第六十三話 温冷の調律器フル稼働です~ご飯のお供はレンチンコーンスープ~
10台の魔石コンロがフル稼働している姿は壮観だった。『雷嵐の魔石』から伸びた『光の天蓋』が煌々と輝き、そこだけとても明るい空間となっていた。
辺りには炊き上がったばかりのご飯のふんわりとした香りが漂い、食欲をそそる。コンロにはスキレットがズラッと並び、ハンバーグの焼かれていく「ジュージュー」とした音と、肉の焼かれる美味しそうな匂いが辺り一面に広がっていく。
(よしよし、ちゃんとご飯の『蒸らし』をしてくれてるね。ハンバーグも火加減を見てくれてるし、僕が居なくても大丈夫かな)
「後は任せても大丈夫ですね? もしお肉が残ったら『保冷庫』に入れてくださいね」
「安心しておくれ。だけどこんなに美味しそうな香りのする食べ物が残る訳が無いさね。ハッハハ」
物凄く楽しそうにマルタさんが返してくれた。
さてと、僕たちの分も早く焼かないと不機嫌さんがここに居る。
『意識共鳴』に戻り、【温冷の調律器】を取り出す。
手持ちのスキレットは大が1個と小が2個、これだと全員分には足りないから、こないだみんなの分と一緒に買った深型のフライパンも使おうか。
ダッシャーに子供たち、セオドア王とシアンさんにルシアンさんも居る。多いな……。
「じゃ、オーブンも使いますか」
セオドア王たちは『意識共鳴』の中に居る。更に奥に潜って【スペース無限オーブン】を200℃に予熱する。
【温冷の調律器】の3つのスイッチを「カチ」「カチ」「カチ」。
天板に3つの花柄の幾何学模様の描かれた【温冷の調律器】は、なぜか3つの花柄に関係なく、僕の好きな位置で調理が出来る。
『まぁお主が使いたいところが使える場所じゃな。多分じゃがの。ホホ―』
マナ・レクス様の適当な返事が思い出される。
(ホントにどこでも使えるって思わないよね、普通)
3つの黄色い花が「ポン」「ポン」「ポン」とクッカーの天板に可愛く咲いた。
続けて「カチ」「カチ」「カチ」。オレンジ色の花が「ポン」「ポン」「ポン」と咲く。
「うん、可愛いなぁ」
「腹が減ったぞ」
「はいはい、ごめんごめん」
更に「カチ」「カチ」「カチ」。今度はピンク色の花が「ポン」「ポン」「ポン」と重なる様に咲く。
咲いた花の形に関係なく、乗るだけのフライパンを乗せた。
すると咲いた花が天板から「くるくるぽわわん」と浮かび上がると、回りながらスッと天板に吸い込まれる様に消えた。
「ほわぁ、可愛いなぁ」
(じと…………)
「はいはい、すぐ焼くね」
フライパンをしっかり熱したら油を引き、タネを入れる。
中火〜強火で1分半〜2分焼いて、しっかりと焦げ目をつけたら裏返して約1分焼く。
クッキングシートを敷いた天板に乗せ、200℃に余熱したオーブンで10〜12分焼いたら取り出して、天板に乗せたまま肉汁を落ち着かせる。
竹串を刺して、透明な汁が出れば焼き上がり。
お皿に移して大根おろしと大葉の千切りを乗せる。
フライパンに残った肉汁に天板の肉汁を合わせて、ソースの材料を入れて軽く煮詰めたら、ハンバーグにかけて完成。
別で用意した野菜を添えて、スープと野菜サラダも一緒にどうぞ。
「お待たせしました。熱々のうちに召し上がれ」
「待ちかねたぞ」
「食欲をそそる香りですね」
「これも是非ともトトに教えてくださいね」
「俺も分も、あるってことで良いんだよな?」
広場で公衆の面前で王様と一緒のテーブルは囲めない。そのまま『意識共鳴』の中にテーブルを用意していただく。
おろしハンバーグにスナップエンドウと野菜サラダを添えて、ご飯は僕がワンプレートは好きじゃないからセオドア王達には別盛りだ。
ダッシャーは食べにくいからワンプレートにして、ハンバーグは一口サイズにして、冷めやすい様にしてから渡す。
「まだ熱いから気を付けて食べるんだよ」
「分かっておるわ。はっふふはっふアッチッチ」
残った焼きたてハンバーグは【アイテムボックス】の『時間経過なしボックス』に熱々保存しておく。
後はレンジで簡単コーンスープを用意した。
~【レンジで濃厚本格コーンスープ】~
■材料(2人分)
・コーンクリーム缶:1缶(180g)
・コーンパウチ(ホールタイプ):1袋(55g)
・牛乳:200ml
・バター:大さじ1(約12g)
・コンソメ顆粒:小さじ1
・塩:ひとつまみ(指3本)
■作り方
1.大きめの耐熱容器(容量800ml程度)に材料を全部入れ、スプーンでダマがなくなるまでよく混ぜる。
2.ラップをふんわりとかけ、600wのレンジで2分チンしたら一度取り出してスプーンでぐるっと混ぜる。
3.ラップを戻して残り1分40秒チンする。
※量が多いため、吹きこぼれそうになったらレンジを止めてね。
4.底からしっかりと混ぜてバターを溶かしたら、2人分に盛り付けて完成
(子供たち用は冷たくしておこうかな)
コーンスープを取り分けて【温冷の調律器】に置いたら、青いツマミを「カチッ」。
ライトブルーの花が「ポンッ」と咲いて一瞬で冷気が漂う。
「きゅきゅぅぅ」「ちりぃんぴゅぅ」
「おや、そろそろ起きるかな?」
「ママぁお腹空いたの」「美味しいの食べるの」
「君たち起きまちたか? ご飯食べまちゅか?」
(あっしまった、つい気が緩んでお子ちゃま言葉になっちゃった)
「ガツガツガツガツ」「バクバクバクバク」「パクパクパクパク」「ガッガッ――う゛、ゲホッゴホッ」
「ルシアンさん、慌てなくてもハンバーグは逃げませんよ。お水をどうぞ」
(良かった。誰も聞いてないみたいだ)
「ありがとでちゅ」
にやりとルシアンさんに笑われた。
「お水もハンバーグも下げますよ」
「悪い悪い。もう言わねぇよ。好きにしてくれ」
「ぐ……。それはそれで気まずいです」
子供たちに向き直る。
「今夜は和風ハンバーグですよ。たくさん食べてくだちゃいね」
「「わーーい」」
この子達こそ食べたことはないはずだ。でもこの香りは食べたこと無くても絶対美味しいって思えるもんね。
ハンバーグとご飯にサラダ、冷製コーンスープを子供たちには用意した。
ハンバーグを一口サイズに切って、「ふぅふぅあーーん」「ふぅふぅあーーん」。
「はふはふ、美味しいーーー!」「おいしいのぉ」
「ふふ良かった。お野菜も食べてね」
「「はーーい」」
「スープも飲みましゅか?」
「飲むぅ」「飲むのぉ」
「お忙しいところ申し訳ないが、ご飯のお代わりいただけますか?」
「我もっ! ハンバーグもだっ!!」
はいはい、大人気で嬉しい限りだよ。たくさん焼いたけど僕の分、残るかな? まぁ僕は何でも良いか。
それはそうと、そろそろマナ・レクス様から便りがありそうだ。リリーのことも気がかりだ。




