↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
146/148

第百四十六話 マナ・レクスさまから叱って貰いました~トレント達は帰宅~

 突然ホログラムとして現れた創造神マナ・レクス様。商人ギルドは静けさに包まれ、レイノスの言い訳だけが部屋に響いていた。


「反省もせずに研究ばかりしておってからに! しかもその研究も独りよがりの物なのじゃろう?」

「そ、そそそ、そんなことはございません」


「儂に研究成果が何一つ、届いておらぬのが証拠じゃ!」

「…………はっ、そ、それは」

「言い訳は要らぬのじゃ! ルシアンよ。こやつらの処罰は決まったのかえ? ホー」


「ア、アンセル様がやらせたいことがあると……先ほど木型の加工と、水車の修理を無償でやる様に、と伝えたところです」


 滅多に怒らないのだろう。マナ・レクス様の怒りの波動に、ルシアンさんも少し緊張して見えた。


「ダッシャーの大切な友のこの国を衰退させ、みんなを苦しめただけでなく、僕の大切な家族をまた傷つけようとするなんて……。ルシアンさん、この2つでは全くこれっぽっちも気が済みませんっ!」


 僕は直接話しをしたくなくて、マナ・レクス様のホログラムと共にルシアンさんを見た。何より、ベルちゃんを彼の視界に入れたくなかった。


「合点承知だ。おい、聞いたな? 泣き言は許さんぞ。先ずはアンセル様が手配した『鉄樺魔梛(アイアン・バーチ)』で木型を急ぎ加工しろ」


 ルシアンさんが建物の中に避難していた部下たちに合図し、商人ギルドの連中を包囲した。



 マナ・レクス様は静かにトレント達へ語り掛けた。


「ホーホー、トレントたちよ、その忠義と怒りはしかと受け止めたぞよ。ありがとうの。じゃが、これ以上の怒りは、儂の可愛いアンセルの心を曇らせる。じゃからして、今は怒りを鎮め、家へと帰るのじゃ」


 マナ・レクス様の慈愛に満ちた声に、森の木々は「サワサワサワ……」と、今度はまるで子守唄に応えるかのように優しく、嬉しそうに葉を揺らした。


 建物を包囲していた巨大な足音がゆっくりと遠ざかり、豊かな森の奥へと戻っていく。窓からは、再び穏やかな日の光が差し込み、夜のようだった部屋を明るく照らし出した。



 すると、静かに様子を伺っていたセオドア王が、一歩前へ出た。


「創造神、マナ・レクス様、発言をお許しいただけますでしょうか」

「儂の部下が迷惑を掛けておるのぉ。発言を許すぞよ。ホー」


「我が国はこの数十年来、ドラゴン様の地下分水宮からの水量が極端に落ち込んでおりました。かつて豊かな実りを誇った農作物はことごとく不作が続き、民の暮らしは困窮し、王家ですら過酷な節制を強いられる日々が続いていたのです」

「その原因が水門の固着と、それによる水路の封鎖で、川からの水が地下分水宮に流れなくなったってことですよね」


 僕はセオドア王の怒りに追加の説明をする。



「創造神、マナ・レクス様、お初にお目に掛かります、ラルーギア国の内政業務を任されております、シアンと申します。――畏れ多くも、この場での発言をお許しいただけますでしょうか」


 続いてシアンさんが神妙な顔つきで進み出る。


「良いぞよ。ホッホ」


「そのことを私どもが知ったのも、アンセル殿やダッシャー殿が商人ギルドの隠ぺいを破ってくれたからでございます! 我らはそれすら知らずに、ドラゴン様の怒りとして全てを受け入れて居たのでございます」


「それは濡れ衣を着せられたグローからも、彼らに天罰が有っても良さそうですね」

「そうじゃの、アンセルよ。伝えておくぞよ。ホー」


 フェリスの山が噴火に見舞われ、住処をなくしたファイヤドラゴン・グローは、庇護下の魔物と共に、今はマナ・レクス様に保護され、安全なところへ避難している。


「ド、ドドドド、ドラゴン様もですか?」

「まだまだじゃ。この国が被った被害分は働いて貰うぞよ。ホー」


(それって、未来永劫タダ働きってことだよね?)


「アンセルよ、これが最初の罰と言ったの? ホッホ」

「えぇ、先ほどの行為で僕の怒りは増しましたからね。思いつく度に次々に続きます!」

「好きにするがえぇ、ホッ」


「ただ、これで正々堂々と表立って研究が出来ると思われると、少し厄介だとも思ってます」

「儂の目は欺けぬぞ。また同じ様に私利私欲にまみれ、他人の資産を私物化したり、興味のある研究ばかりする様なら、儂にも考えがあるのじゃ。ホホー」

「マナ・レクス様が見ていてくださるなら僕も安心です」


「ホー。ところで、のぉ。アンセルよ」

「例の件ですね? リリーがお話しした通り、今日の夕方を予定しています。場所はお花畑ですが、入って来られますか?」

「もちろんじゃ。楽しみにしておるでの。ホッホホーーン」


「セオドア王の愛馬、フィデロと、シアンさんのパドラスに、ルシアンさんのガルバも招待しようと思ってます」

「ホッホー、それは楽しみじゃの。ではまた後での」


 マナ・レクス様のホログラムはご機嫌に消えた。

 もしかしてこの話しがしたくて現れたのかな? まさかね――。



「アンセル様よ、ガルバとどこか行くのか?」

「ガルバってよりはフィデロとパドラスとの約束ですよ。ガルバだけ置いてくのは可哀そうだから、一緒に誘うつもりです」


「アンセル殿、昨日森で話しをしていたおやつタイムですかな?」

「あ、聞こえてました? 夕方から一晩フィデロ達をお借りしても良いですか?」

「えぇ、あいつらの大好きなダッシャーと一緒に、たまにはのんびりと遊ばせてやってください」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。