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第16話 そう遠くない昔

 ボクはあまりのショッキングな出来事の連続で、混乱し、倒れてしまった、・・・の筈だ。ハルがボクをクラリッサと呼ぶ声が薄らと聞こえている中で、ハル、、、何でハルがここに居るのだろうか。カズはどこに、セイコは、・・・、カズ?、セイコって、誰?

 ボクの頭の中は、再び混乱する。


 もやもやしたものが頭の中で、浮かび上がっては消えを繰り返す。やがて、意識はだんだんとはっきりしてきた。これは過去の記憶。そんなに昔じゃないな、でも正確な期間は分からない。

 ボクは白い部屋の中で、何かの装置に寝そべっていた。この装置は、意志記憶融合装置?だったかな。

 

 場所は自宅のラボ。ボクに意志と記憶を融合させるのに相性のいい人物が階下のラボに居て、ボクはその人との融合をこれから行うところだった。

 初老の科学者らしき人物が、右手に分厚いマニュアルのようなものを持って、ボクに話しかけている。科学者の胸のプレートにはコベナント博士と書かれている。そして、T.O.R.O.I.A.のロゴがあった。


 ボクがジョアンナの部屋でサバイバルスーツを解体したとき、スーツの内側に同じロゴが書かれていた。Aの箇所が皺がよって、ピリオドも小さすぎて、何故だかボクはそれをトロイと誤認し、それを自分の名だと言ってしまっていた。


 何故、そんなことを言ったのか、その時は疑問にするような思いが全く働かなかった。まるで、心に強制的な指令のようなものがあって、そう言わされた感じだった。以降も、自分の名前について調べたり、家族について気にする気持ちが全く起きなかった。

 自分の周囲に起こる出来事に驚き、流されるように過ごしていた、それは苦痛がなく、とても心地よかった。


 装置に横たわるボクにコベナント博士は、話しかける。


「クラリッサ・ワイルダー少尉、君はこれからバチカンス公国へ潜入し、公国に囚われているある人物を秘密裏に救出し、我々の組織の協力者へ引き渡してくれたまえ。そして、君は協力者が手配する脱出手段で国外へ脱出してもらう。

 作戦の細かい指示は、君が作開始後分かる手はずになっていることは。これまでの訓練で経験済みで理解していると思うが、今回は実戦だ。訓練通りになるとは保証できないが、君と君に居住する協力者が君の任務の全うを支援してくれることだろう。

 作戦の開始は今から10時間後だ。目覚めたとき、君は自分が誰であるかを意識できないが、君が与えられた指令の初期情報から行動を起こしていくことで覚醒し、作戦行動を遂行することになる」


「もう、博士繰り返さなくていいわ。分かってるから、それにこれから私はこの装置にかけられて睡眠指示を書き込まれて眠りにつくのよ。今、聞いていることなんて、次に目覚めたら忘れてしまうのでしょう」


「いや、それはそうなんだが。私は心配なんだよワイルダー少尉」


 このヒトにも困ったものだ。優秀ではあるのだが、今一つクールさに欠ける。


 アタシは、おどおどする博士を尻目に、改めて今回の服装を見直した。レザー系のスーツだが、当然、革製ではなく、人工筋肉繊維が編み込まれた工作員スーツである。これまでにない薄型で、動きやすい活動的な服装だ。胸のふくらみも隠していないから、今回は女性で行くらしい。


 訓練では男性のときもかなりあったが、少年ならば違和感なくこなせていた。こちとら、旦那持ちな上に出産経験者なので、女の裸にどう反応していいか迷ったが、クール系で攻めたから問題なかった。

 ただ、男の裸にも無反応してたら惚れられてしまい、あわやBLライフを送る寸前までいきかけた。男性時のペニスのギミックにも驚かされた。あれで、用が足せてしまうし、刺激で膨張もするから、急に自我が戻ると、リアルなモノが股間に生えてるもんだから、びっくりする。


 気が付けば博士は、まだもごもごと喋っていた。


「博士、落ち着いて。行くのは私だから」

 

「これを使っての作戦は今回が初めてだから博士も緊張されているのです」


 話しに割り込んで来たのは、コベナント博士の愛娘で、医療部門のチーフでもあるマリエッタ・コベナント医療大尉だ。年は28歳、大人の出来るオンナ臭のする人だ。アタシが一目置くくらいだから、その辺のちゃらい女とは資質から違う。


 彼女とは公私の付き合いで、彼是、2年になる。プライベートでは、お互いをマリエッタ、レイカと呼び合う仲だ。アタシは心を許せる親しい間柄の相手にのみ日本名の麗香レイカと呼ばせている。アタシをレイカと呼べるのは、両親以外では、旦那のカズと娘のセイコ、そして妹の晴香ハルカのみだ。ガズの弟のハルも呼ばせてやってもいいけど、あいつはアタシの舎弟だから、上下関係をはっきりしとかなといけないから呼ばせない。

 兄たちは社会ではライバルなので、ファーストネームのクラリッサとしか呼ばせない。そんなところだ。


「はい、マリエッタ、いえ、クラウディア・マリエッタ・コベナント医療大尉どの」


 マリエッタが不安顔だったので、アタシは少々大げさにおどけて、敬礼して見せた。それを見て、いかばかりかマリエッタの表情はほころんだ。


「アナタみたいな人がこんな組織に入って来て、正直驚いたわ。世界的な若きビジネス経営者で、世界の富豪100人に入るほどの人が、父の研究のスポンサーになってくれて、おまけに自らエージェントに志願されるなんて」


 また、この話か。どうにも私の思考と行動は一般の人には奇異で、異常に映るようだ。


「人生は百年と長いけど、若く動ける時期は大災害前と比較しても、10年とそこらしか変わりが無いのよ。若いうちに人生の第一進路を決めて、それに邁進して、資産を作って、子孫も作って、第二、第三の人生を歩むってのが、アタシがローティーン最後の年に決めたことなの。

 そして、今が第二の人生を始めているに過ぎないの」


「でも、お子さん。まだ5歳なのよ。何かあったら、あなたは準備は整えてあるとはいうけど、お子さんにしてみたら、・・・・」


「ノンノン。彼女は健康な体で生まれて、英才教育と自由を与えられて、親の愛も注がれて、あと五年もしたら、自分の人生の第一進路を決めていくわ。

 それに人に降りかかる悲劇は前触れもなしに起きるのよ。5歳に満たない子供が、ある日突然に親を無くしたり、自身が虐待を受けたり、生まれながらに不治の病や障害を持ってしまっていたり、瀕死の状況に陥ることは、大災害後のこの発達した社会で年間、何万件と起きているわ。

 あの子は、セイコは、私とカズの間に生まれたことで人生最大のチャンスを既に手にしているの。それを最大限に使わない手はないのよ」


「あなた本当に強いわね」


「アタシも、アタシの兄妹も父母も、その祖父母も、ご先祖様たちもそうして来たの、大災害を乗り越えた果てにそうなったのよ。

 ごく普通の慎ましい生き方も否定はしないけど、チャンスは簡単には手に入らないものよ、ある内に最大限に使う。考えなしの浪費はバカがすることよ。それもアナタなら分かるでしょ」


「あなたに説教なんて不毛よね。それに、未だにワイルダーを名乗っている時点で、家庭人じゃないのよね」


「ワイルダーはあくまでもビジネスネームで、ライフネーム。加藤を名乗る頃のアタシは、黄昏おばあちゃんになってるんじゃないかな」


 アタシは思わず笑いが出た。マリエッタもつられて笑った。そこへ、カウントダウン開始のアラームが鳴りだした。

 アタシは呼吸マスクをつけ、ヘルメット着用し体制を整えた。


 次第に意識同調が開始され、麻酔にでもかかったように、うとうとするが意識は落ちずに保っている。博士は懲りずに何かを言っているが、耳からの音はところどころ聞こえない。


「・・・くん、これからの・・・・よく聞きなさい。君は・・・・・」

「先生、もう始まって・・・・」

「そうか、では、・・・・くん。行きた・・・・」


 やがて、人の記憶のようなイメージが多重に頭の中に流れ込んで来る。自分の記憶と誰かの記憶が重なっていく中に、アタシという思念体が高速で旅をするイメージだ。流れの先に果ては無く、延々と続いていく、ただ、延々と、延々と・・・・・

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