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第四話 美少女に変化しちゃいました~従魔に食の保証をします~

「マナ・レクス様何やってくれちゃってるの。僕、使途様扱いだよ。もうずっと監視付きなのかな……」


 金色に輝く【身分証】につぶやく。


「ホーホーホー。ちと考えておらなんだ。悪かったの」


 身分証から小さなマナ・レクス様のホログラムが現れた。


「マナ・レクス様っ。どうして?」

「ホーホー。その【身分証】はの。儂との連絡に使えると言ったじゃろ?」

(これは便利なのか分かんない機能だな。文句丸聞こえだったし……)


「ホントですよ。監視の目付きの異世界生活なんて……。楽しくないです」

「ホーホー。お主だと分からねば良いだけじゃろ? ホレッ」


 ピカッと眩しい光に包まれた。


「……………」

「これでどうじゃ?」


(――何が?)


 手を見る。


(ん? 細いぞ)


 顔を触ってみる。

 輪郭が違うのが分かる。

 しかも髪が伸びてるっっっ!

 髪色も全然違って……。シルバーか?


「これっ何したんですか?」


 はっ声も違うっっ!!


「ホーホーホー。あの姿のままでは過ごしにくかろう。ちと姿を変えてやったぞい」

「っっ!!」

「見た目は女子(おなご)じゃが肉体は女子(おなご)にはしておらぬぞ。残念じゃったな。ホーホーホー」


 ――少し期待した僕はちょっと赤くなったのだった。


「自由に変化出来るのですか? それともずっとこのまま?」

「『ダッシャー』と『アンセル』の絆によりて共に願えば変化するぞよ」

「ダッシャーも変化するんですか?」

「ダッシャー、ユニコーンとなってみよ」


 ダッシャーの体がキラキラ輝いたと思ったら翼が体に格納され、額から螺旋状の角が生えた。


「ユニコーンはこの世界にも数頭は居る。ペガサスよりは目立たぬじゃろうて」

(僕ってよりは『ダッシャー』から身元がバレるってことか……)

「じゃが名が同じではすぐに見つかってしまうの。互いに名を付けるがよいぞ」


(名前ねぇ。ユニコーンのイメージか……)

「優雅のゆう、空翔けるしゅう、天空のくう……」

「食う?」

「え?」


 ピカッとダッシャーの体が光る。こりゃ『くう』で決まりだな。

 意味全く違いますけども……。


「私も貴女に名を授けましょう。『アン』でどうでしょうか?」

(『アンセル』の『アン』ね。適当な気もするけど……)

「女の子っぽいし覚えやすいし『あん』で問題ないよ」


 僕の体が少し光って『アン』の名が刻まれた。


「互いに名を付けたでの。これで絆が作られた。それは互いの加護となるからの」


(あれ? 今『くう』が「我」とか「お主」とか言ってなかったし、言葉遣いがやたら丁寧だった様な……?)


 『アン』のまま『くう』をのぞき込むと嬉しそうに顔を摺り寄せて来た。


(あ……。これヤバいヤツかも)

「ユニコーンは乙女が好きじゃでの。ホーホーホー」


 楽しそうに言われた。


(ま、まぁ確かに乙女ですけどもっっ)


 またしても赤くなる僕を尻目に2人共何やら楽しそうだ。


「コホン」


 ……何はともあれだ。


「マナ・レクス様ありがとうございました。これで気が楽になりました」

「そうかそうか。ホーホーホー。またの」


 ホログラムが消えた。

 今は街が用意してくれた宿に居るしこの街を出るまでは元の姿が良いだろう。とりあえず『ダッシャー』と『アンセル』に戻る。


「それでもこの街に長居しない方が良さそうだから最低限のことだけやったらさっさと出発しようか」


 ◇◇◇


 冒険者ギルドで受付に並ぶ。

 ダッシャーが狩って来た魔物の解体依頼だ。


「魔物の解体と買い取りをお願いしたいんですけど……」


 アイテムボックスのから魔物を取り出そうとしたら奥へ通された。

 中では数人が手際よく魔物の解体をしている。

 その中の一人がギルドマスターの『ルシアン』だと名乗った。


「お前さん達が使途様か? 街は「使途様が来た!」って偉い騒ぎだぞ」

(ですよねぇ~)


 どうやら『ダッシャー』もそうだが僕が見せた金の【身分証】がまた問題だった様だ。

 あれは見る人が見れば分かる創造神様直轄の者だけに与えられる物らしい……。


「はぁ、普通の冒険者として生きるにはどうすれば良いですかね?」


 姿は変えられても【身分証】があれ(キラキラ)ではすぐにバレてしまう。


「簡単だぞ。冒険者ギルドに登録して替わりの【身分証】を貰えば良い」

「え?」


 ルシアンさんの話しによると冒険者ギルドは国の管轄下になく世界、つまりは創造神様直轄の組織で、守秘義務により本名・出身地・スキル等、他所に漏らすことは無いとのことだ。

 ただ冒険者はその全てをギルドに偽りなく報告し登録はされるらしい。

 その方が隠し立てするよりも安全でむしろギルドが補償してくれることで動きやすくなるとのことだった。

 早速登録だ。


「入会金、銀貨5枚頂きます」

「え、お金持ってないです……」

「魔物の買い取り金で払えるだろ。後払いで良いぞ」

「ありがとうございます!」



「解体はこれで全部か?」


 最初に狩ったバイコーンハイオーク(ロックバード)に後から狩って来た何かデカい蛇が居る……。


ハイオークはともかくバイコーン(ロックバード)なんてどこに生息してるんだ?  このデカい蛇(スカイ・サーペント)なんか捕らえるのが難しくて希少なんだぞ。素材は高値で取引されるし肉も美味いらしい」


 僕には分からないけど珍しい魔物みたいだ。


「今すぐ捌くには数が多いな。今夜中に解体しておくから明日また来てくれ」

「少しで良いのでどれか先に捌いて貰えますか?」

「あぁ今日の晩飯用な。ハイオークが一番早いな。それで良いか?」

ハイオークも美味い。我はそれで良いぞ」

「ではそれでお願いします」


 さくさくっとハイオークが捌かれ肉が現れる。肉を受け取り、残りは明日朝と言うことで宿に帰る。


 ◇◇◇


 宿には小さいながらもキッチンが備えられ一通りの道具も揃っていた。


(アイテムボックスに残っている材料で出来るものは……。ハイオーク肉だしとんかつだな)



~【ハイオーク肉のとんかつ】~

■材料(2人分)

・ロース肉:厚さ2~3cmを2枚(200g)

・塩こしょう:少々

・薄力粉:大さじ3

・溶き卵:1個分

・パン粉:適量

・サラダ油:適量

■作り方

1.ロース肉は脂身と赤身の間に5ヶ所程、包丁の刃先で切り込みを入れる。

2.肉の両面に塩こしょうをふり、薄力粉を薄くまぶす。

3.溶き卵を両面に付けたらパン粉をまんべんなく付け軽く押さえる。

4.揚げ油を170℃に熱し、肉を静かに入れる。

5.触らずに2分ほど揚げたら裏返し、更に2〜3分揚げる。

6.こんがり色がついて肉に火が通ったらしっかり油切りをして取り出す。

7.切らずに網の上などに立てた状態で5分ほど休ませる。

8.包丁を上から押すようにして食べやすい大きさに切ったら盛り付けて完成。



 ザクザクザクザクザクッ

 器に千切りキャベツととんかつを盛り、とんかつソースとからしを添えたら完成だ。


「お待たせ。出来たよ。味噌カツも好きだけど先ずは定番のとんかつソースで食べてみてよ」


 ダッシャーにはとりあえず5枚、僕は1枚だ。

 炊飯器でご飯を炊いて一緒に出してやる。


(味噌汁も欲しいかな?)

「ダッシャー、何か汁物も欲しい?」

「アチアチ、はふはふ」


 夢中で食べてて聞こえないのか無視か。


(自分だけならインスタントで良いか)


 電気ケトルでお湯を沸かしてインスタントの味噌汁を作る。

 生みそよりも顆粒の味噌汁の方が好きなんだよね。


「では、いただきます」


 ソースとからしを付けてパクッ。


「美味いっ。オークって美味しいんだな」

「我がそう言ったであろう?」


 薄い桃色の上等な肉で脂身も真っ白で実にキレイだ。


「あの見た目からは想像できないよね」


 それにしても不思議だよな。ダッシャーが獲って来た四足獣の『豚』を『オーク』と言われてもピンと来なかった。

 ほらだって『オーク』ってあれだろ? 豚顔の二足歩行の牙があるヤツ。

 でも普段は二足歩行なのに死ぬと四足獣に姿が変わるらしい。


 そりゃ二足歩行の豚はちょっと躊躇するけど……。僕の願望が姿を変えさせ……る訳ないよね。


 ダッシャーによると進化の過程で二足歩行になったが死ぬと先祖返りするとか。

 やっぱり不思議だ。




 食事も終わり満腹になったのかダッシャーはペガサスのまま羽を畳んでころんと横になった。


 片付けをしながら声を掛ける。


「明日ギルドで肉を受け取ったらどこに行こう?」

「我はどこでも良いが肉が上手い魔物が多い森が良いな。せっかくお主の従魔になったんだ。美味い物を食わせてくれよ」


「ん? 僕の従魔になったって何?」

「名付けをしたであろう。我は神獣だが魔獣だからな。従魔契約を結べば我にはお主を守護する義務が生じる。だが逆にお主には我を養う義務が生じる」


「ん? 益々分からない……」

「まっ要するに我にはお主に食の要求をする権利が生ずると言うことだ。従魔の世話をするのは主の役目だからな」

(いや……。対等なんじゃないか? 僕も名付けられたし)


「我が契約せずともマナ・レクス様からの命がある故、お主を守るがな。まぁ創造神様の加護が付くお主によほどのことは無いと思うがな」


(さようでございますか……。騙された感が満載だが、ともかく1人でこの世界を生きるのはとてもじゃないが自信が無い)

「結果オーライだな。美味しい料理を期待してくれ」


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