第六十五話 五つ子の赤ちゃんが誕生しました~イメージカラーと名付け~
「やっぱりリリーがどうしてるのか気になるよね!?」
食後のデザート『アップルパイ風ホットサンド』を食べ終わって、レイ・クリーンで片付けを終えてダッシャーに声を掛けた。
セオドア王達はお馬さん達に謝りながら王宮へと戻ったところだ。
「ならば連絡すればよかろう」
「でももう時間も遅いよね?」
「行かずとも様子を見るために【通信機】を作ったのであろう?」
「でももう寝てるかも知れないよね?」
「蜂の性質からして、何時だろうが暗くなれば眠るのではないか?」
「お花畑の太陽ってどうなってるんだろう?」
「ここと同じと思うがな」
「ここはダッシャーが日照管理してくれてるんだよね。ならお花畑の管理もダッシャーなの?」
「ホーホーホー、そこは一応は儂じゃ。アンセルの居る場所と繋げて有るぞよ。お花畑はお主のアイテムボックスの中じゃからの」
「マナ・レクス様、なるほど。そう言うことですね」
「じゃが、今は夜じゃが寝ておるとは限らんのぉ、ホーホー」
「え? 何かあったのですか?」
「行ってみるがよい。ホー、そうじゃ! 手が空いた時でよいがの、ホームパーティ、楽しみにしておるぞよ」
「そうだ、お誕生日会にしましょうか? 卵が孵ったらでどうですか?」
「それで良いぞい。であれば急いでリリーの元へ行くが良い。お誕生日会の連絡待っておるぞ。ホーホー」
急いでアイテムボックスの『お花畑』に向かって話しかける。
「もしもし、リリー? 起きてる?」
アイテムボックスから色鮮やかな花たちがホログラムとなって「ふわっ」「ふわわん」「ふわんっ」といくつも飛び出した。
シャボン玉の様に大きく膨らんでは「パッ」と消え、大きく膨らんでは「パッ」と消える。
いくつかの花が咲いては消えた頃に、アイテムボックスの画面一杯にリリーが現れた。
「あら、あるじ様。ごきげんよう」
「あぁ、僕はご機嫌だけど、リリーは大丈夫? 変わりはない?」
「そうね。無いと言えば無いけど、あると言えばあるかしら」
リリーのこの感じは何かあったんだ!
「今すぐそっちに行くからちょっと待ってて!!」
ベルちゃんとらんちゃんをスリングに入れながら叫ぶ。
「ダッシャー、お花畑への門を開いて!」
「乗れ!」
急いで空へと駆けあがると、空中で魔法を発動させた。
「――開け、常春の箱庭!」
空に眩い白銀の光と共に桜の花びらが舞う。
すると白やピンクのバラに彩られた、『バラのアーチ』が現れ、ゆっくりと純白の扉が開く。
お花畑の中では、夜空に敷き詰められた無数の星の輝きが、まるで宝石を散りばめたように瞬いていた。
リリーのドールハウスの明かりが煌々と灯り、暗い夜を温かく照らし出している。
扉を翔け抜け、霊樹の室に作った巣を一心に見つめるリリーの元へと駆け寄った。
「リリー、何があった?」
ベルちゃんとらんちゃんが入ったスリングをしっかりと抱きかかえ、ダッシャーから転がる様に飛び降りる。
「あら、あるじ様、早いわね。この子たち、そろそろ生まれるわ……!」
両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、羽を小刻みに震わせながら声を上げた。
見つめる先で5つの卵は小さく揺れ、中から「コンコン」と音がする。
「ペキ、パキ」
お花畑に、ガラスがひび割れるような繊細な音が響き渡った。
「生まれるよっ。ダッシャーどうしよう」
「リリーが落ち着いておるのだ。お主が慌ててどうする」
殻の割れ目から光の粒子が溢れる。
眩い光が暗闇を照らす中、一番大きな卵の殻が内側から力強く押し上げられた。
「コロン」
卵が大きく割れ、殻が転がる。
卵の中から現れたのは――あまりにも瑞々しく、美しい、人型の赤ちゃんの姿をした妖精だった。
「んぷぅ……っ」
可愛らしい産声が響く。
それを合図に次々と殻がはじけ飛ぶ。
「ぷにゅ……」「あ、ふぅ……」「ふわあ……」「ぴゅぅ……」
「生まれたぁ。はぁちっちゃい。可愛いぃぃぃ」
「あら、あたしの子供たちですもの、可愛いに決まってるわ」
勝気なリリーの目にキラリと光る物が見えたのは、星の瞬きを映し出したのだろうか。
いそいそと、用意しておいた『ふかふかパイルのハンカチ』を取り出す。
どんな子が生まれるか分からなかったから、ホワイト、ゴールド、パープル、ブルー、レッドの5色を買っておいた。
「リリー、この子たちを抱き上げてもいい?」
「もちろん良いわよ。あたしのあるじ様は、この子達のあるじ様でもあるのよ」
最初に生まれた子をそっと殻から抱き上げる。
小さくて壊れてしまいそうだ。
「べろべろばぁ」
「キャッキャッ」
小さなおててを一生懸命に僕の方へと伸ばすその姿は、まるで天使だ。
ホワイトのハンカチで、生まれたての小さな体をそっと『おくるみ』で包み込む。
その産毛は光を反射する純白で、肌はまるで高級な磁器のように滑らかだ。
「君の名前は『ガトー・ブラン』だ」
「まぁあるじ様、素敵な名前をありがとう」
リリーも気に入ってくれたみたいで良かった。
そっと大切に、リリーの家の3階にある、子供用のホワイトアイアンのベッドに寝かせた。
2番目に生まれた子はゴールドのハンカチで包み込む。
ふっくらと丸みのある健康的な体つきで、陽だまりのような蜂蜜色の産毛をしている。
「君の名前は『ガレット・ブール』だよ」
3番目の子はパープルのハンカチで包み、名前を『グラッセ・ミュール』とした。
影をまとったようなミステリアスな薄肌、気品ある深い紫色の羽を持っている。
4番目の子はブルーのハンカチで『おくるみ』に包み込む。
ツンと上を向いた鼻、涼しげでクリスタルブルーに輝く羽の脈を持ち、産毛はツヤのある寒色だ。
「四女の君は『グラニテ・シトロン』だよ。
最後の子はレッドのハンカチを『おくるみ』にしてベッドに寝かせた。
ぽっと赤みの差した愛くるしいほっぺ、ルビーレッドにきらめく大きな瞳をしている。
「末っ子の君は『ガナッシュ・チェリー』に決めたよ」
5人の赤ちゃんを大事に丁寧にベッドに寝かせて、布団を掛ける。
ベッドの横を嬉しそうにパタパタと飛び回っては、子供たちの顔を覗き込むリリーがまた愛おしい。
「あぁ、あたしの子供たち。早く大きくおなりなさいね」




