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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第2章 〜うちの主人は死神様〜
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再会の戦

お待たせしました

 『魔神の力』

 それは限られた者にだけ生まれつき与えられる力。ガキの頃の俺でも千人もの部下を持てたものもこの力のおかげだ。

しかしこの力にもいくつか制約がある。

 まず、体内にいる魔神には自我があり、必ずしも常に力を貸してくれるとは限らない。次に魔神に選ばれた人間は、何かしらの形で魔神にエネルギーを供給しなくてはならない。


 そして、魔神の力を長く使用し続けると、少しずつ魔神寄りの思考に汚染され、他者を傷つけるのに躊躇(ちゅうちょ)が無くなる。


 俺ツエーって調子に乗ってた頃の俺はそんなの気にせずガンガン使いまくってたから、そのツケが人生後半になって一気に回って来たのだ。そん時にはもう他者を傷つけても何の痛みも感じなくなっていたし、毎日毎日魔神に捧げるエネルギーとしてトレーニングをしなくてはならなかった。


 そんな俺という最悪な怪物の人生に終止符を打ったのは、他でもない俺自身だった。目の前のもの全て破壊しなければ気が済まず、相手を潰した時の快感だけが生き甲斐となった、まさに過去の俺の末路を表したようなやつだ。


 ソイツが今、俺の目の前にいる。殺されただけでは無い憎しみを原動力にして。


 戦いの火蓋が切って落とされた瞬間、俺らは一気に間合いを詰め、


 ガァンッ!!


「ぐうぁああああっ!!」

「がぁあああっ!!」


 互いの拳が互いの拳をぶつけ合う。ぶつかり合った瞬間嵐のような衝撃波が発生し、辺りの地面をバリバリ削っていく。しかし戦闘意欲を(えぐ)られるほど掻き立てられている俺らは、たった1発では収まらず、


 ズドォガァンッ!!


 また1発、


 バゴォンッ!!


 更にもう1発、もう1発……何度も何度も殴り合った。互いの拳が身体中を捉え、吹き出し続ける血しぶきが宙を、地面を真っ赤に濡らす。灼熱地獄(しゃくねつじごく)の炎でさえ蒸発が間に合わないくらいに。


 そして開始から5分も経たぬまま勝負の決着はつこうとしていた。お互いに満身創痍(まんしんそうい)な体になっても全力で殴り合うものだから、最早立つことさえやっとだった。


 しかしあと1発、あと1発体のどっかに打ち込めば勝利は確実だ。だがこちらもあと1発もらったらやばい。多分体がもたない。『金の瞳』の力も限界近いから早々にケリをつけないと。

 俺は焦りながらも冷静にな思考で、残り少ない力を両腕に込め、大地を蹴った。


 ダンッ


 走り出したのは同時だった。ものすごい勢いで互いの距離が迫っていく。それから互いに倒れるまで俺の頭の中は冴えていた。まだだ、まだ殴らない、ギリギリまで近づけて一気に叩く。そうすれば勝てる、必ず勝てる。最早俺の瞳にはやつしか映っていなかった。そしてやつの瞳にも俺しか映っていなかった。


 ビュオッ…!!


 互いの拳が出たのも同時だった。俺の左拳は相手の右腕を滑って行き、やつの拳は俺の右腕を滑って行く。


 当たるのはほぼ同時か、いや少しだけ俺の方が…っ!!



 ドドコォンッ!!


 …ドサッ、ドサッ



「ぐぶっ…」

「ぶはっ…」



 しかし俺は、相手を殴った感触も殴られた感触も無いまま意識は消えていった。


「やり過ぎだアホンダラが」


 完全に消える間際にそんな言葉が聞こえたような聞こえなかったような、そんなことすら考えられずに俺の意識はそこで途絶えた。


「がふぁっ! …はぁ…はぁ…くっそ…」

「ようやくお目覚めか馬鹿野郎」

「ロボか…ここは?」

「更衣室だよ。おら、目覚めたらさっさと仕事仕事、お前に休みは無いんだから」


 目覚めるなり俺はロボに引っ張られて職場に戻された。全身は包帯と絆創膏(ばんそうこう)まみれで節々が常に痛んだが、作業に影響が出るほどではなかった。これも『究極生命体の力』の圧倒的再生力のおかげだ。


 もちろん体力までは回復しない、むしろ体の怪我を現在進行形で治しているのだから、恐ろしい勢いで消耗しているだろう。しかもその疲労を感じさせぬようアドレナリンとかドーパミンとかその他もろもろを脳中に分泌しまくってるから、いつ限界迎えてぶっ倒れるかも分からない。

 そんな爆弾を抱えながら俺は処刑執行人として作業を続けた。幸い仕事中にぶっ倒れることは無かったものの、仕事が終わると同時にドバッと疲労の波が訪れた。体全身が鉛のごとく重く、立って歩くことすらままならない。


「しゃーねーな、ここにへばりついてても邪魔だろ、とっとと歩けこの究極生命体様」


 更衣室の床にベチャーッと貼りつくように倒れる俺の体をドスドス蹴りながらロボはそう言った。まだ口を動かすだけの体力は残ってるから、俺は動けない怒りをぶつけるかのごとく反撃する。


「それが出来たら苦労はしねぇんだよっ! はーあ、体おっっっも…」


 しかし怒りとは大半のエネルギーの喰うものだから、超短く瞬間的なものになってしまった。そんな俺の体をロボはグイッと持ち上げ、肩の上に乗せた。おんぶとは違い徒歩の上下の動きがダイレクトに腹部に伝わって来るから、乗り心地は最悪だ。加えて脳も前後左右と上下に揺すられるから、めちゃくちゃ気持ち悪い。

 そして俺はどこに連れて行かれるのか聞くことすら出来ないまま、最悪な乗り物に揺すられ続けた。


 ベチャッ


「ごふっ」

「今日からここがお前の寝室だ。朝4時に起こしに来るからそれまでちゃんと寝とけよ」


 ロボはとある場所に着いたかと思うと、床に俺をぽいっと放り投げた。動けない俺は何の抵抗も出来ず、地面にべちゃりと叩きつけられた。そんな俺にロボはそう言ってどこかへ行こうとしていた。


「おい、いくつか聞いていいか」


 俺は起き上がれないから地面に倒れたままロボに尋ねる。ロボはめんどくさそうに返事しながらも、何だかんだ戻って来てくれた。


「あんだよ、聞きたいことって」

「いや、俺さ、さっきやつの拳喰らって無いはずなのに、なんでぶっ倒れたのかなって。あとあの後アイツどうなった?」

「あー…そのことか」


 ロボは思い出しながら俺の問いに答えた。


「お前らがあまりにも地獄をぶっ壊すもんだから俺が殴って止めた。2人ともお互いしか見えてなかったからな」

「なるほど…迷惑かけたな」


 どうやら俺らの激突はかなり迷惑をかけていたようだ。しかし決着がつく寸前で止めるのもどうかと思うけど。まぁでも、それに気付けなかった俺もまだまだってことか。


「あとお前と殴り合ってたアイツだけど、新しい拘束器具の実験として牢獄にぶち込まれたぞ。ま、あの様子じゃいつ出て来るかも分からんけどな」

「…分かった。もし出て来たら今度こそぶっ潰す」

「やめろやめろ、お前らが争うとマジで地獄がぶっ壊れ兼ねないんだから」


 ロボの声のトーンからしてかなりマジだ。次戦おうとしたらマジにロボがキレ兼ねない。生前キレたロボは冗談抜きでシャレにならなかった。その時は怒りの矛先が俺で無かったからよかったものの、それが俺に向いたと考えるとちょっとゾッとする。相手を潰す時は容赦などせず、徹底的にやるその様はなかなか恐ろしいものだった。

 なんてキレた時のロボを思い出していると、逆にロボの方から聞き返して来た。


「ていうかさ、アイツとお前の瞳の色が変わったのは、やっぱり魔神の力だろ?」

「んぁ? ああ、『金の瞳の戦士』のことか。そういや生前お前に会ったのは、力を手に入れる前だったな」


 『金の瞳の戦士』

 これはある意味人間とそうでない者の境界線みたいなものだ。この力に目覚めた者のほとんどは人で無くなり、戦うことしか考えられなくなる。人を潰すことに快楽を見出し、殴られたとしても相手が倒れるまでその攻撃の手を止めることは無い。魔神と自我も体も一体化する第1段階とも言えるだろう。その力に目覚めた当初は、目の前の敵しか見えなくなって相手を殺すまで殴り続けたものだ。


 そんな力のことをわざわざ聞くなんて、こいつはいったい何を考えてるのだろうか。


「そうだな、地獄で噂に聞いてたけど、なかなか凄い力じゃないか。うん、いい()()()が手に入った」

「…なにか企んでやがるな?」


 ロボは何か気になることを言いながら部屋を出て行った。俺はそれについて不安になりながらもどっと全身を襲った眠気に抗えず、地面にへばりついたままぐーぐーぐーぐー寝てしまった。

次回の投稿もお楽しみに

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