第二十話 魔石コンロを買いました~お昼はコーンたっぷりクリームスパ~
『オールドローズ』の中庭を駆け抜けて部屋へと戻る。
子供たちに急いでご飯と飲み物をあげなくちゃ。
「何が食べたい? 飲み物は何が良いのかな?」
「「「ミルクぅ!」」」
三人揃ってお返事だ。良く出来ました。
じゃとりあえず手早く用意出来るミルクをたっぷりあげますか。
「ご飯は?」
「「食べるぅ(ぞ)」」
リクエストは無さそうだから手早く一度にたくさん作れるものにしよう。
「クリームスパで良い?」
「「「良いよ~(ぞ)」」」
(食べたことは無いと思うけど……。適当だな)
まずは食材の買い出しだ。【スーパーサンタ】を開く。
ブロッコリーと玉ねぎに、しめじとサラダ用のレタスときゅうり。
「あっ! 『甘々娘』売ってるよ。これは絶対に買いだ」
「甘々娘とはお主のことか?」
「違います! 甘~いとうもろこしだよ」
後は早ゆで3分スパゲティとオリーブオイルとエビをカゴに入れてポチる。
(昨日はトトさんにお鍋を借りたけど、長引きそうだし買っておいた方が良いかな)
【ホームサンタ】を開く。
一番大きな鍋を1つと、少し浅めのフライパンをコンロの数の10個と、それ用のフタをポチる。
ボールとお玉も欲しいけど、広場のお店を見てからにしよう。
フライパンはコッチの人たちでも違和感なく、すぐに使い始められる様に『鉄一体型のハードテンパー加工フライパン』にした。
持ち手が熱くなるけど、それは対策を考えて有るんだ。
フタも違和感があるとマズいから素材はステンレスにした。もしこれでもまた何か怪しまれたら『無視作戦』だ!
買い物はとりあえずこんなモンかな。では始めますか。
さっきバルナスさんのお店で買った、新型の魔石コンロをテーブルに置く。
「IHコンロみたいだな」
天板の縁から中心に向けて、円形の幾何学模様が書かれていて、中心は何も書かれていない。高さは20センチ位かな。
「このグルグルした模様は何?」
「魔法陣だ。魔石の魔力を吸い上げ、炎を制御する術式が組み込まれている」
「へぇ、魔石を電源にして魔法陣で制御するってことかな」
「道具が元々持つ力もあるが、魔石の質でその動きもかなり変わると聞くぞ」
「魔石ってここにハメこまれてるヤツかな? これはどんな質なの?」
「至って『並み』だな」
「まぁ何はともあれ、自分で使って見なきゃ分かんないね」
「お主、使い方が分かるのか?」
「分からないよ。でもダッシャーは分かるよね?」
「我に分からぬことは無い。だが、我は料理はせぬ……もごもご」
(こりゃ分かんないな)
本体側面に丸い『つまみ』がある。とりあえずカセットコンロと同じように『左』に回す。
動かない――。
腕組みをして眺めていると、料理長のトトさんが丁度通りかかった。
「トトさん! 先ほどはありがとうございました。すみませんがまた少しお時間良いですか?」
「これはアンセルさん。また何か聞きたいことでもありますか?」
「実はこれを買ったんです」
「おぉ、魔石コンロですか。バルナスに高く売りつけられなかったですか?」
「ハハハ、ソンナコトハナイノデダイジョウブデスヨ」
(実際、値段なんて僕は分かんないもんな)
「それならよろしいのですが。それで何です?」
「このコンロの使い方を教えてください」
「またあなたは不思議なお人だ。使い方も分からない物を買ったんですね」
(…………)
「簡単ですよ。魔石ははまっていますね。後はこの丸い『つまみ』を『右』に回すだけです。火力調節は回し具合で出来ますよ」
(なるほど、ホットプレートと一緒なんだ)
「分かりました。ありがとうございます」
早速使ってみよう。
カチッ! フワオゥ!!
天板の魔法陣の色が白から黄色に変わる。もう一つツマミを回してみる。
カチッ! フワワオオゥ!!
カチッ! ヒュンヒュンヒュンヒューーーー。
黄色からオレンジに、そして赤色になった。
(赤が強火ってことかな?)
新型は火力調整が楽に出来そうだけど、中古品はどうだろう。
そこはマルタさん達の方が分かってるからお任せすれば良いか。
「じゃパパッとパスタを作りますか」
~【エビとたっぷりコーンのクリームスパ】~
■材料(2人分)
・早ゆで3分スパゲティ:200g
・エビ:100g
・とうもろこし:1本
・玉ねぎ:1/4個
・オリーブオイル:大さじ1
・白ワイン:大さじ2
・生クリーム:200ml
・顆粒コンソメ:小さじ1
・塩・こしょう:少々
■下準備
1.エビは殻と背ワタを外し、洗って水分をしっかりふき取る。
2.とうもろこしは皮つきのまま600wのレンジで2分30秒加熱し、裏返して更に2分30秒加熱。皮を剥いたら包丁かスプーンで実を外す。
3.玉ねぎは薄切りにする。
4.スパゲティを袋の時間通りに茹でる。
※チンしたとうもろこしはまだ熱い内に外側の皮をめくり、内側の皮と一緒にひげ(絹糸)を掴んで一気に剥くとひげがキレイに取れますよ。
■作り方
1.フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、玉ねぎをしんなりするまで炒める。
2.エビを加え、軽く炒めたら白ワインを加えて一煮立ちさせてアルコールを飛ばす。
3.とうもろこしと生クリームとコンソメを加え、弱火で2分ほど煮込む。
4.茹で上がったパスタを加え、さっと和えたら塩こしょうで味を整えて完成。
「ベルちゃん、らんちゃん、ダッシャーお待たせ。出来たよ」
「「わぁ~い」」
「なぜ我の名が最後なのだ?」
「はい、あ~~ん」
無視して子供たちに食べさせる。横を見るとダッシャーがもの言いたげに立っている。
(そう言えば子供が三人なんだった……)
「くるくる、あ~~ん」「くるくる、あ~~ん」「くるくる、あ~~ん」「くるくる、あ~~ん」
(これもしゃぶしゃぶ並みに大変だぞ。一人で食べてくれないかな)
「「「あぁぁ~ん」」」
(ダメそうだ)
「はいはい、順番ね」
「くるくる、あ~~ん」「くるくる、あ~~ん」「くるくる、あ~~ん」「くるくる、あ~~ん」
――「「けぷ」」
(お腹いっぱいになったかな? 遅くなったけど皆さんに声を掛けて、僕も一緒に食べようかな)
――ドタバタドタバタ。
廊下から急ぎ足の足音がする。
「あぁ居た居た。やっぱりここだったよ。あれ、何だか良い匂いだね」
「マルタさん、どうされました? 子供たちにご飯を食べさせたら、皆さんを呼びに行こうと思っていたんですが」
「それは嬉しいね。楽しみにしているよ」
「そうじゃなくて、あの後で国王様が広場に来られてね」
「そうだった。セオドア王を探しに街に出たんだった」
「アンセルさんが魔石コンロを買い取ってくださったって話しをしたんだよ。そうしたら話しがしたいとおっしゃってね。探しに来たんだ」
「それはこちらから出向かないといけない案件ですね。急いで広場に戻ります」
「お主、まだ食べておらぬだろう」
「僕は良いんだよ。作ってるとお腹いっぱいになることもあるんだよ」
「我には分からぬ現象だな」
(王様を待たせる訳にはいかないからね)
王宮の中庭まで出ると、ダッシャーに背中にポイされた。
先に乗っていたベルちゃんとらんちゃんを抱える様に座ると、一気に空に駆けだした。
「ちょちょちょちょ、待て待て待てってぇぇぇ」
大きく羽ばたきながら、空を駆ける。
「急いでテオに会いたいのだろう?」
(意地悪なのか親切なのか分かんないよ……)
お陰で一瞬でセオドア王の元へと駆けつけることが出来た。ダッシャーは気配で居場所が分かる様だな。
「ねぇダッシャー、魔力感知でセオドア王の居場所が分かるの? なら僕でも分かるってことかな?」
「どうだろうな」
「後で試してみようかな」
「おぉ、アンセル。皆から魔石コンロを買い取ったと聞いた」
「ええ、そのことでセオドア王の許可が頂きたくて探していました」
「何をしようとしているのかは大体察しがつく」
「それならば話しは早いです。許可を頂けますか?」
「我が良いと言うのに、こやつはお前に聞くと言って聞かんのだ」
「ここは『ダッシャー』の国じゃないよね? 仁義は通さないとダメでしょ?」
「そういう物か……。神とて良いと言ったではないか」
コソコソと小声で会話をしていたつもりだけど、近くに居たセオドア王には聞こえていた様だ。
「神が、何を、良いと……? 神が?」
「あ、何でもないですよ。ダッシャー、おかしなこと言っちゃダメだよ」
「我は何も……、モゴモゴモゴ」
慌てて口を塞ぐ。
「そう言えば、最初に山が光った時も『神に頼んだ』と……。いやだってまさか……え? ブツブツ」
セオドア王が素に戻ってブツブツ言いだしちゃったよ。
「じ、実はですね! ここに特設の共同キッチンを作ろうと思いまして、その許可を頂きたいのです」
「い、いやいや、私が許可も何も、当然良いに決まってるじゃありませんか!」
……あ、やっぱり神様って信じちゃってますよね。
「ハハハッ! 相変わらずの天然っぷりだな。アンセル」
「あっ、ルシアンさん。笑わないで下さいよ」
「【神の身分証】がある時点で『使徒様』なんだよ」
コソッと言われた。




