第六十八話 リリーの豪邸と比較してはいけません~朝食はハニートースト~
さて、まずはハニートーストだ。
巣蜜をリリーの子供サイズに小さく切って、自分たち用には少し大きめにカットだ。
厚切り食パンに格子に切れ込みを入れて、バターを塗り塗り、溝にもぎゅっぎゅっ。
トースターで格子の角がこんがりと色づくまで焼いたら、急いで取り出してアイスを乗せたら、上からはちみつをとろぉ~り。
~【ハニートースト】~
■材料(2人分)
・食パン:2枚(厚さ4〜5cm)
・有塩バター:40g(1枚につき20g)
・巣蜜:大きめの塊2つ(各トーストに1つ)
(はちみつなら大さじ3~4杯)
・トッピング:バニラアイス、ミントの葉
■下準備
1.バターを常温で少し柔らかくしておく。
2.トースターを1〜2分余熱する。
■作り方
1.厚切りパンの表面に、縦・横に3本ずつ深い格子状の切れ込みを、底から1cm手前まで入れる。
2.バターの半量ずつを表面に塗り、パンの切れ込みの溝にもバターナイフを使ってギュッギュと奥まで押し込む。
3.トースターに2枚並べて入れ、5分〜7分焼く。
※バターがじわじわと泡立ち、角やフチが、こんがりと「カリカリ」になるまでしっかり焼く。
4.焼き立ての熱々トーストをすぐにお皿に移し、パンの中央に巣蜜を大きな塊のまま贅沢に乗せる。
※お好みで、バニラアイスとミントを添えて召し上がれ!
美味しそうなバターの香りと、甘いはちみつの香りにベルちゃんとらんちゃんが起きて来た。
「ママぁ、お腹空いたの」「美味しいの……むにゅ」
「おはよう、すぐに出来るからもう少し待ってね」
「「はぁぁぁい」」
くうの背中に「ポン」と乗せる。
「くう、ちょっとこの子たち見ててね」
「お任せくださいませ。私にとっても可愛い子供たちです」
(あ、はい)
さぁ、急いでご飯の支度をしなくっちゃ――。
リリーの子供たちには、ゴールドの縁取りが美しい、バラ柄の小さなケーキプレートを用意した。
白磁のお皿の上に、ローヤルゼリーをスプーンの背で「くるっ」と弧を描くようになぞる。レストランのシェフがソースでお皿を彩る――『バルブ・デコレーション』のように、お皿には美しい乳白色の曲線が描かれた。
真ん中に小さくカットした巣蜜をあしらう。
仕上げに、色鮮やかな花粉をパラパラと散らし、天辺へプロポリスの雫を一滴落とした。
まるで三つ星レストランの高級デザートのような、お洒落で華やかな一皿が完成した。
「うん、我ながら可愛い」
リリーのお家の1階、ダイニングテーブルに用意したカトラリーレストに、ミニチュアのナイフとフォークをセットする。
お揃いの柄のティーカップに、大理石の水盤から汲んできた『守護の聖水』を満たせば、準備は完了だ。
僕たちには、アイテムボックスから取り出した、テーブルとキャンプチェアを用意した。
「なぁんか雰囲気違うんだよな……」
形から入る僕は、リリーの豪邸を前に自分たちの道具を見て、少し寂しい気持ちになった。
(いや、別にこれはこれで良いんだけどね……)
それでもテーブルクロスを掛けて少し気分を上げてみる。
「キャンプで使ってたテーブルクロスだから、やっぱりちょっと違うんだよな」
「何が違うのですか?」
「あぁ、何でもないんだよ。ちょっとリリーたちとの生活の差が見えちゃったなぁと思っただけだよ」
「ですが、リリー殿のお家はアン様がお買い求めになられたのですよね?」
「それはそうなんだけどね。うん、確かにそうだ。変なこと言ってごめん」
お皿に乗った熱々のハニートーストの上に、アイスクリームを乗せた。
「みんな、お待たせ。朝ご飯の用意が出来たよ」
「わぁ……! ありがとうございます、アンおねえちゃま!」
「とても美しい。それでいて美味しそうとは!」
子供たちが目をキラキラと輝かせて、テーブルの上に並べられた巣蜜を見つめた。
「さぁ、お行儀よく座って頂こうじゃないか」
ホワイト(ガトー・ブラン)が優しく嗜める。
ガタガタタン、ガタガタ――。
リリーを含めた全員がダイニングの席についた。
リリーにはパフェグラスに入れたローヤルゼリーを用意した。子供たちと同じ巣蜜を用意しようと思ったけど、またしても頑なに断られた。
「まだよ。母として、女王としての責務があるもの。でも明日になれば何でも食べられるかも知れないわ」
「そうなの? 一段落つくってこと?」
「ふふ、どうかしらね」
あまり突っ込むとまた嫌がられるかも知れない。拒絶されるのって辛いのね……。冒険者ギルドのルシアンさんに少し優しくしようと思った。
「では皆さん、手を合わせてください。いたぁだきます!」
「「「いたぁだきますっ!!」」」
くうが待ちかねた様に食べだした。
「パク。……ふぁふっっ!?」
「ほら、だから急いで食べちゃダメっていつも言ってるでしょ?」
「はい、お手を煩わせて申し訳ないのですが、少し小さく切って頂いても?」
「じゃあみんなの分も全部カットしちゃうね」
「きゅぅぅい」「チリンリンリン」
ちょこんとキャンプチェアに座った二人が、弾む様に答える。
ナイフを手に、熱々のハニートーストの上に乗った黄金色の塊に刃を当てる。
――サク、むにゅ。
出来たばかりでまだ柔らかい巣の、白い壁が心地よく破れる。六角形の小部屋が少しだけ潰れて、閉じ込められていたはちみつが「じゅわぁぁっ!」と厚切りパンの格子状の溝へと吸い込まれていった。
「ほぉぉぉ、これはたまりませんね!」
「食べるの」「欲しいの」
少し潰れてとろける巣蜜を、パンごとザクッと切り分けて、くうのお皿に戻す。
全体にバニラアイスが絡みつき、少しは冷めたはずだ。
「お待たせ。召し上がれ」
「頂戴いたしますっ!」




