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紛異者  作者: ソリアド
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第十話 昔話

最近、定期テストや部活があって投稿できてませんでした。2、3週間ほど部活が忙しくなるので、投稿がまばらになると思います。すみませんが了承しておいてください。

「わかったってホントか!?」

「かもしれない、だけどな。絶対ってわけじゃない。でも、ほんとに秋良の言う通りだったわ」


 秋良と空兎は町の人々がなぜハグレと関わりを持たないのか、その理由がハグレを知る鍵になると考えている。そのためこの一ヶ月の間、その理由を図書館で探し続けていた。

 しかし、どれだけ探しても一向に見つからなかった。どうするか悩んでいた時、秋良が一つの仮説を立てた。


『幽霊に興味を示す人がいるみたいに怖いって感じるものほど知りたくなるはずだ。なのにハグレには誰も興味を示さない。ほんとは誰も知らないんじゃないかってことも考えたけど、町の人全員が知らないのもおかしい。てことは、ハグレが関わってはいけない存在だってみんな知っている、もしくは、教えられたってことなんじゃないのか?例えば迷信、言い伝え。それと、昔話、とかで』


 それから秋良と空兎はそれに関係する本を探していたのだが、それでも見つからなかった。だが今日、秋良が学校に残っている間に空兎がどうやらそれに関係すると思われる本を見つけたらしい。

 秋良の言った通り、という空兎の発言から、秋良の仮説は正しかったのだろう。


「どうする?もうちょい休んでもいいけど…」

「いや、もう大丈夫。2回目だからかひとみさんの時よりも少し楽みたいだ。それよりもその本が気になるしな」

「わかった。じゃあ荷物取ってこいよ。俺靴箱で待ってるからさ」


 そう言うと空兎は靴箱の方向へと歩き出した。


(あれ、そういえば空兎、荷物どこにあるんだ?)


 空兎がバッグを背負っていないことを不思議に思ったが、空兎の性格からしてどこかに放り投げているんだろうと自己完結させ、秋良は荷物を取りに行くため階段を降りた。






「はい、これがその本」


 バッグを腕に抱える空兎に例の本を渡される。空兎は先ほど、図書館に到着した途端急いで何かを探し回っていた。

 どうやら、嫌な予感がしてから急いで学校に向かったため、図書館にバッグを置きっぱなしにしていたらしい。バッグに大事なものでも入っているのか今はそのバッグを大事に抱えている。


「これか……」


 秋良が受け取った本をよく観察する。

 それは至って普通の絵本のような表紙をしていた。猫や狐などの小動物に囲まれた女の子が花畑におり、笑顔で周りの動物たちと共に踊っている。その女の子や動物たちを色とりどりの綺麗な花を咲かせた木が周りを囲んでいる。


(これがハグレについての本なのか?明らかに明るい感じの本なんだが……、でも、この名前があるってことはそういうことか…)


 秋良の視線の先、そこにあったのは今までに何度も見てきたアノニモスの字だった。今まで読んできたハグレの本には必ずこの字があった。ならばこの本も今までと同じでハグレのことに関する本なのだろう。

 秋良は大切なことを見逃さぬように(はや)る気持ちを押さえながらページを1枚捲る。

 そこには雲一つない青空とその下に元気いっぱいに笑う花畑があった。



―――――――――――――――――――――



 むかしむかし、あるところに1人の女の子がいました。その女の子はいつもたくさんの動物の友達に囲まれていました。

 まいにち、まいにち、女の子はその友達と朝から夜まで雨だろうが雪だろうがずっと遊んでいました。


 そんなある日のことです。

 女の子の元へ、一匹のキツネがやってきました。しかし、そのキツネは普通ではありませんでした。なんと尻尾が3本もあったのです。

 

「僕も一緒に遊んでもいい?」

「えぇ、もちろん!」


 それからキツネも他の動物たちと一緒に遊び始めました。最初の頃、動物たちはキツネを怖がっていましたが、女の子が大丈夫だというので共に仲良く遊んでいました。


「今日はこれをしよう!」

「今日はこれ!」

「今日もこれをしよう!」

「明日はあれね!」


 女の子はいつもとびきりの笑顔で遊んでいました。それにつられて、一緒に遊ぶ動物たちもいつも笑顔でした。もちろんキツネも。


 ある時、女の子は自分の友達たちに名前をつけようと思いました。名前があったほうが便利だと思ったからです。


「君はにゃ―ちゃん、君はバクくん、君は………」


 女の子はどんどん名前をつけていきます。


「君はピョン吉、君はエルくん、君は………」


 そして最後、キツネの番になりました。


「君は―――」


 女の子がキツネに名を告げた瞬間、ある不思議なことが起こりました。なんと、キツネは可愛らしい少女になったのです。


「す、すごい!すごいよ!」


 女の子は体を広げて大喜びました。


「やった……、やったー!」


 実はキツネは、人間になりたいという夢があったのです。なので、自分のキツネではない姿を見てとっても喜びました。

 これで女の子と同じように遊べる、と。


 しかし、その願いは叶いませんでした。

 次の日、遊びに行こうとが女の子の元へ向かおうとしているとき、友達のネコがキツネの元へやってきました。


 〇〇があぶない!


 その知らせを聞いた途端、キツネは走り始めました。まだ慣れていない人間の足で走りました。


 そして、普段遊んでいる花畑に着きました。

 そこでキツネの目に飛び込んできたのは、倒れた女の子でした。

 すぐにキツネは女の子の元へと駆け寄ります。しかし、もう息はありません。

 キツネは怒りました。大声を上げて怒りました。その怒りのせいでしょうか。人の姿だったキツネはだんだんと大きな化け物へと姿を変化していきます。

 体の変化が止まったとき、キツネは本能のまま足元にいる女の子を襲った化け物達を攻撃しました。自分と同じ化け物を。



 実はこの世界にはたくさんの化け物がいたのです。キツネは大切な女の子を襲った化け物をどんどん殺していきました。自分の気が住むまで。

 そして、暴れ疲れたキツネは姿をもとに戻し、思い出の花畑のあった場所で眠りにつくのでした。今はその花畑は神社になっているのだとか。



 のちに化け物は【ハグレ】と呼ばれ始めます。そして、ハグレはまだこの世界で生きています。もしも、そんなハグレと出会ってしまったら、どうなってしまうのでしょうね。



―――――――――――――――――――――



 最後のページを閉じ、秋良と本との間に静寂の時間が流れる。


「………秋良はどう思う?」


 その静寂を破って空兎が秋良に見解を求めてくる。秋良は手を顎に当て、少し考えてから、


「……正直な話、わからない。ハグレに関する昔話っていうのは俺の予想と合致してるけど………」

「けど……?」


 秋良はまた少し考えてから口を開いた。


「もしこの世界がもともとは魔法だらけの世界だったって言われたとき、空兎は信じるか?」

「そんなわけ……あっ」


 そこまで言ったところで空兎は秋良が何を言いたいのか分かった。空兎は秋良と目線を合わせる。


「そーゆーこと、こんな話があったって言われても普通は信じないってこと」

「じゃあ関係なかったってことかよ……」


 空兎が視線を机に落とし、小さな声で呟く。

 そんな空兎を秋良は横目で見ながらページを数枚戻す。


「いやそうでもないかもよ」

「え?」

「ここ見てみろよ」


 秋良が戻したページのある部分を指差す。そして、その場所を空兎が覗き込む。


「ここの“自分と同じ化け物を”って部分から狐はハグレだったってことだ」

「いや、それはわかるよ」

「いいから最後まで聞けって。で、次こっちには“その花畑は神社になっている”ってあるだろ。そして、ハグレはこの町でしか出ないんだろ?つまり?」


 秋良は最後まで言わず、空兎に振る。空兎は少し考えてから口を開いた。


「この町にキツネがいる………」

「そゆこと」


 秋良は空兎を見ながら分かってるじゃん、と言うように笑い掛けた。


「じゃあこれからキツネのところに行くんだな」

「まぁそうなんだけど、行くのは来週からだな」

「なんでだよ?」


 空兎の疑問にだって、と秋良は話を続ける。


「来週から夏休みだろ?狐が良いやつとは限らないし、十分に準備しといたほうがいい。なら、夏休みが丁度いいだろ」


 秋良の回答に空兎が確かに、と頷く。


「まぁとりあえず、それまで図書館での調べ物は続けよう」

「おっけー」


 それから秋良と空兎は夏休みに入るまで図書館でハグレについて調べていた。〈キツネを見ると呪われる〉や〈犬が嫌いな人間はキツネが化けている〉など、様々な迷信もあった。どうやら狐はこの町では嫌われているらしい。やはり、あの昔話が原因なのだろう。

 秋良はハグレについて調べていくたびに顔が険しくなっていっていた。実は秋良にはあの昔話を読んでから、ずっと気になっていたことがあった。それは、キツネが名を得たことで人間になったということだ。

 今までいくら調べてもそんなことは一切書かれていなかった。どれだけ調べようが出てこないため、ハグレの本を書いているアノニモスのことを心の中で呪ったりもしていた。


 キツネが人間の姿になった次の日に他のハグレたちが襲いに来たことから、ハグレが人間になるということは大きな意味を持つということなのだろう。だが、やはりそんな情報も得られていないため、秋良はかなり精神的にやられていた。

 しかし、キツネに会うことができるかもしれないという僅かな望みが秋良の原動力となっていたことで、今までどうにかなっていた。


 そして、キツネ探し当日。

 2人は図書館に集まっていた。

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