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異世界、ダメ、絶対!!もう誰も異世界には行かせません!!  作者: 榊 珠江
開花編

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同時多発攻撃

 アレクが受け取った女神からのメッセージによると、魂を持った人間がいる異世界はベイルとラークスの二つだけということだそうだ。レッドドラゴンが魂を持った人間を狙い中核世界への侵略を企てているのは、俺の臨死体験で得た情報からハルモニアでは周知されている。


 では、なぜ他の異世界が魂を持たない人間がいる世界が出来上がっているのかという疑問が湧くが、その答えにまた俺たちは驚かされることになる。


 二柱の龍神は兄弟で、中核世界の人間を来たる災厄から守るために異世界を創造した花の女神と共に守護していたそうだ。禍津凪が守護するラークス、そして、レッドドラゴンが守護するベイル。そして、この中核世界と二つの異世界を見そなわし世界を安定させる花の女神。この三柱で世界は成り立っていた。


 神は異世界を創造するにあたり、人間の無意識を最大限活用していた。人間の想像力は豊かで無尽蔵。人の想念が基盤となり、二つの異世界は生み出された。


 ゲームやアニメ、マンガなどの多大な影響もあり、中核世界人にとって西洋の中世頃の文化であったり剣と魔法のファンタジーという世界観は親和性が高く、それゆえ、いわゆるファンタジーの世界観の世界が出来上がったそうだが、ここで問題が発生した。


 レッドドラゴンが魔石に蝕まれてしまったがために、花の女神が異世界を安定させることが難しくなってしまった。その歪みは中核世界に及び、人間の強い想念が塊をなすことで、想念を具現化した異世界が中核世界のあちこちに出現してしまうようになってしまった。


 これは異世界論議でよく話題になっていたことだ。なぜゲームやアニメ、マンガのような世界観の世界が多く存在するのかという問題だ。その理由が、まさか人間自身にあったとは。


 おまけにラークスとベイル以外の異世界に人間が入り込むと、入り込んだ人間の想念が無意識下の物も含め具現化してしまいやすいそうで、簡単にいうとポジティブな人間には素晴らしい世界が広がり、ネガティブな人間には地獄のような世界が作られてしまうそうだ。


 心模様によって如何様にも世界を変えることができる異世界だからこそ、アレク達のように異世界渡航に成功する僅かな成功者もいれば、地獄を味わい、場合によっては命を落とす大半の人間が出てきてしまうのは、こうしたことが理由とのことだった。


 世に蔓延る野良ポータルは、仮初の世界ということだ。だからこそ、そこに住んでいる人間も魂を持たず、異世界に迷い込んだ人間の想念を反映するだけの舞台装置にしか過ぎないということだったのだ。


 いわゆる世界の真実というものに俺たちは触れ、頭の中が整理できないでいるが、アレクはここで、改めてハルモニアに対し謝罪をした。アレクはハルモニアの襲撃前に、女神達のお告げを夢で受け取ったとのことだ。だが、それが実はレッドドラゴンが女神を騙りベイルと敵対しているハルモニアへと差し向けたことも、俺が渡した女神の花によってようやく知ったということらしい。



「本当に申し訳ありませんでした。神々とは異世界転生する間際、あちらの世界でお会いしていたのです。異世界渡航者は神々から特別な力を授かるのが通例ですので。その時は、三人の神々がいましたが、思い返せば、ラークスを打倒せよというお告げをした神はレッドドラゴンだけでした。まさか、あの神様が中核世界へ攻め入ろうと考えていたとは夢にも思いませんでした。あれだけ聡明で慈悲深い方だったのに・・・」


「なるほど、事情はわかった。信じ難いが、室田からの報告とも話は一致しているし、ベイルの一連の行動にも納得がいった。ハルモニア襲撃の件は私の一存で許すなどとは言えないが、敵に利用されたということは君の魂を観れば分かる。他に、神と名乗る存在からのメッセージはないのか?」


 エステルは、淡々とアレクに質問を投げかけている。どうやら、アレクに関して怒りの感情は持っていない様子だ。魂は嘘をつけないというから、エステルがここまで言うのであれば、本当なんだろう。ハルモニアの面々も、エステルの言葉で自制心を取り戻しつつある。


「神からのメッセージは、ベイルからの侵攻を警戒するようにとありました。どうやら、レッドドラゴンはポータルを閉じることができる能力者を異様に警戒しているようです。何か策謀を巡らせ実行するだろうということでした」


「ふむ・・・、策謀とな。悪い予感が当たらなければいいが・・・」


 エステルには何か心当たりがあるらしく、思考を巡らせているようだった。


 警報音。ハルモニアの全隊員の端末から一斉に緊急警報の音が鳴り響いた。今までに聞いたことがない音だった。


「おい、マジかよ・・・」


 小林くんが顔を顰めている。


「みんな、メッセージを見ろ!国防軍が複数の外国から攻撃を受けたってよ!」


 俺も端末を開きメッセージを確認する。内容はざっとこんな感じだった。


 同時多発的に外国からの攻撃を受け、敵部隊と現在交戦中である。攻撃はアメリカ連邦、ロシア帝国、中華連合の周辺国家によるもので、すでに前線では奇襲攻撃により甚大な被害を被っている。とのことだった。


「国防軍から情報が送られてきている。セシリア、カティ。みんなにも見えるように、空間投影してくれ」


「はい!」


 セシリアとカティは仕事を分担しながら、魔法を唱えている。空中にスクリーンのようなものが浮かび上がり、映像が投影され始めた。


 映像には、海が映し出されていた。日本海、大平洋、二つの海で海戦が行われている。激しいミサイル攻撃の欧州、飛び交う戦闘機の群れ。だが、明らかにおかしいところがある。敵国の攻撃が明らかに通常兵器とは思えない武器で行われている。


「予感的中か。敵国は魔導兵器を使用している。セシリア、この魔導兵器をどう見る?」


「はい、この魔導兵器はオスロで開発していたものではありません。機密保持も万全でした。おそらく、我々同様、敵国も魔導兵器を開発していたものと推察します」


「そうだな。この魔法は見たことがある。ベイルの魔法の式が組み込まれている。まったく、用意周到なものだ。すでに敵国がベイルと通じていたとは」


「エステルよ、呑気なことを言っている場合ではない。魔導兵器なんてものが敵国が使っている以上、国防軍は劣勢を強いられるぞ。この国の国防軍は魔法に関する兵器は何も持ち合わせていない」


「あぁ、そうだな。魔法に関する兵器の供与は日本との協定で禁じられている。律儀に守っていてくれていたことは感謝だが、まさかこんな形で仇になるとは」


「エステル様、さらに追加の情報です。ロシア軍がすでに北海道に上陸し、内陸に向かって侵攻を開始したとのことです」


「というと、北海道の国防軍は?」


「魔導兵器により、全滅とのことです・・・」


 ハルモニアにざわめきが広がる。アレクも狼狽している様子だ。まさかこんな事態になるとは、誰も思わなかっただろうに。


「そんな、まさかこんなに早く動くなんて・・・しかも、外国勢力を巻き込むなんて・・・」


「エステル様、ハルモニア本部から緊急通信です!富士の裾野に巨大ポータル出現!ベイルです!およそ二万の軍勢が侵攻し、敵兵力はなおも増大中。富士の駐留軍と交戦中です。ですが、情勢は極めて劣勢であり、応援要請がきています」


「よし、すぐに行こう。これよりハルモニアは全軍をもってベイルを迎え撃つ」


 とんでもないことになった。これでは全面戦争じゃないか。おまけに、異世界と近隣諸国との二正面での戦争だ。どう考えても分が悪すぎる。


「エステルさん、待ってくれ。それじゃあ魔導兵器を使う敵国はどうするんだ?国防軍だけでは魔法攻撃に無力だ。応援に行かないと」


「アレクよ、残念だが今の我々の戦力を全て投じても、日本国内に現れたベイルを迎え撃つのに手一杯だ。それは国防軍も承知している。現に、すでに国防軍から連絡はきているよ。助太刀無用とな」


「そんな・・・なんで・・・」


「国防軍もハルモニアの戦力は承知している。この状況で援軍を送る余裕は無い。今は各々がやれることをやるしかないのだ。だが、君達はどうする?」


「どうするって・・・?」


「君たち異世界に渡った者達は、この危機の中でも異世界に逃れることができる。それに、この戦いはそもそも君たちのものではない。危険が及ぶ前に、異世界へ逃れたほうがいいんじゃないか?」


「そんな・・・」


 エステルの言葉に、アレクは逡巡している。

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