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神への祈りは0と1とで出来ている ~私の王子様、選び放題?! 恋する☆彡 ロイヤルアカデミー~  作者: さいべり屋
Route:Lucien 花園王子と薔薇の騎士

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Troisième coup/開幕の合図

──壁が、聳(そび)え立った。


 いや、壁ではない。人だ──。

 リュシアンがそう理解するのにひと呼吸必要だった。

 鈍(にび)色に光る重装鎧。よく見れば、見上げるほど背が高いわけでもないのに、とにかく圧倒的なオーラがそれを巨大にみせていた。


「……で、この鎧が、なんだって?」

 リュシアンが聞き直すと、リーンハルトは揶揄うように眉を跳ね上げた。

「何度も言わせるな。お前の護衛だ」


「ハッ、ローゼンステインと申します!」

 鎧は"Ut"の音階で名を名乗ると、ガシャンと踵を打ち付け敬礼した。その途端、鉄の塊からツンとした臭いが漂う。鎧に隠れて見えないのに、その身体が鍛え抜かれていることは明らかだ。


「武で知られる辺境伯領の掌中の珠だ。無理を言って貸してもらった。ローゼンステインを側に置く限り、この王都でお前を害せる者はいないだろう」

 リーンハルトは執務室の机に肘をつき、長い指を組んだ。


「学園での髪切り事件をきっかけに、私の婚約も一旦は白紙となってしまった。改めて婚約を締結するには時間もかかるだろう。アスランは臣籍降下させてしまったし」

 リーンハルトはふ、と言葉を切った。

 学園を卒業して間もない、立太子を済ませたばかりの青年ではあるが、リーンハルトには既に為政者の風格がある。


「この状況で万一のことがあれば、リュシアン、第二王子のお前にすべてが行く。これからは阿(おもね)るものも弑(しい)そうとするものも桁違いに増えるだろう。──それから」

 リーンハルトはにやりと笑った。これは王子ではない、兄の顔だ。

「お目付け役も兼ねている。方々に種を撒いたりして、王統を混乱させぬようにな」


「ちょっ、兄上。言い方!」

 リーンハルトにはこういうところがある。権謀術数渦巻く王宮では、肉親でさえ自分をチェス盤の駒のように扱う。

 なのに、この腹違いの兄だけは、時折こうやって気安い一面を見せるのだ。


「お前も花園なんか作るのはやめて、一人に絞れ。多少の家格の差であればなんとかしてやろう。──ああ」

 リーンハルトは、名乗ったきりで微動だにせず直立する鎧にちらりと目を遣った。

「お前、学園であのピンク髪にご執心だったそうじゃないか。せめてもの情けに、護衛はピンク髪を選んでやったぞ」


「あれは、アスランがべた惚れの平民の子を揶揄ってやっただけだよ。僕は、髪の色なんかどうでもいいし、それに」

 それにたとえ、ほんとうにピンク髪が好みだったとしても──。


「僕は、ゴリマッチョの男に、興味はない‼」

 リュシアンが叫ぶと、リーンハルトは耐えきれないというように声をあげて笑った。



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