第四十五話 冷蔵庫は乾燥知らずでした~ランチは桃のレモンクリームスパ~
リリーとの通信手段の確保も出来たし、後はローヤルゼリーをバフェグラスに入れて冷蔵庫に準備しておこう。
「ダッシャー、この保冷庫は乾燥はどうなんだろ? 普通の冷蔵庫は食材が乾燥しない様にフタとかするんだよ」
「ベルとらんの複合魔法で、水霧結界が発動しているぞ。大丈夫ではないか?」
「そうなんだ。やっぱり君たちは凄いね」
ベルちゃんとらんちゃんにスリスリして、いい子いい子する。
リリーの可愛らしいパフェグラスに、せっせとローヤルゼリーを詰めて冷蔵庫へ入れる。乾燥は気にしなくて良いからギッシリと詰め込んだ。
ミニスプーンもグラスに入れて、一緒に入れておく。
「これだけあればしばらくは大丈夫かな? どう? リリー」
「えぇ、今までよりもとっても食べやすいし可愛いわ。数もこれだけ有れば今日一日は平気ね」
「え? 一日なの?」
「冗談よ。あたしそんなに大食いじゃないわ」
「ハハハ、リリーに一本取られたな」
「いっぽんいっぽん」「おおぐい? おおぐい」
「さて、リリーの方は一先ずは安心かな。次は水車問題を解決しに戻ろうか」
リリーに「またすぐ来るけど、何かあったら連絡を入れるんだよ」と言って、お花畑の純白のドアをくぐる。
ドアを開けた先は、王宮の僕たちの部屋だった。
「中央広場から飛び立ったから、そこに戻るのかと思ったよ」
「テオに用事があるのだろう? 今はこの中に居るぞ」
「セオドア王の気配を辿ったの? じゃあ出口は君の好きな所に繋げられるってこと?」
「我の作った仕組みだ。我の好きにならずにどうするのだ」
「ふぇ――。それは最高だね」
「それはそうと腹が減ったぞ」
「お腹空いたぁ」「空いたのぉ」
「そうだね。たくさん魔力使ったもんね。何が食べたい?」
「ミルクぅ」
「美味しいのぉ」
「そろそろ肉だな」
とりあえずはミルクってことね。
「ダッシャーもミルクで良いの?」
「我はコーヒーだ」
「はいはい、カフェオレね」
ダッシャーが大好きな温めの砂糖たっぷりカフェオレと、温めのミルクを用意する。
「水車も見に行きたいし、ご飯は簡単な物で良いかな?」
~【桃の冷製レモンクリームパスタ】~
■材料(2人分)
・パスタ(細めがおすすめ):160g
・桃の缶詰:小1缶(または大1/2缶)
◆レモンクリームソース
・桃缶のシロップ:大さじ2
・レモン汁:大さじ1
・生クリーム:100ml
・オリーブオイル:大さじ1
・塩:小さじ1/2
・ブラックペッパー:少々
◆トッピング
・生ハム:4〜6枚
・あればミントの葉、レモンの皮のすりおろし
作り方
■下準備
1.桃を1.5cmの角切りにする。
■作り方
2.大きめのボウルに、レモンクリームソースの材料を入れてよく混ぜ合わせ、切った桃を加えて、ボウルごと冷蔵庫で冷やしておく。
3.パスタを袋の表示時間より「1分長め」に茹でる。
※冷製パスタにするので、長めに茹でるのがポイント。
4.パスタを冷水で一気に冷やす。しっかり冷えたら、よく水気を切る。
5.②のボウルにパスタを加え、ソースと桃を素早く絡める。味見をして、足りなければ塩で味を調える。
6.お皿にこんもりと盛り付け、ブラックペッパーを一度振り、あればミントやレモンの皮を散らして完成。
「お待たせ。さあ食べようか」
「いただきます」を言う直前に、部屋のドアが開いた。
「アンセルさん、戻ってましたか。おや? 食事中でしたか」
セオドア王がシアンさんと一緒に現れた。
「そろそろ商人ギルドの水車を見に行く頃かと思いまして、訪ねてみました」
「食事を済ませたら行こうと思ってました」
「これは失礼。では、お待ちしていますね」
これは――。誘わない訳にいかないよね。
「お食事まだでしたら、ご一緒にいかがですか?」
「おぉ、これは申し訳ない。食べはしたが、ぜひ頂きたい」
「私もよろしいでしょうか?」
「まだたくさん用意はしてありますので、遠慮せずにどうぞ」
街の人たちにも配ろうと思って、多めに作っておいて正解だ。
「フルーラ王妃とお子さんたちはどうしてますか?」
「日課の『食後のお昼寝』中ですよ。私は商人ギルドに視察に行くと言ってありますので、大丈夫ですよ」
(大丈夫とはどう言うことだ?)
「では食事が終わったら街外れに行きましょうか」
桃の冷製パスタをセオドア王とシアンさんにもお出しする。
「桃の冷製パスタです。少し酸っぱいかもしれませんが、ダメでしたらお直ししますので言ってくださいね」
レモンが苦手な人は、レモン汁が少なめでも酸っぱくて食べられないらしい。そんな時は缶詰のシロップを追加して、良く混ぜると酸味が押さえられる。
ダメならその手で行こう。
「これは何ですか?」
「桃缶のパスタ……。あぁ、パスタが初めてですか?」
「この細い物が『パスタ』と言う物ですか?」
「僕の地元の食べ物で、もちもちした食感の、小麦で作った麺ですよ」
「ふぉっ! これは冷たくて甘くて酸っぱくて、美味しいですね」
「酸っぱいの、大丈夫みたいで良かったです」
「はむはむはむはむ」
シアンさんは無言で夢中で食べている。お口に合ったみたいで良かった。
「酸っぱいの」「ちょっとなの」
「我は平気だぞ」
三人してレモンはお気に召さなかったみたいだ。
シロップとミルクを追加して、桃缶もたっぷり乗せたらケーキみたいになってしまった。
「甘くておいしいの」「おいしいのぉ」
「うむ、初めからこれが良かったぞ」
三人して甘党ですね。
僕はそのまま「いただきます」。うん、ちょっと酸っぱい。
◇◇
食後のコーヒー(と甘めのカフェオレとミルク)を飲んで片付けをしたら、いよいよ水車問題の解決に出向く。
僕たちはダッシャーに乗って大通りを抜け、その後ろを馬に乗ってセオドア王とシアンさんが付いてくる。
馬のスピードに合わせ、いつもと思うとゆっくりで、周りの花壇や道端の花々を見やりながら進む。
しばらく駆けるとダッシャーがスピードを落とし、止まった。
前回来た時は少しも気付かなかった『商人ギルド』の建物が、薄っすらぼんやりと浮かんでいる。
ダッシャーが「ふぅ」と息を吐き、建物がハッキリと現れた。壁を覆いつくす花々とつるが、姿を隠しているのがもったいない位に、美しく咲き誇っていた。




