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第九十九話 カップと食器は必要です~ヨーグルトメーカーで甘酒~

 ダッシャーが僕専用? ダッシャー専用? で作り出してくれた温かいのと冷たいのと両方に使える【温冷の聖泉器(サーモディスペンサー)】。

 でも、僕の発注? ミスでこれも使わないと飲み物が回転しない。


「ダッシャー、とっても嬉しいよ。僕専用の【温冷の聖泉器(サーモディスペンサー)】。でも今は数が足りないから、これも貸し出しちゃうけどそれは良いよね?」

「なぬ!? 我がいつでも『コーヒー飲み放題』ではないのか?」


「それはそれ、これはこれね。大きな声じゃ言えないけど、いつもダッシャーに作ってるカフェオレは、ちゃんと豆からドリップした本物なんだよ。でも今回はそんなことやってられないから、インスタントの希釈タイプにしちゃったんだ」

「どういうことだ?」


「つまり、このジャグで今から作るのは、いつものより、ちょっぴり愛情が少ないんだ。ダッシャーが飲みたいって言えば、いつでも僕の淹れたて愛情たっぷりのカフェオレは出せるけど、インスタントとどっちが良い?」

「愛情なの」「ミルクなの」

「我もいつものコーヒーだな!」


「じゃあ、木材の搬出が終わるまでは、このジャグも貸し出しするからね」

「炎属性の魔石も1個提供するから、搬出が終わったら俺も1個貰って良いんだよな?」

「冒険者ギルドに1個、ですね」


 一通りのクレイ樽や乾燥室の材料の加工が終わって、ダッシャーは暇そうにしている。

 子供たちもずっといい子で大人しくしてたけど、ソワソワし出した。


「そろそろ腹が減ったぞ」

「お腹空いたの」「にゅさまなの」

「お昼ご飯は用意してあるけど、僕たちだけ食べたらちょっと申し訳ないじゃない? それと練乳様は食後のデザートね。ちゃんと買ってあるから安心してね」


 まだお昼の時間には少し早いし、その前に確認しないといけないこともある。


「だがな、我は頑張ったと思うぞ」

「確かにダッシャー様は頑張った。あれだけの仕事を一瞬で片付けたんだ。腹も減るって」

「それ、自分が食べたいだけじゃないですか? 簡単に出来る物で良いならサクッと作っちゃいますけどね」


「おう! それで良いぞ」

「お前は関係ないぞ」


 自分も食べると言うルシアンさんに、するどくダッシャーが突っ込みを入れる。


「でもその前に甘酒だけ仕込ませてね」



 ルシアンさんから貰った『陽炎うさぎ』の、うっすらと赤い熱魔石を小さな穴へと嵌めていく。


 ――カチリ、カチャ。

 ――フゥ。


 ダッシャーの刻んだ魔法陣がじんわりとしたオレンジ色の光を放ち、木肌の奥へと吸い込まれるように馴染んでいった。


 その【温冷の聖泉器(サーモディスペンサー)】は、2つの魔石の上にダイヤルスイッチが、1つだけ取り付けられていた。

 マナ・レクス様が贈ってくれた、【温冷の調律器(サーモ・クッカー)】のスイッチに似ている。


「ダッシャー、これはどうやって使うの?」

「甘酒とやらは何℃が良いのだ?」

「うぅん、60℃がギリギリの線かなぁ。これ以上高いと麹菌が死んじゃうみたいなんだ」

「2回で良かろう。回してみよ」


 どうやらこれは他のジャグがベースになっているから、ダイヤルを回さない状態だと中身は10℃が標準仕様。コックから注ぐ時には、魔回路を通って4℃のキンキンに冷えて出てくる。

 これならずっと全体を冷やし続ける必要がないから、魔石の寿命も長持ちする。みんなに優しい省エネタイプだ。


 ここからは【温冷の聖泉器(サーモディスペンサー)】の真骨頂。1回カチッと回すと40℃で、ハーブウォーターを作る時に、おばあちゃんのはちみつを溶かしたり、ハーブの香りを立たせるのに便利だ。


 2回だと甘酒の発酵に丁度いい60℃で、3回だと80℃。80℃はサングリアのスパイスの香りを引き出すのに丁度いい。


「ん? 今回は、これで甘酒を作ります。他のジャグは10℃の仕様だよね? それはそれで美味しく飲めると思うんだけど……。もしかすると、君は後でこの【温冷の聖泉器(サーモディスペンサー)】で全種類を飲みたいと言ってるのでしょうか?」

「当然ではないか」

(やっぱり僕のためってよりは、自分が美味しく飲みたいって方でしたか)


「それはまた後でね。まずは甘酒だから、2回ね」


 【温冷の聖泉器(サーモディスペンサー)】に米麹とご飯と井戸水を投入して、カチカチとスイッチを回す。

 内蔵された魔回路が熱を帯びて、発酵を超加速させた。


 本来なら6時間はかかるはずが、わずか3分の発酵で、お米の芯までとろとろに糖化した極上の甘酒が完成した。



~【ヨーグルトメーカーで甘酒】~

■材料(約700〜800ml / ストレートで約6〜8杯分)

・冷蔵庫の冷やご飯:200g

・熱湯:300ml

・水(常温):100ml

・乾燥米麹:200g

■下準備

1.使う容器やスプーンは、事前に熱湯を回しかけて殺菌しておく。

■作り方

1.専用容器に冷やご飯を入れ、熱湯を注ぎ、そのまま1〜2分置いて、ご飯に水分を吸わせる。

2.スプーンでご飯の塊をよく崩し、ダマがないサラサラの状態にする。

3.水を加えて全体を混ぜる。

※冷やご飯と水を合わせたことで、麹に最適な温度(約50〜55℃)に下がります。

4.パラパラにほぐした米麹を加え、全体が均一になるようにしっかりと混ぜ合わせる。

5.容器に蓋をして本体に入れ、 【温度:60℃】、【タイマー:6時間】 に合わせてスタート。

6時間経てば、トロトロで甘いストレート甘酒の完成です。


 麦茶とレモンハーブウォーターとノンアルサングリアに、今作った甘酒の4樽をまずは森の給水所用として、ルシアンさんに木材置き場に設置して貰う。


 さて、大事なことを確認しないといけない。


「ところで、飲み物を用意したのは良いですが、飲み物用のカップは皆さんお持ちなんですか?」

「あぁ、どこでも飲める様に、みんなカップは持ってるぜ」


「それは王宮からお手伝いに来てくれてる人たちもですね?」

「あ、そいつは分からねぇな」

「僕の手持ちのカップだけだと、人数分には足りないんですが、使いまわしでも良いですか?」

「それでも良いとは思うが、持って来てるのか急いで聞いて来るわ!」


 皆さんのお昼ご飯用の食器も手持ちが足りない。

 王宮の広間を使う時には、王宮の食器を借りたり、各自で持って来て貰ってたけど、流石にこの森まで馬車で揺れながら、陶器の食器は持って来られないだろう。


「後、食器を持っているか聞いてください。お昼ご飯を用意しているので、もし無ければ提供出来ません」

「おいおい、それは最重要事項じゃねぇか! 今すぐ聞いて回って来るわっ!」

「出来ればお皿みたいに平らな物より、深い物の方が良いです」

「分かったぁぁぁ」


 あっと言う間に、愛馬のガルバに跨って走って行った。

 すぐそこだと思うのに、歩いて行かないところを見ると、ガルバを貰ったのが嬉しくて乗りたいだけかも知れない。


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