第四十三話 冷蔵庫が稼働しました~リリーのお家は夢の豪邸~
「何となくこの最初から揃ってた食器だと、雰囲気が違う気がするな」
リリーが『ローヤルゼリー』を食べるための食器が欲しい。
小さくて、持ちやすい、可愛いカップが良いな。
【トイ・サンタ】を開く。
今度は迷わずに「ミニチュア・ドールハウス」売り場へと進むと、ミニチュア食器コーナーがあった。
「あ、これ可愛い」
小さな『パフェグラス』が目に入った。
「リリー、これどうかな?」
「わぁ、可愛いわね。それにこれなら食べやすそうだわ」
「じゃあこれと『パフェスプーン』と、この『ケーキスタンド』はどう?」」
「たくさん載せられるから3段の方が良いけど、形はこの2段の方が可愛いわね」
「じゃあ2段のを2つにすれば良いよ。それとも3つにする?」
「でもまだあたしは食べられないし、何を載せるのかも分からないのだけれどね」
「それもそうか、じゃあ僕がみんなと一緒に食べられるような物を作るから、リリーが食べられる時が来たらホームパーティをしようよ」
「儂も呼んで欲しいのじゃあ! ホッホー!」
金の身分証が激しく点滅して、マナ・レクス様のホログラムが現れる。
「うわっ! ビックリした。どうしたんですか?」
「儂、『ちょっと遅いクリスマスプレゼント』したのじゃもん。じゃが、美味しい物が届かないのじゃ。ホー」
「あ、ですよね。すみません、ちょっとまだバタバタしてまして……」
「ホホん、あれは気に入ってくれたかの?」
「あの温冷の調律器とっても重宝しています。凄い性能ですよね。それにとってもキレイです」
「なら良かったのじゃ。気に入らぬのかと思うておったわ。ホホ―」
「とっても嬉しいです。あ、ホームパーティで何か食べたいものありますか?」
「シェルターが何とか言っておったのだ。我はそれが気になっておるぞ」
ダッシャーが自分の食べたいものを言ってきた。
「それはちゃんと覚えてるよ。シェル型だと『マドレーヌ』だね」
「儂はアンセルのばあちゃんが好きだと言った『あれ』が食べたいぞい。ホー」
「カステラですね。良いですよ」
「ホッホーイ、楽しみにしておるぞ」
言いたいことだけ言うと、マナ・レクス様は帰って行った。後ろでまた何やら騒がしい声が聞こえたから、怒られたのかも知れない。
「ママぁ、あたちも」「ミルクが良いの」
「ミルクか、僕はミルク寒が好きだよ。それで良い?」
「良いよぉ」「良いのぉ」
「じゃあリリーと同じようにパフェグラスに盛り付けようか?」
リリーのパフェグラスとスプーン、ケーキスタンドにケーキサーバーをポチる。
「僕たち用にもパフェグラスを買っておこうかな」
あのスーパーの百円ショップの食器売り場に、ガラスの食器が多く売られていたのを思い出して【スーパーサンタ】を開いて2階へ行く。
「どれが良い?」
ダッシャーに聞くと「たくさん入るヤツ」との答えだ。
「ですよねぇ、じゃこの可愛いヤツにしよう」
無視してデザイン重視でポチる。
次はこのミニチュアの冷蔵庫を使える様にしなきゃな。
「ベルちゃん、らんちゃん、お手伝いして貰っても良いかな?」
「「お手伝いするぅ」」
「じゃあまずはベルちゃんね。『清流の研磨』だったかな?」
「お主、それでは発動せぬぞ。ベル、『清流の研磨』!」
ベルちゃんの体から生まれた波は虹色に輝き、リリーの冷蔵庫を包み込むと静かに吸い込まれた。
リリーの冷蔵庫は断熱材で包まれ、それは保冷機能が抜群に良いことを意味した。
「この魔法、クーラーボックスに重宝しそうだな」
「何だそれは?」
「あっちの世界でキャンプとか外で使う保冷庫だよ。保冷機能が高いほど、値段も高いんだ」
「お主にも我にも不要だな」
「なるほど、確かに今の僕には不要だね」
改めて【アイテムボックス】をありがたいと思った。
「では我の魔力を流すぞ」
ダッシャーの鬣が逆立ち、雷光が天に向けて走り収束され、幾何学模様の魔道回路が繋がった。
キラキラ光る冷蔵庫の電源はマナ・レクス様の『神輝石』だ。
「てっきり『雷嵐の魔石』に電力を繋ぐと思ったよ」
「お主はやはりお花畑だな。そもそもこのお花畑はどこにあるのだ?」
「あっ! 【アイテムボックス】の中だ」
「仕上げだ、らん。『風の守護結界』」
らんちゃんが「きゅぃ!」と鳴いて冷蔵庫に風のカーテンを展開する。
扉はあるけど開けたときに冷気が外に出ない様にね。節電節電。
「よし! みんなありがとう。とりあえず今はこれで良いかな」
「ありがとう、あるじ様とみんな。それで、今は? なの?」
リリーが不思議そうに聞いてくる。
「うん、今はまだリリーはローヤルゼリーだけ食べるって決めてるみたいだけど、他の物も食べたくなったら――」
チラッとダッシャーを上目遣いで見る。
「何だ?」
「君に不可能は無い、よね?」
「無いな」
「だと思った。頼もしいよ」
「だが、嫌な予感はするぞ?」
「ふふふ、ちょっとこのリリーの冷蔵庫と、僕の【アイテムボックス】の中の冷蔵庫を繋げたら、便利だなって思っただけだよ。今はまだ『思った』だけ」
「まぁ、それ位は簡単だ。いつでも出来るぞ」
「ありがとう、やっぱり君は頼りになるね」
***
リリーの一軒家は1階がリビングとダイニングにキッチン、そこに2階へと繋がる螺旋階段と、美しい吹き抜けがある。
階段を使っても良いし、そのまま飛んでも行ける造りだ。
2階には、これから生まれてくる5人のブレーンたちの私室と、大理石の広々とした大浴場、語らいの場となるラウンジがあり、お茶を淹れる小さなキッチンも備えられている。
2階からさらに螺旋階段を上がった3階は、リリーのためのプライベートスイートルームだ。寝室にあるのは、僕とリリーのお気に入りの天蓋付きのベッド。寝室の奥の扉は、大理石の豪華な専用バスルームへと直結していた。
別の扉一枚を隔てた先には、ミニキッチンを備えた優雅な客間と、会議室までが完備されていた。




