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神への祈りは0と1とで出来ている ~私の王子様、選び放題?! 恋する☆彡 ロイヤルアカデミー~  作者: さいべり屋
Route:Lucien 花園王子と薔薇の騎士

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une bagarre/大立ち回り、乱闘シーン

「女の子が待っている、と言っていませんでしたか」

 結局、とっぷりと日も暮れてしまい、ふたりは手近な酒場で向かい合っていた。

 リュシアンは煮込みのようなもの、ローズは焼いた小麦の皮で肉を包んだ料理を注文した。

 儀礼的に酒も頼んだが、護衛中のローズが手を付ける気配はない。


「言ったよ。王都中の女の子が、僕の演目を待ってるからね」

 とぼけたように躱す彼の頬は、久々に過ごしたリュートの余韻で紅潮している。

「あの演目、リモネラ嬢の身の上話を思い出しました」


 程なく料理が到着し、ローズは皮包みを手に取るとがぶりと噛みついた。大きなひとくちが齧り取られ、仮面の下へ消えていく。

「ああ、よく覚えてたね。リモネラちゃんは、婚約者とうまくいかなくて悩んでたんだ。彼女たちから物語のヒントをもらって、僕はみんなのための戯曲を作る」

 リュシアンは場違いなほど上品にスプーンで煮込みを掬い、高貴な口に合わなかったのか顔を顰めた。


「──花園のどなたかが、恋人なのかと」

「花園は見て楽しむものだよ。摘み取るのは野暮のすることさ」

 口直しに安ワインを煽ったものの、追い打ちのような渋さに途方に暮れた顔をしているリュシアンに、ローズが珍しく言い募った。


「では、やはり学園時代にご執心だったというピンク髪の」

「ああ、兄上が言ってたあれね。あれは弟のアスランが──。そういえば、君もピンク髪だって言ってたよね」

 ローズは雑に束ねた己の髪にちらりと目を遣る。

「ええ、まあ。可憐なご令嬢と違い、この見た目で得なことなどありませんが。我が領では魔法騎士としてピンク髪を積極的に雇用しております。しかし肝心の攻撃魔法が不得手とあっては──」

 ローズはそこで言葉を切った。店の外から、鋭い殺気が近づいてくるのを感じたからだ。


 神経を研ぎ澄ませて気配を探る。裏手まで囲まれてはいないようだ。

「リュシアン様、そちらの赤い扉から逃げてください」


 囁くように告げる。ローズの体が、わずかに沈み込んだ。


 しかしリュシアンは動かない。ローズは押し入ってきた暴漢に駆け寄った。すかさず手近な一人に足払いをかけ制圧する。

 倒れた男が卓にぶつかり、弾みで杯が倒れ、酒が飛び散る。悲鳴と怒号と皿が飛び交い、酒場は大混乱だ。


「リュシアン様、早く!」

 押し入ってきた暴漢はあと四人。主を守りながら戦うには、数が多すぎる。焦ったローズの声に険が混じる。

「リュシアン様!」

 聞き分けのない主を振り返ると、そこには、迷子の子供のように途方に暮れたリュシアンがいた。


「──っ。出て! 右の扉から!」

 一瞬の虚を突いてがら空きの背中を切り付けられたが、構ってはいられない。頷いたリュシアンが扉の向こうに消えるのを見届けてから、ゆっくりと振り向いた。


 仮面の下に垣間見える唇が、残忍な弧を描く。

 焔(ほむら)立つような己の殺気が聊か私情を含みすぎていることには、今は目を瞑ってもいいだろう。




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