第九十八話 飲み物用の買い物をしました~僕のジャグは温冷の聖泉器~
ダッシャーが作ってくれた冷え冷え『魔道ジャグ』は僕が欲しいって言った分と合わせて、全部で7個。これを森に4個とエール醸造所に3個、分けて置くとして中身は大量に必要だ。
「お水はエール醸造所なら当然井戸があるだろうし、ここも商人ギルドが掘った井戸があるから、それを使えば良いね」
「お? あいつらそんなものまで作ってやがったのか」
ルシアンさんが呆れ顔で近寄ってくる。まだ『意識共鳴』の中で買い物の途中だから、僕の声は聞こえるけど姿は見えにくいはずだ。大体の感覚、と言うか嗅覚で嗅ぎつけてきた可能性もあるか……。
とりあえず、返事はしないで買い物の続きをしよっと。
「あっ! カットりんごが40%offになってる! ラッキー、全部買いだね」
皮を剥く手間もカットする手間も省けたうえに、お買い得と来たら迷うことは無い。
「確かシナモンスティックはまだ残ってたはず……」
アイテムボックスの中を探すと、カレーを作った時の残りが3本有った。今回はこれを使っちゃおう。
バナナもシュガースポットたっぷりの割引になってるのを選ぶ。後はぶどうジュースとオレンジジュースにレモン果汁。缶詰類は大量に欲しいからスーパーサンタじゃない方が良いかな。
続けてホームサンタで買い物をする。
「業務用の大きなみかん缶とパイン缶、コーン茶用には粒コーンだね」
希釈のカフェオレベースと濃縮麦茶、業務用の乾燥米麹をたっぷりとポチって、その足で園芸コーナーへと向かう。
「有った有った。これこれ、『スペアミント』と『レモングラス』の生苗ポット。この方がスーパーサンタで買うより断然安いもんね」
サングリアに入れるフルーツとハーブウォーターのハーブ、コーン茶のコーンに甘酒の米麹を入れる『ジュース絞り専用の紐付き綿布袋』をポチったら買い物は完了。
「あっ! 子供たちのミルクを買わなくっちゃ。カフェオレにも使うから、冷蔵庫にあるのだけじゃ足りないもんね」
ホームサンタに戻って牛乳をポチると、ベルちゃんがスリングから顔を出した。
「ママぁ、にゅさま」
「はぁい、良いでしゅよ、練乳といちごね」
おねだり分も一緒にポチって、大量買いだから段ボールを選ぶ。
ポチった瞬間、ドンドンドンッ!!!
鉄くずや瓦礫が積まれた火山岩の廃材置き場の前に、文字通り地面が揺れるほどの重厚な音を立てて、大きな段ボール箱がいくつも積み上がった。
「うおっ! 今度は何だよ!? 音だけじゃ恐いって!」
『意識共鳴』を解除する前に、せっせとアイテムボックスの中に大量の荷物をしまった。モチロン、重量物だからダッシャーが浮遊魔法で手伝ってくれた。
「ダッシャー、いつもありがとう」
森の給水所には麦茶とレモンハーブウォーターと甘酒にノンアルサングリア、王宮前のエール醸造所にも麦茶と、セオドア王もお気に入りの少し甘めのカフェオレにコーン茶を用意することにした。
麦茶は濃縮タイプで、井戸水を加えれば完成する簡単なヤツだ。
ハーブウォーターはホームサンタで買った苗木の採れたて生ハーブを使って、後はお手軽に瓶入りレモン果汁と、少しだけ冷蔵庫に残ってるスライスレモンも入れる。
隠し味にちょっぴりだけ、おばあちゃんのはちみつを入れたら完成。
後で取り出すのに楽な様に、ハーブとレモンは袋に入れた。
甘酒は米麹とご飯をアイテムボックス内のヨーグルトメーカーで発酵させて、素を作れば良いかな。
ノンアルサングリアにはたっぷりのジュースにレモン果汁、缶詰のフルーツとお買い得のりんごとバナナ。りんごは半分に手でパキバキ折って、バナナは皮をむいて3等分で良いか。
フルーツを袋に入れたら準備は完了。
飲み終わった後で袋を回収したら、フルーツはお馬さんのおやつにしても良いしね。
「よし、残りはエール醸造所の分だから、王宮に戻ってからトトさんに説明しながら作ろう」
冷え冷え『魔導ジャグ』はダッシャーが軽量化と氷結洗浄機能を付けてくれたおかげで、僕でも軽々と持ち上げることが出来た。
1回目は僕が準備するけど、補充用の材料を王宮から借りる水差しに入れて、どのジャグにどれを入れれば良いのか? 誰が見ても判別できる様にしておきたい。
「同じリボンを水差しの持ち手と、ジャグにはぐるっと巻けば一目で分かるかな?」
アイテムボックスから色んな種類と色のリボンを取り出した。
「麦茶はスエードのブラウン、ハーブウォーターはシフォンのミモザイエロー。サングリアはサテンのルビーワインで、カフェオレはグログランの薄いベージュ。コーン茶は麻紐風のゴールドイエローにしよう。飲み物のイメージにピッタリだから、これなら間違えないだろう」
自己満足的にリボンを魔導ジャグに可愛くラッピングしていて、1個だけ雰囲気の違うジャグがあるのに気が付いた。
「あれ? ダッシャー、1個だけ他のと違うのがあるよ」
「それはお主のだ」
「僕も1個欲しいから全部で7個、同じののつもりだったんだけどね」
「お主はそれに、我が『いつでも自由に飲めるコーヒー』を入れておいてくれるのであろう?」
「それはカフェオレだけど、まぁそんな感じかな」
「でも、魔石の穴が二つ開いてるよ?」
「『温冷の魔導ジャグ』だからな」
「この1個だけホットもアイスも切り替えられちゃう【温冷の聖泉器】なの? 相変わらず凄いな君は」
「魔石の穴も他のと同じだから、これも小さな魔石で良いってことなんだね」
もしかすると僕が甘酒を仕込むの分かってたのかな?
甘酒はお湯で仕込むし、冷え冷えだけのジャグだと別で仕込む手間が掛かる。
ヨーグルトメーカーはあるからアイテムボックス内、スペース無限で一気に作ろうと思ってたけど……。
この【温冷の聖泉器】があれば一度に仕込みもサービスも完了だ。
「よく僕が甘酒を用意しようと思ってるって分かったね」
「お、おう。我だからな」
あ、これはそんな感じじゃなく、もしかしてマナ・レクス様の【温冷の調律器】に対抗しただけなのかも?
なにはともあれ、また一つ便利な物が出来上がった。




