は昔話のキツネを探す事なのだ。
空兎は絶対に見つけてやるとでも言わんばかりに首を何度も横に振って探し続けていた。秋良も空兎ほどではないが空兎が見ていないであろう建物の裏や木陰付近など、細かいところを探していた。
しかし、そう簡単には見つからないようで2人ともそれなりに疲れてしまっていた。
体を休ませるため、2人で近くにあるベンチに座る。
「秋良はどーゆう場所に隠れてると思ってんだ?」
背もたれに寄りかかってダランとしている空兎が秋良に質問する。
「ん〜、まぁともかく、この神社には居ないだろうな」
「なんでだよ」
「町の人はハグレと関わらないようにしてるんだろ?もし、この場所にキツネがいるならこんなに人が集まるわけがないしな。まぁ、あの昔話が本当ならだけど」
この神社はかなり大きく、出入りする人数も多い。キツネはハグレであるため、ハグレと関わろうとしない人たちがハグレのいるという場所に行くのはおかしい。そういう考えから、秋良はこの神社にキツネは居ないだろうと入ってきた時に考えていた。
「でも、町の人達が神社にキツネがいるってことを知らないで生活してる可能性もゼロじゃない、だから、神社は全部見て回ったほうがいいかな」
「そうだな。キツネに会って秋良のモヤが何なのか、聞かなきゃなんないし、俺も聞きたいことがあるからな。少しでも可能性があるんならやったほうがいいよな」
空兎が秋良の言葉に賛成する。
今日見ていて分かったが、空兎はかなり本気でキツネを探している。聞きたいことがあると言っているが、それほど気になることなのだろうか。確かに、秋良もハグレについてもこの町についても気になっている。だが、空兎はそれ以上だ。あきらかに、秋良とは別の何かがあるように思えてくる。
そんな事を考えていると秋良は1つ、おかしなことに気がついた。
(あれ、俺空兎に頭にモヤがかかることがある、なんて言ったっけ………?)
その後、空兎が腹減ったーと、呟いていたため、2人は近くのファミレスに来ていた。時刻は昼過ぎなため、客はそれなりに多い。
空兎は〈チーズハンバーグ&プライムサイコロステーキ〉というかなり大きめなハンバーグを頼み、秋良は〈焼き鮭と明太子定食〉という空兎ほどガッツリしていないものを注文した。
料理を待っている間、秋良と空兎は気になっていることについて話し始めた。
「空兎はさ、ハグレが人間になるって聞いたことあるか?」
秋良から空兎に質問する。
「……ん〜、一回もないな。昔話読んでから初めて知ったし…」
秋良の質問に空兎は少し考えてから答えた。
「空兎が知らないっていうなら相当特別なことなんだろうな。なんでハグレが人間になったのか。キツネが特別だったのか、それとも、女の子が特別だったのか………」
キツネは女の子に名前をつけられたことで人間になったという。その原因がキツネにあるのか、女の子のほうなのか、今のままでは何もわからない。
ただ、一つ言えること、それは、女の子が襲われたのは偶然ではないということ。ハグレが女の子を襲ったのはキツネが人間になった次の日だ。その目的はやはり、
「人間になること………」
「え?」
秋良の呟きに空兎が反応するが、周りの客の話し声でその内容までは聞こえなかったらしく、なんと言ったのか聞いてくる。秋良はもう一度考えていることを話した。
「まぁでも予想だから、ホントかどうかはわからないし。やっぱりキツネに聞いてみるしかないな」
「そうだな。そんときは俺に任せてくんないか?」
「別にいいけど…、なんで?」
「まぁまぁ」
秋良の質問に対して、空兎は無言のまま笑顔をこちらに向けてくる。さらに親指を上げた状態の握りこぶしを前に出して、グッジョブとしてくる。
その自信満々な姿にまぁいいかと思い、秋良は特に問い詰めることはせず、そして丁度、注文していた料理が到着した。
一度話を中断し、2人とも料理を食べ始める。料理を食べ終わったあとはジャンケンでどちらが会計するかを決め、空兎の奢りとなった。
そしてその後、神社巡りを再開した。




