第四十九話 お馬さんに圧倒されました~みんなでフルーツパーティ~
何やら驚いているセオドア王たちを後に、ダッシャーのところへ戻る。
「僕たちは胃の負担は考えなくていいから、甘くない順だと先にりんごが良いかな」
山盛りになったうさちゃんカットのりんごを「ドンッ」と出す。
【冷蔵庫】に入れておいたから冷え冷えだ。
「シャリシャリシャクシャク」
「シュワワワワワァ」
「ガッガッガッ」
「「美味しいぃ」」「美味いぞぉ」
初めてのりんごだけど、みんな気に入ったみたいだ。
「あの、私どもにもそれをいただけないでしょうか?」
お馬さん達がバナナといちごを食べ終えたらしく、セオドア王とシアンさんがやって来た。
後ろにピタリとお馬さん達が付いて来ている。次のおやつをおねだりしているのかな?
「これは僕の故郷の果物で『りんご』と言います。疲労回復の効果がありますよ。芯の近くが甘いんですが、お馬さんには毒なので決してあげないでくださいね」
「あっ、こらこら。待ちなさいお前たち」
馬たちが待ちきれずに顔を出した。
「ごめんごめん、お腹空いたね。すぐにあげるからね」
一口大に切ってあった『りんご』と『にんじん』をバケツにゴロゴロっと入れて、シアンさんに手渡す。
残念ながら、シアンさんが食べられるのはまだ先だ。
さり気なく僕たちの輪に入ったセオドア王にりんごを勧めて、僕たちは次のバナナを食べ始めた。
「あまぁい」「おいしぃ」
「先ほどのりんごは甘いところと甘くないところとあったが、これは全部が甘く、優しいのだな」
りんごは芯の周りが一番甘いけど、バナナは熟していれば全体が甘いからね。今回はすぐに食べるから値下がりしていたシュガースポットが多いのを選んだんだ。グッジョブ! 僕。
「それは先ほど馬たちが食べていた物ですか? そんなに甘いのですか?」
「どうぞ、食べてみてください」
「これは『バナナ』と言います。消化が早いので食べた瞬間から体が元気になりますよ。筋肉のけいれんを防ぐ効果もあるので、疲れた馬には良い食べ物です」
「ほぉ、美味しいだけではなく体にもいいとは、素晴らしいですね」
「わ、私にもそんな素晴らしい物をいただけませんか?」
シアンさんがバケツを手に持って、顔だけこちらに向けている。まだ馬たちが食べていて手が離せない様だ。
(まさか、「あ~ん」はしてあげないよ?)
最後はいちごだ。子供たちには洗ってヘタを取ったのを渡して、お馬さん達は、フルーツパークではヘタも大好きだと言っていたからそのままあげたけど、さっき見たバケツの中は空っぽだったから、ヘタも美味しく食べてくれたと思う。
りんごとにんじんを食べ終えたらしく、長い鼻先を「ズイッ」と伸ばして僕たちのテーブルに割り込んでくるお馬さん達。鼻先を軽く押し返して、シアンさんのバケツにバナナを入れてまた渡す。
「ブルルル」「ヒッヒン」
馬たちは嬉しそうだ。
それに引き換えシアンさんは食べたくて仕方ないらしく涙目で訴える。
「ア、アンセル殿、あまりにヒドイではありませんか……っ」
「でも僕は子供たちのお世話をしないといけませんので、申し訳ありません」
「そうだぞ。こやつは我の面倒を見るのだ。テオよ、お前が代わってやるといい」
「私はまだ食事中です! 次はその赤いのをいただけるのですか?」
余りに切実に訴えるからどうにも可哀そうになってしまって、嫌々渋々「あ~ん」でりんごを1切れ食べさせてあげた。
後は自分でどうぞ、だ。
「ママぁ、いちご無くなっちゃうよ」
「早くぅ」
「お主はそやつの世話を焼かずとも良いのだ。そんな暇があるのなら次の用意をせぬか」
「はいは~い、ちょっと待ってね」
「ふっふっふ」と笑いながら、後ろ手に持っていた物を取り出す。
「ジャジャーーーン!!」
いちごと言ったら練乳だよね。
「ふふふ、君たちこの『練乳様』を知っているかい?」
「何だ? それは!?」
「なになにぃ?」「なぁにぃ?」
「説明するより食べてごらん」
残ったいちごに練乳をたっぷりとかけて子供たちに渡す。
「「あまぁぁぁい」」
「美味いぞっ!」
「そんなに美味しいのですか? 私もその赤いのに白いのを掛けてください!」
「そのままでも美味しいので、まずは素材の味を感じてみてください」
セオドア王は僕に勧められたまま、そのまま食べてくれた。
「これはまた瑞々しくてとても甘いですね。とても美味しいですよ」
僕もそのままで少し食べてから、練乳をかける。セオドア王にもいちごを追加して練乳をかけてあげた。
「これはまた、別物になりましたね。『練乳様』をかけた物とそのままと、両方味わうのは大正解です」
「うん、美味しいですよね」
「あの、私も……」
流石に可哀そうになったので、乾燥牧草をバケツに入れたら交代してあげた。
「僕たちの後を追いかけてくれてありがとう。これも好きだと良いんだけど、食べてみて」
グイグイッ! グイグイッグイィ!!
「ちょっちょっ強いよ。待って待って、ダッシャー助けて」
「お主は何をやっておるのだ?」
ピキーーン!
馬たちが固まった気がする。なるほどこれが『惚れた』ってヤツね。
なんて呑気に考えてる場合じゃない。でも何はともあれ力を入れるのを止めてくれて助かった。ふぅ。
「これ、スーパーサンタで買った牧草なんだけど、グイグイ来ちゃって押されてたんだよ」
「なるほどな。これはかなりいい草だ。美味かったのであろう」
「え? そんなことも分かるの? 僕にはさっぱりだ」
「香りとこの茎の太さ、それから穂の形の良さだな」
「へぇ、美味しかったんなら良かったよ。ん? 君も草、食べるの?」
「我はそれよりも先ほどの赤いのに白いのが良いぞ」
スーパーサンタで買えばまだまだたくさん手に入るけど、食べすぎも良くない。
「お腹が冷えたらいけないから、今はこれでおしまいね」
「我にそんな心配は不要だぞ。相変わらず心配性だな」
「ダッシャーは良いかも知れないけど、子供たちも食べすぎは良くないし、そもそもお馬さん達の体にも良くないからね」
先ずはお腹いっぱいになって貰って、走れる元気が出ないと後のお楽しみに繋がらない。でも食べすぎも良くないし、体を冷やすのも心配だ。
そろそろ彼らの気配が近づいてくるのが分かる。僕の魔力感知に反応しているから近いと思うんだ。
「ねぇダッシャー。この気配って彼らだよね?」
「そうだな。商人ギルドの奴らと、いつもの小うるさいガサツな男も一緒だな」
「ひどい言われようだね。冒険者ギルドのルシアンさんね」
「それで分かるお主も中々だと思うぞ」
「………………」




