友
おまたせしました
ロボの言う戦闘用兵器の1体を倒した俺達は今後の作戦を練っていた。このままロボを作ったやつらのところに特攻しても返り討ちに遭うのは目に見えていたから、何とかいいアイデアを考えつかなければならかった。
しかし、悠長にゆっくりと考えていられる時間は無かった。
何故なら、
「行くぞ、作戦は道中で考えよう」
「あん? 何でだよ。ちゃんと作戦練んなきゃ返り討ちにされるのがオチだろうが」
敵を倒したロボは少しばかりソイツに目をやった後、さっと立ち上がって場を離れようとした。まだ作戦も考えてないのに、何馬鹿なこと言ってんだと俺はロボを止めようとするが、その顔には焦りが見えた。そして俺の手を振り払ってからロボはマジな口調で返した。
「そうもしてらんねぇんだよ。そもそも何でいきなりコイツみたいなやつが現れたと思ってんだ。ただの偶然で見つかったと思うか。違ぇよ、腐っても俺の体はやつらに作られんたんだ。発信器の1つでも付いてない方がおかしいだろ」
そう言ってロボはさっさと林の中を進んだ。言い分を理解した俺はその後をそそくさに追う。
これが俺達に時間がない理由だ。やつらに反感を抱いたロボ自身もまた、やつらの手から生み出された兵器の1つなのだ。それは決して逃れられぬ柵であり、俺にも壁となって立ちはだかる。ロボの中に内蔵されているであろう発信器が呼び寄せる敵達がそれである。
だがロボ自身にも抵抗出来ることはあった。ロボもまた奴らの手によって生み出された存在、故に自身を生み出した研究所の所在なら分かっていた。残念ながら全体的及び内部構造はインプットされていないようだが。
それでもロボの中にある反逆心、そして決意は人間に迫る勢いのものだった。こうして俺がさも平然と会話し、決意と行動理念に心打たれ、危険な状況に身を投じれるのも、きっとロボがただのロボットでは無かったからだろう。
心を持ち、唯一の存在意義に反し、自分のやりたいように生きる。そんなロボを、俺専用の殺戮兵器を、俺は何となく受け入れていた。こういうのは心を分かち合う仲、とでも言うのだろうか。
「…」
「どうした、俺のことジロジロ見て」
「…いや、別に。何か、その…不思議なんだ。こんな心を揺さぶられるようなやつがいたんだなって。こんな気持ち、初めてだからさ」
「えっ、何それ…気持ち悪っ…」
共に走っている道中、俺は自分の中に思ったことを打ち明けた。結果は気持ち悪いと一蹴されたけど、それでも何処となくロボのことが気になってしまう。
その時、
バチッ!!
「…っぐ! ウゥッ」
「うぉっ、急にどうした」
突然俺の頭の中に強烈な電流が流れたかと思うと、
「…次に会うとしたら……地獄で会おうぜ…」
誰かに向かってそんな台詞を吐く記憶が目の前に浮かぶ。だがいったい誰に、何処で、何をもってそのように話しているのかは分からなかった。
でも俺は自分自身に想う人がいたのだと、直感的に思った。ロボ以外にも、自分が心を許した存在が前にもいたのだ、と。
それを思い出した俺はもう前を向いていた。ロボの行先を、抱いている心を、支えるために。
そしてついに俺達は目的の地へと辿り着いた。ここまで一度も敵と遭遇せずに来れたのは奇跡と言える。だがそれでも油断は出来ない。むしろ研究所の近くの方が敵の数は多いだろう。ならば共に協力し、内部からぶっ壊していこう、と俺は考えていた。
しかし、
「こっから先は俺だけで行く」
ロボはそう言って研究所の壁を乗り越えようとしていた。どうして2人で協力しないのか、と尋ねたがロボはさっさと壁の上に登って行ってしまう。そして、
「俺は…俺はどうしてもアイツらを許せない。俺を捨てたやつらのことを。それだけは俺が、この手で、必ず、復讐を果たす。お前にゃ、そんな役回りをやらせたくないし、やらせない」
とただ淡々と、しかし強く言った。その滾る決意を前に、俺は何も言い返せなかった。たしかに今までのことはロボ自身が実行したがった復讐劇であり、俺はそれに加担しただけだ。これから先は1人でやると言ったロボを止める必要は無い。
そうしていると、ロボも無理強いをしてしまったというか、決まりが悪いと思ったのか、少し俯いてしまった。そして、
「…多分、俺を殺すために出向いた兵器達が俺の現在地を特定して戻って来てるかも。…俺の最後のワガママ、ソイツらを一掃してくれって言ったら…聞くか?」
と、最後のワガママを俺に言った。
「…しゃぁねぇな。やってやるよ、そんぐらい」
「悪りぃな、ソイツらは目的達成の為ならどんな犠牲を払ってでも実行するようなやつらだ。林の近くの住宅街とか襲ってるかもだから、頼んでくれていいかな」
俺はロボのワガママを承諾すると、ロボはハンッと機械らしくなく笑った。こんなに機械らしくないロボがいるのかって思うくらい。でも何かロボだと違和感がないってのが不思議だなぁ。
共に過ごした時間は決して長くない。親友だとか一生の友だとか、そんなもんじゃない。
けど、決して他にはいない存在と巡り合えた。そう思えるだけで満足だった。
だから俺は何も言わず、黙ってその場を後にした。背後ではロボが、自身と親の決着を付けに行く。いずれ自分もあんな風な戦いを繰り広げる時が来るのだろうか。いや、それともすでにやっているのだろうか。
過去の俺は、まだ取り戻せていない俺は、いったいどんなやつだったんだろう。
そんなことを思っていると、
(おうおう、お前らしくなかったなぁ。お前が他人にあれほど心を許すなんてよ)
最近大人しかった体の中の魔神が問いかけて来た。そういやロボとの会話の際もあんまり関わって来なかったから、それなりに気遣ってくれたのかもしれない。めんどくさくて入って来なかった可能性も大いにあるけど。
「何となくだ、何となく」
それだけ言って俺はロボのワガママを聞くため山を降りた。道中にはあの時戦った兵器が何度も視界に入った。そこには、こちらに目もくれず、ただ与えられた使命の実行、して目標を殲滅だけを持ってきる無機質さだけが感じられる。ロボのような人間らしさは微塵もない。
(やるのか?)
「やるさ」
魔神の問いに俺は一言だけそう答えると、パキパキと指を鳴らしながら兵器に挑んだ。一直線ではなく、最後に弱点を潰すための寄り道をしながら。
そして、
(何を捧げれば…もっと強くなれるんだろう…)
兵器との戦いの中、そんなことを思っていた。ただ一直線に立ち向かい敵を潰すことが出来る、そんな力は決して無敵じゃない。
けれど先程の自分を思い返せば、どうしても今より強い力を欲しがってしまう。目の前にいるこの敵の装甲を、今後現れるであろう更に強い敵の体を、打ち破れるだけの力が欲しい。
いや、違う。
俺は、俺が欲しいものは、誰にも負けず、敵などいない、まさしく無敵になれる力が欲しいんだ。
(何を捧げる?)
「何を捧げればいい?」
魔神が問うから、俺は逆に問い返す。何を捧げれば今以上になれるのか、と。しかし俺の問いに対する魔神の言葉は、
(質問を質問で返すなよ)
だった。何か釈然としないなぁ。
そんな風に思いながら俺は兵器達をロボがやったみたく殲滅していくのだった。弱点を教えてもらってからというもの、戦いは俺の方に分があった。身をよじることで生まれる鎧の隙間、そこを縫うようにしてメインコンピュータを取り出しては潰していく。
単調な行動故に、だんだん戦いから作業と化していくような気がしてならない。そんな自分のやる気が削がれぬよう俺はいかに敵を無傷で仕留められるか、というゲーム的感覚で戦いに臨むようになった。
本来ならこんなこと思いながらやっちゃいけないんだろうけど。
だが、自分はたしかに感じていた。
自分自身が明らかに強くなっていることに。自分が更に高みへと向かっていることに。
そんな中、ついに自分は林の中を抜け、民家へと降りて来ていた。まだそこにはやつらの魔の手が広がっていないのか、それとも引き返しているところを俺がやっつけたのか定かではないが、特に敵の気配はなかった。ロボと別れてから数時間は戦いっぱなしだったから、そうなると少し疲労なるものが出て来る。
「ふぅ」
と俺は一息つくと、林の中にあった研究所の方を振り向いた。
その瞬間、
ズドォオオンッ!!
地震と見紛う程の大地の揺れ、全身を揺るがす程の爆音が――
ゴォオオオ…
そして天に登る真っ黒な煙が、すぐ側の林の中から、正確にはロボが生まれた研究所のところから登っていた。
次回の投稿もお楽しみに
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