第六十四話 お馬さんたちもご飯です~デザートはりんごのホットサンド~
何とか僕もハンバーグを食べ終えて、一息つこうと思って『意識共鳴』から外に出る。
「ブルルルッ」「ヒヒヒィィィン」
並木の方から馬の鳴き声と言うか、悲痛な叫び声が聞こえた――。
「お馬さん達がお腹空いたって言ってるよ?」
抱っこされてたらんちゃんが通訳してくれる。
「あぁぁぁぁぁっ! ごめん忘れてたっっ!!」
暗がりの木の陰に繋がれていて全く見えなかった。セオドア王もシアンさんも、自分の愛馬なのに面倒も忘れて自分だけご飯を食べてヒドイ主だ。
自分が忘れていたことを棚に上げてみた。
いくらダッシャーの生み出した『聖風の回廊』が疲れを感じさせないと言っても、喉は乾くしお腹は減る。
急いでバケツを取り出して水をあげる。塩と砂糖入りだ。
暗闇に紛れてフィデロとパドラスの陰で【アイテムボックス】を開く。
スーパーサンタで急いでりんごとバナナといちごに人参をポチる。さっき全部買っちゃったから無いかもだけど、念のため2階のペット用品売り場で乾燥牧草を探す。
「やっぱりないか……じゃカットメロンにしよっと」
「がさごそがさごそ、ポイポイポイポイ。がさごそがさごそ。ポイポイポイポイ」
別のバケツにいちごを入れて差し出す。
「むきむきむきむき、タンタンタンタン。むきむきむきむき、タンタンタンタン」
バナナを大慌てで剥いて切ってバケツに入れる。
「と、とりあえずこれで落ち着いたかな?」
「ンッヒ」「ヒンヒン」
「じゃあ後はのんびりで良いね」
りんごは芯と種を取って一口大にカット、人参も食べやすい様にスティック状にカットする。
「はい、どうぞ。たくさん食べてね」
「これは何だ? 何やら甘い香りがするぞ」
「メロンだよ。お馬さんたちにご飯を忘れてたお詫びね」
「我も食べるぞ」
「食べるのぉ」「美味しいのぉ」
「これでデザート作ろうと思ってたけど、メロンで良いなら簡単で良いけどね。どうする? ふっふっふっ」
片手にりんごを、片手にクロワッサンの袋をチラつかせて、ふくみ笑いをする。
「「「食べるぅ(ぞぉ)」」」
「じゃあこれはセオドア王に渡して、すぐに用意するからね」
みんなが移動して来たから、後を追って来ていたセオドア王にメロンを渡す。
「自分で食べちゃダメですからね」
ダッシャーの『意識共鳴』に隠れてデザートの用意をする。
りんごは8等分して皮を剥いて芯を取ったら、スライサーでサササーっとスライスする。
砂糖とバターを加え、3分半チン。
クロワッサンに挟んでホットサンドメーカーで焼いたら出来上がり!
~【クロワッサンのアップルパイ風ホットサンド】~
■材料(4個分)
・普通サイズのクロワッサン:4個
・りんご:1個
・バター:20g
・砂糖:大さじ2~3
・シナモンパウダー:お好みで少々
■作り方
1.りんごは8等分に切り、芯を取り除いて2〜3mmの薄切りにする。(皮は剥いても、そのままでもOK)
2.耐熱ボウルにりんごを入れ、砂糖とバターを乗せたらふんわりとラップをかけ、600wのレンジで3分半加熱する。
3.全体をスプーンで優しく混ぜ、りんごがしんなりして透き通るまで、1〜2分余熱で火を通す。
4.クロワッサンの横にナイフで切れ目を入れ、本のように開く。(完全に切り離さない)
5.クロワッサンに③のりんごをたっぷり挟む。お好みでシナモンパウダーを振ったらパンを閉じる。
6.ホットサンドメーカーを中火で軽く温めたら⑤をのせ、上からギュッとプレスして蓋を閉める。
7.弱火で片面約2分ずつ、様子を見ながら両面をきつね色になるまで香ばしく焼く。
「お馬さんたちのりんごを見てたら作りたくなったんだ。ご飯の後だけど食べられる?」
「「「食べるぅ(ぞぉ)」」」
「あ、あの……。私どもも」
「ちゃんとフィデロとパドラスに謝りました?」
「えぇ、戻ったらしっかりブラッシングをすると約束しました」
「ふふ、ではどうぞ。熱いですよ」
皆さんにカフェオレと子供たちにはミルク、僕とルシアンさんはコーヒーを飲みながらホットサンドを食べた。
「これはまさか『ふわふわ白パン』ですか?」
「違いますよ。『サクサクのクロワッサン』です」
「フォォォォォォォォ。これは危険な食べ物ですね。夢中で食べてしまいますよ」
「確かにカロリーはメチャ高いので危険ですね。シアンさんも食べすぎには注意してください」
「アンセル殿、これが昼間食べたのと同じりんご、とは? 全く食感が違いますね」
「りんごは火を通すとトロトロになって、これはこれで美味しいんですよ」
「ガツガツガツガツ、バクバクバクバク」
「また急いで食べると咽ますよ」
「俺は今まで甘い物なんて食べたことはなかったが、こんなに幸せな気持ちになるんだな」
「甘い物はブラックコーヒーに合いますよ」
「ハッフハッフふぁっちち」
「ほらだから一口は無理だって言ったでしょ?」
ダッシャーに冷めやすい様にカットして渡す。
当然子供たちにはカットして「ふぅふぅあーーん」だ。
「あれ? もしかして一瞬だけ【温冷の調律器】で冷やしたら食べやすくなるのかな?」
お皿に乗せたホットサンドを【温冷の調律器】に置いて、青いツマミを回す。
「カチッ」
ライトブルーの花が「ポンッ」と咲いて一瞬で冷気が漂う。
「ダメだ、一瞬で冷え冷えになっちゃった」
「どれ。パクッ」
ダッシャーが僕の手からパクついた。
「アチアチも良いがこれはこれで美味いぞ」
「ホント? どれどれ。パクッ」
「美味いであろう?」
「うん、美味しいね。熱い物は熱い方が美味しいと思ってたよ。ってことは?」
「何だ?」
「ジャジャーーーン!」
「れんにゅ?」「にゅさま?」
「おい、その音はダメなのではなかったのか?」
「今は良いんだよ~ん」
そう言って冷凍庫から取り出したバニラアイスを見せた。
「考えたら熱々のアップルパイだってアイス載せたりするから、どっちに載せてもそりゃ合うよね。欲しい人ぉ?」
「「「はぁぁい」」」「はいはい」「「はいっ」」
そりゃ全員だよね。
とりあえずシアンさんにはお馬さん達のおやつのアルファルファを渡しておいた。




