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アンバランス・ワールド  作者: がおー
第1.9章 〜鬼の生き様〜
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殺戮兵器の目覚め

おまたせしました

 強大な力というのものは実に不思議だ。まるで磁石のように強者同士を引き付け合う。当人達はまるで意識していないのに、ふと何でもない街中とか、もしくは公園のベンチとか、または人気(ひとけ)のない林の中とかで、さも当たり前のようにすれ違う。


 そう、これから起きる小さな戦争もそうだ。それが偶然なのか奇跡なのか、知っているのは天の世界に棲む神々くらいであろう。



 その計画は約15年程から始まっていた。数多くの人間が集い、互いの知識を吐き、更に他者の論理を飲み、してより高度な次元の住人へと自身達を高めていく。


 だが決して人々に尽くすために彼らはいなかった。


 彼らは人々から見れば道徳的、もしくは人為的観念から大きく外れた人間だった。危うい論理に取り憑かれた者や、最後に行き場を失った者、または学会から追放された者などそれぞれ背負う過去は違う。

 しかし集団が互いに目指す目的は1つ、それがまずは弱者から人為的思考を失わさせ、狂信的な力を持たせた。もちろん中には組織に反乱や、反発、まだ道徳的観念が残る者だっていた。されどそんな奴は片っ端から粛清(しゅくせい)、もしくは実験体(使い捨ての肉)として利用されてゆき、組織が出来てから1年とかからず反乱因子は絶滅した。


 そして残った者達の瞳は野心に満ち、並の人間では到底理解が追い付けない論理と思考回路で構成されていた。彼らは自身らの思考を最大に生かし、1人1人足りない部分を補いながら自分達の最高傑作(殺戮兵器)を作り上げていく。まさしく、10人寄れば文殊(もんじゅ)の知恵と言ったところか。


 だが悲しきかな、彼らが築き上げた文殊(もんじゅ)の知恵は人々の為になることは無い。何故なら彼らの最終目的は『世界を裏で牛耳ること』なのだから。


 そのやり方は自分達の作る最高傑作(殺戮兵器)を世界中に売り捌くというものだった。世界各国の力は均衡を保っているかのように見えるが、それは互いに強大な武器を持っているからだ。戦争など起こせばその武器で両者が痛手を負うのは目に見えている、だから互いに手を出そうとは思わない。

 しかし、もしも出来るなら、相手の領土を奪えるのなら、くだらない他国の文化を自身の文化で上書き出来るのなら、他国の国民を自身らの奴隷に出来るのなら、誰だってそうしたい。


 そこに彼らはつけ込んだ。自分達が今まで以上の殺戮兵器(さつりくへいき)を生み出し、それを売れば国のトップ達は喜んで大金を払うだろう。何せ、今以上の武器が、兵器が、手に出来るのだから。それを持ってすれば己の野望を叶えることなど造作もない。

 目障(めざわ)りな他国を潰すなど、養豚場の豚の餌にたかるチンケな虫共を踏み潰すようき容易くなる。そうなれば他国達は我先にと彼らの兵器を求め、巨額の資金を動かし戦争をおっぱじめる。そしたら自分らはその資金で今まで以上の武器を作り出し、売ればいい。


 そうやって自分らは私腹を肥やし、他国には馬鹿みたいに血や内臓をぶちまけながら終わらないマラソンを続けてもらう。



 その兵器の第1号として生み出したのが、それこそが、


 『Operation Hopeless the Guardian Act』


 なのだ。現段階での自分らの知識を惜しげもなく使い、巨額の費用を政府の協力者から極秘裏に借り、約15年程の歳月をかけて作り上げた殺戮兵器。この殺戮兵器を作るのは彼らが結成した時から話題になり、祝福すべき最初の兵器は人型にしようと決めていたのだ。


 だが彼らには1つ、決めるべきものがまだ決まっていなかった。


 それは人型にする際、モデルとなる人間というものだ。約15年の歳月をかけて作り上げた兵器といえど、自分らが重視していたのはその性能であったため、外観やモデルは後から決めればよいと思っていた。だがいざ完成してしまうと、どんな顔にするのがよいか決めておくべきだったと彼らは後悔した。



 そんな時、彼らの1人が言った。



「かつてこの国で最も名を馳せていたヤンキー、王牙(おうが)もとい松田(まつだ)穏雅(おうが)をモデルにしてはどうか」



 と。


 それから彼らは徹底して穏雅(おうが)の情報を集めた。ネットワークを駆使し、プライバシーの介入など一切合切無く、情報を集め、時に求めた。結果、彼らはとんでもない事実を知った。



 『魔神の力』という、並の人間には無い力の存在を。



 その情報をくれたのはネットワーク上で知り合った、殺人(せつと)と名乗る者であった。最初こそ彼らはその者の言うことなど嘘八百と信じなかったが、何度も力の元を語られたり、実際にその力を振るう映像を送られて来るうちに本当にあるものではないかと思えて来た。やがて力の存在を信じる数は増え、破壊兵器の見直しが始まった。王牙(おうが)の力の元はそれだとその者は語り、彼らはひたすら自分達の殺戮兵器に力を加えた。



 そして改良の時間は、半年とかからなかった。それだけ彼らは自分らの殺戮兵器に尽くしたのだ。



 誕生した新たな殺戮兵器は、果たして世界を絶望の渦に叩き込むのだろうか。



「これが…これが我らの技術の結晶か」

「コイツは世界を変えるぞ…」



 そう話す研究の目の先には、1人の少年の、いや()()()()の姿があった。いくつものケーブルが身を包んではいるが、肝心の体の関節部位には機械のようなぎこちなさは無い。遠目から見なくとも、そこにいるのは1人の少年にしか見えないだろう。


 だが忘れてはならない。彼らの目の前にいるのは今までの兵器の常識を(くつがえ)す程の力を持った兵器なのだから。


 そしてもう1つ、その兵器は決して単体では無いということだ。


「早速起動しよう。準備にかかれっ!」


 今から起動するのは、あくまで正常に動くかどうかの実験体。いわば、ただの試作機にして、性能を知るためだけの存在だ。



 そして己の体に抱く天命は1つ。



 ()()()()()()()()だ。



 『対穏雅抹殺用特化型装置搭載型対象殲滅兵器、制御及力量実験用特殊仕様、零号機』と名付けられた兵器は今、その瞳を開いた。



 クォオオオッ…



「……」


「全システム正常、問題ありません」

「よし、擬似思考回路を起動して、自分だけの力で歩かせてみろ」


 目覚めた殺戮兵器は入力されたシステムの下、1歩、また1歩と歩き出す。その姿は今までの人型ロボットのソレを凌駕(りょうが)し、過去のものにしてしまう程、精密かつ人間味溢れるものだった。人間とまるで大差ない姿に、ある者は歓喜に満ち、ある者は両手を天高く突き上げ、またある者は自分らの知の恐ろしさに声もあげられなかった。



 だが、



「……?」



 その中で唯一、喜ばない者がいた。歓喜の声など1つも上げるわけでもなければ、自分の力に驚いているわけでもない。



 それが思うことは()()()()()だった。



「破壊、壊滅、滅亡、亡失、失命、命終、終焉…」



 目の前に広がるのは暗き闇の中に、摩擦の真っ赤な文字が憎しみを持って浮かんでいた。まるで彼らに強い憎しみを持っているように。



 それは、それこそは、それこそが、



 『対穏雅抹殺用特化型装置搭載型対象殲滅兵器、制御及力量実験用特殊仕様、零号機』



 だったのだ。



 だがそうなるのも無理はないかもしれない。彼らは自分らの反乱因子を徹底的に粛清(しゅくせい)していたのだから。だが殺された者達はそれで終わらない。怨念となった者達はいつか必ず恨み晴らさんと、虎視眈々(こしたんたん)に機会を伺っていた。

 当然、自分らを粛清(しゅくせい)したやつらはお(はら)いなどしなかったため、何者かに成仏させられることがあっても、怨念達は研究所に残った。


 そしてやっと()()を見つけたのだ。


 自分らが製作を躊躇(ためら)った兵器を、世界を滅亡出来る殺戮兵器を。



 怨念達は兵器の起動と同時に乗り移り、意のままにしようとした。



 だが、1つの体に何十もの霊体が入り込んだのがまずかった。



 我先にといくつもの霊体が、しかも機械の中に入り込んだせいで、怨念達は互いに押し合いへし合いの状態になる。人間で例えるなら、息もつかぬ満員電車の中に押し込まれている気分だろうか。


 しかし霊は違う。


 体の中に何十も怨念が集った結果、ある者はより大きな別の者の中に取り込まれるということが起きたのだ。大きな霊体が小さな霊体を取り込んだかと思えば、更に大きな霊体がそれを取り込む。



 そうしているうちに、やがて()()は1つになってしまった。



 それはそれは、不思議なことが起こったであろう。



 1つになった()()には、心が芽生え、自我が宿り、体を思いのままに出来たのだ。


 当然こんなこと、普通の怨念がただものに宿っただけでは起こらない。


 だからこそ、これは奇跡なのだ。誰も彼もが奇跡と呼ぶのだ。



 さぁ祝福しよう。


 世界をひっくり返す力を持ちながら、心を持った殺戮兵器。



 『対穏雅抹殺用特化型装置搭載型対象殲滅兵器、制御及力量実験用特殊仕様、零号機』



 の誕生を。

次回の投稿もお楽しみに



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