第四十四話 ベッドを5つ買いました~着信はお花でお知らせ~
リリーの豪華な家を一通り見渡して、足りない物に気が付いた。
「ねぇリリー、子供たちも『人型』で生まれてくるって言ったよね?」
「えぇ、その為に今は『ローヤルゼリー』をたくさん食べてるんだもの」
「だったらベビーベッドが欲しいよね?」
まだ開いたままの【トイ・サンタ】で、小さなベビーベッドを探す。
生まれてくるのはほとんどが女の子だろうけど、どっちでも良い様に布団はホワイトが良いかな?
ベッドは食器棚の『ロココ調のホワイト』に合わせて『ホワイト・アイアン』かな。
(ふふ、ヤバいぞこれ。楽しい)
「リリー、子供たちのベッドだけど、この『ホワイト・アイアン』で良いかな? 布団は『純白のシルク』はどう?」
「文句なんてあるはずが無いわ。とっても素敵よ」
ポチった5つのベッドが段ボールでドンと届く。
早速、リリーの寝室へと配置する。
「成長したら2階へ移って貰うとして、先ずはお世話がしやすい様にリリーのベッドの近くが良いよね?」
「良くわかってるわね。さすがはあるじ様だわ」
とりあえずこれで孵化を待つ準備は整った……かな?
1階のリビングを見渡して、フト思う。
「ねぇ、もしかするとこの【テレビ】って通信手段として使えるかな?」
「【テレビ】とは何だ?」
「あっちの世界でも通信手段としては使われてないけど、電波に乗せて音と映像が流れて来るんだよ。情報収集や娯楽だね」
「それをなぜ通信手段にしようと思うのだ?」
「リリーからの連絡って、ダッシャーが感じ取れば分かるって話しだったよね?」
「そうだな。だが今までそんな発信は無かったぞ?」
「そこだよ。リリーの性格から、よっぽどのことが無い限りは、助けを呼ばないと思うんだよね」
「それはそうかも知れぬな」
「でしょ? 僕としてはもう少し簡単に連絡が取れれば、離れていても安心かなぁって思ったんだよ」
「またお主の心配症が出たか」
(だって心配なんだもん)
「でもほら、ベルちゃんもらんちゃんも、リリーとおしゃべりしたいよね?」
「おしゃべりしたぁ~い」「するのぉ」
「ほら! ね!?」
「ホーホーホー、儂の出番かの?」
「そう言う事なら我に任せろ!」
「ダッシャー、儂に厳しいのぉ……。ホー?」
マナ・レクス様のホログラムが一瞬だけ【身分証】から現れて消えた。
「何をしに来たんだろう? マナ・レクス様」
身分証を【アイテムボックス】に戻そうとしたら、ダッシャーがジッと見てきた。
「今更これに興味があるの?」
「そのまま少し待っておれ」
ダッシャーの瞳に【金の身分証】の文様が浮かび上がる。
そのままリリーのテレビに向かうと、「ふぅ」っと優しく息を吹きかけた。
ダッシャーの鬣が静かに逆立つと、純白の光が放たれ、細い糸となりテレビに絡みつくと、金の身分証から読み取った魔法陣が書き込まれていく。
ダッシャーがその翼を大きく、一度だけ羽ばたかせる。雷光が走り、同時に激しい風が巻き起こる。その風は、勢いよくテレビの中に流れ込んでいった。
「よし、次は『らん』だ。風を起こせ。出来るか?」
らんちゃんが「きゅぃ!」と鳴くと、暖かな風がくるくるとダンスを踊り、ダッシャーの風の後を追ってテレビへと流れ込む。
「よし! いいぞ。次は『ベル』だ」
「チリリィィーン」体を震わせると、その体からキラキラと輝く水の粒子があふれ出す。「きゅぷっ」と跳ねると水の粒子は柔らかな水流となり、ダッシャーとらんちゃんの風の渦へと飛び込んだ。
風と水が交じり合い、その先はマナ・レクス様の『神輝石』へと繋がった。
「ベルも良くやったな。これで完成だ」
「保冷庫と思うと少し手間だったみたいだね」
「【身分証】の通信機能を変換させたからな。人が創ったものを触るのは、自分で作るよりも手間が掛かる」
完成した【テレビ型通信機】をリビングに戻した。
「試してみよ」
「えっと、リリー?」
アイテムボックスの中の『お花畑』に向かって話しかける。
アイテムボックスから零れ落ちる様に、色鮮やかな花たちがホログラムとなって「ふわっ」と飛び出し、シャボン玉の様に大きく膨らんではパッと消え、大きく膨らんではパッと消えた。
「これが着信音の変わりなのかな?」
「きゃあっ! なぁにこれっ!!」
リリーがリビングのテレビの前で、飛び出したホログラムの花に驚いている。
お花畑の上空にも、大輪の花が幾重にも咲き誇っては消え、咲き誇っては消えを繰り返していた。
忙しいリリーがずっとテレビの前に居なくても、着信に気付ける配慮だ。
「もしもし? リリー返事してみて」
「あるじ様?」
するとアイテムボックスの画面いっぱいに、リリーの姿が映った。
「まぁ、あるじ様? この小さな箱の中に入ってしまったんですの?」
リリーのテレビにも僕が映っているみたいだ。
「あはは、違うよ。こっちを見てごらん」
リリーがリビングから外を覗く。
まだ大輪の花が空にポンポンと現れているその前に顔を出す。
「あらあらまぁまぁ、どう言うことかしら?」
「それは外側は『テレビ』だけど、機能は『通信機』だよ。いつでもそこに向かって話し掛ければ、アイテムボックスを通じて僕に繋がるよ」
一度、通信を切る。
「やってごらん?」
「も、しもし、で良いのかしら?」
リリーのテレビの前に、ポンポンと色とりどりの花が広がっては消える。
僕のアイテムボックスが点滅し、キレイな花たちが現れ、ふわっと膨らんではポンッと消えた。
「もしもし、リリー?」
「キュキュゥイ」「おしゃべりするのぉ」
「なぁに? あるじ様。らんちゃん、べるちゃん」
これで準備は整った、後は卵から子供たちが生まれるのを待つだけだ。
『ベルちゃん』と『らんちゃん』が竜怖の卵から生まれた時と思うと、何だか安心して待てる。家族との絆が深まり、安心感になっているのかな?




