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異世界、ダメ、絶対!!もう誰も異世界には行かせません!!  作者: 榊 珠江
開花編

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全面戦争

「君たちにも事情があるだろう。この世界で悩み苦しみ抜いて、救いを求めて異世界へと渡ったのだろう。この世界にいても、身に危険が及ぶだけだ。逃げなくていいのか?」


「・・・確かに、それは間違いじゃない。俺だけじゃない。みんな、この世界から逃げたくて、異世界への入り口を探し、旅立っていた者は多い。でも、俺は異世界を渡り他の異世界渡航者と話して分かったことがある。本当はみんな、逃げたいわけじゃなかったんだって」


 アレクはキッとエステルを見据え、心情を吐露する。


「みんな、本当はこの世界で生きたかった。普通に幸せに暮らしたかった。でもそれが叶わないと悟ったから異世界に渡ったんだ。でも、だからって、この世界の全てが嫌いになったわけじゃない。俺だって、この世界で生きられるのならそうしたかったさ」


「ならば、どうする?」


「・・・みんながこの世界をどう思っているかは分からない。けど、俺は今だって、この世界が俺の故郷だと思っているよ。そうだ、このまま戦争に飲み込まれていくこの世界を見たくはない。戦うよ。この世界を守る!」


「ありがたい申し出だ。では、よろしく頼む。共に戦おう」


 エステルとアレクは握手し、ハルモニアに歓声がこだまする。


「アレクが戦ってくれるなら、我々ハルモニアは魔導兵器部隊を国防軍の援軍に送れる。田中と和尚も来れるのかな?」


「彼らなら大丈夫だ。必ず手を貸してくれる」


「よし、それでは速やかに部隊を編成し、行動に移ろう。全員、一旦オスロに帰還せよ。支度を進め、出陣だ」


 ハルモニアの士気は頂点に達している。なんだか最近は翻弄されるばかりの人生だ。隣にいる巴ちゃんも、やれやれと半ば諦めモードだが、やってやりますかと、俺の背中をポンと叩いた。


 事態が急変したことで、オスロは民間人まで湧き立ち、出陣の支度を整えていく。


 すでにハルモニアでは司令達が国防軍と連絡を密に取り、援軍を送る指揮をとっている。一斉に近隣諸国から攻撃を受けているが、日本は島国であることでいきなりの陸上戦を強いられずに済んでいるそうだが、いつまでもつかは分からない。北海道は上陸を許してしまったが、現在国防軍の奮戦により、水際での激戦が続いている。


 アレク達の参戦により、ハルモニアの魔導兵器の多くは国防軍に供することとなった。敵の魔導兵器は主に魔法攻撃や防御魔法が使用され、運用している現代兵器を増強している状態だ。それをこちらも同等の装備を整えることで、魔法技術における優位性を相殺し、実力で敵を排除するそうだ。なんとも頼もしい国防軍だ。


 銀達の考えでは、ベイルは国防軍を敵国と戦わせることでハルモニアを戦力的に孤立させ、大軍をもって一挙に攻め落とすつもりだろうと睨んでいるそうだ。ベイルは人間に魔石を埋め込めば、ベイル人全てが兵士として投入される可能性も考慮し、異世界ラークスからも援軍を呼び寄せると言っていた。


 その数、三万を超えるそうだが、すでにベイル軍は同等の兵力を投入し、さらに増大しているという。戦力差を埋めることは難しいが、そこでアレク達の登場だ。チートクラスの戦力は対ベイルでの戦闘において活躍することは間違いない。それは前回の襲撃事件で彼らの実力は証明されている。


 ハルモニアに帰還した俺達の部隊は、すぐにベイルが侵攻をしている富士の裾野へと向かうこととなった。情報を収集した銀から今回の戦闘の方針が伝えられる。


「全員、集まったな。これからの行動について説明する。現在、国防軍もハルモニアも蜂の巣を突ついたような騒がしさだが、すでに他の部隊の出撃準備も整い、ラークス本土からも今続々とエステルが援軍を転移させている。現在、敵は富士山周辺にある国防軍の野戦演習地に陣を構え、急行した国防軍と戦闘中だ。国防軍は周辺の民間人の避難誘導を行なっているため、戦力的にも劣勢だ。直ちに出陣する」


 応と、突撃部隊員の声が上がる。


「今回は敵の規模からいって、室田達を敵ポータルまで隠密にて誘導することは困難だ。敵は総力を上げてこちらへ攻めてくる。もはや作戦も何もない。正面突破し、敵の腑を食い破れ!」


 鬨の声が上がり、ハルモニアは全軍をもって富士の裾野へとポータルを介し、出陣した。戦場ではすでに国防軍がミサイルやロケット攻撃で飽和攻撃を加えている。その多くの攻撃が矢避けの魔法によって弾道を狂わされているが、魔法の効果範囲を超えた場所には着弾している。


 平原を埋め尽くす勢いの大群には飽和攻撃も一定の効果が出ているようだ。だが、敵の進軍の速度は落ちることはなかった。まるで死を恐れていないかのように猛進してきている。


「銀、様子はどうだ」


「おお、エステルか。大丈夫か?本部に詰めてなくて」


「作戦指揮は大竹達に任せてきた。私も先陣をいくよ」


「それは頼もしいな」


「おいおい、俺を忘れないでくれよ。エステルが先陣行くなら俺だって行くさ!」


 小林くんもずいっと前ににじり出て、エステルへのアピールを欠かさないでいる。


「あぁ、頼んだよ。ところで、銀。アレクには端末を渡しておいたが、連絡は来たか?」


「今し方あったところだ。こちらに向かっているとのことだ」


「よし、それでは全軍に進軍の合図を送れ。行くぞ」


 エステル、小林君、銀を戦闘に、俺達の突撃部隊は進んでいく。周囲は遮蔽物も何もない開けた土地だ。遠くにポータルとベイルの大群が見える。上空からは敵陣に向かいロケット砲や迫撃砲が絶え間なく打ち続けられている。


「エステルよ、こちらは各部隊陣形を整えた。例の作戦は開始できるぞ」


「お?銀よ、何か面白いことでもやるのか?」


「小林よ、よく見ておくことだ。ラークス人の戦いをな」


「ラークス人の戦いか。そういえば、俺は現代兵器とのコラボ戦術しか見たことなかったけど、ラークスの戦術ってどんな感じなんだ?」


「私たちは同じ世界同士での戦闘なら、中核世界での中世とほとんど変わらない戦い方だったよ。まず兵士の数だ。物量が物をいう。次に武器の質や魔法の練度。基本的に力と力のぶつかり合いだ。策略を用いるが、強力な戦士や魔法使いの前では策略も意味が持たないから、最終的に戦争で勝とう、生き残ろうと思ったら、自分自身を鍛え上げるのが一番手っ取り早いという結論に至っている」


「スンゲェ脳筋な戦い方だな。じゃあエステルもそんな感じで魔法を鍛え上げたのか?」


「ははは、その通りだよ。私は勇者と会うまでは魔法の研鑽が積めればそれで良かったが、彼と旅する中で自然と鍛え上げられていったよ。だが、今回の作戦では、ちゃんと考えている。セシリア、アレク達との連絡は取れたかな?」


「はい、5分後に魔法発動可能です」


「よし、では国防軍に一斉砲撃を要請しろ。それでは諸君、全員突撃!」


 エステルの号令で、横に厚く広がったハルモニアの軍勢が突撃を開始した。俺の周りには巴ちゃんや突撃部隊の面々がいて、目の前に小林君がしっかりついてきてくださいよと声を上げている。


 背後から爆女が響いてくる。国防軍が一斉に砲撃を加え俺達の頭の上を通り過ぎ、ベイル軍へと着弾していく。凄まじい砲撃で、さすがの矢避けの魔法も全軍をカバーできていない様子だ。


 弾着で舞い上がった粉塵が収まる頃に、さらに上空から雷や火の玉や氷の槍がベイル軍を散発的に貫いていく。


「よし、うまくいったな。あれはアレク達の魔法攻撃だ。国防軍の一斉砲撃で魔法使いの居場所を突き止め、ピンポイントで魔法使いをアレク達の圧倒的な魔法攻撃で殲滅する作戦だ」


「なんというチート作戦・・・」


「全軍に知らせよ、魔法使いは殲滅した。全軍突撃せよ!」


 ハルモニアに総攻撃の命令が下され、ここにベイル軍とハルモニアの総力戦の火蓋が切って下された。

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