3話
「…………ガガガピピピ」
プシューとドアが開く。アカネさんの指摘通り、確かに何かしらのアナウンスをしているようだ。
完全に雑音のため、音楽なのか、人間の声なのか、男なのか女なのかもわからない。
僕は降りようと一歩踏み出そうと右足をあげ、ふと躊躇する。
このまま降りていいのか?と。
車内から見えるホームは薄暗い。かび臭い。人の気配が無い。蛍光灯は古くてチリチリと音を立てながらチラついている。
「えーい」
気の抜けた声とともに背中に衝撃。
僕はコンクリートのホームに降りた。
「は?」
プシュンと閉まるドア、窓越しに満面の笑みで手を振る(前髪が隠れているため口角で予想)アカネさん。そして
僕一人だけ――――――
「ああ??」
一瞬だけ嫌な目にあった気がする。
「よっと」
ドアが閉まる寸前にアカネさんがホームに降りた。
プシュンとドアが閉まり、ゆるゆると地下鉄が加速し、車両はホームから出て行った。
ガタゴトという音が遠ざかり、ホームには沈黙が満ちた。
「降りるの遅いよ。後が使えてるんだから」
そんな沈黙を破ってアカネさんがのほほんと告げた。
「えっと……?」
僕はそれどころでない。言いようのない気持ち悪さを感じて胸を押さえた。
「ふうむ……?」
アカネさんは一歩一歩確かめるように進む。
壁にかかった時計を見上げて、右手首の腕時計を見た。
「なんかずれてるわね。どっちが正解なのかな……どうしたのたくみくん。不整脈?」
「いえ、そんな持病は無いんですけど……あれ?」
押さえているうちにだんだんと気持ち悪さは消えていく。じんわり、じんわりと。
「なんかよくわからないですね。アカネさん、僕の背中を押しました?」
「……ん~ん。押してないよ」
アカネさんはニマニマしながら僕の顔に向かって手を伸ばす。
「熱でもあるのかい?測ってあげようか?」
「いえ!だいじょ、大丈夫です!!ので!!」
気恥ずかしさを紛らわすように目線をそらすと、ホームの端に上へと続く階段が見えた。
階段の先は暗闇になっているようで、闇に続いているようだ。
「アカネさん、あの階段を登っていけばいいんじゃないですかね。地上に行けば今どこにいるのかとかわかるんじゃないですか?」
「それもいいんだけど、まずはホームのチェックのほうが先じゃない?」




