第百二十九話 ふわふわのパンケーキを焼きました~トッピングはたっぷりと~
「よし! 今日の朝ご飯はふわふわパンケーキにしよう!」
「それは何だ? ふわふわのパンなのか?」
ダッシャーが首をかしげて聞いて来る。
「パンなの」「ケーキなの」
「そうだね。どっちかって言うとケーキかな」
「ケーキか! 良いではないか。我は腹が減ったぞ」
15人の小さな娘たちには、ガレットが巣蜜を使った一皿を準備してくれている。
僕はブランたち5人のブレーンのため、そしてベルちゃんらんちゃんとダッシャーのために、本格的なパンケーキを焼くことにした。
◇◇
~【オーブン焼きパンケーキ】~
■材料(8~10cmのグラタン皿2個分)
◆卵黄ベース
・卵黄:1個
・牛乳:15ml(大さじ1)
・マヨネーズ: 小さじ1/2
・片栗粉:5g(小さじ1強)
・薄力粉:20g
・ベーキングパウダー:1〜2g(小さじ1/2)
◆メレンゲ用
・卵白:1個(使う直前まで冷凍庫で冷やす)
・レモン汁:小さじ1/2
・砂糖:15g(大さじ1.5)
◆トッピング
・ホイップクリーム: 好きなだけたっぷりと
・ハチミツ: お皿に溢れるくらいとろりと
・巣蜜: パンケーキの頂点に贅沢に1ブロック(約2cm角)
・バター: お好みで1かけ
・お好きなフルーツ:好きなだけ
■下準備
1.オーブンを170℃に予熱する。
2.グラタン皿の内側にバター(分量外)を塗る
3.卵を卵白と卵黄に分け、卵白は使うまで冷凍庫に入れておく。
■作り方
1.ボウルに卵黄・牛乳・マヨネーズを入れて混ぜ、薄力粉・片栗粉・ベーキングパウダーを合わせて振るい入れ、泡立て器でダマがなくなるまでしっかり混ぜる。
2.別のボウルに卵白・レモン汁を入れ、ハンドミキサーでコシを切るまで泡立てる。
※卵白の泡立てに使う道具は、全て油分や水分が無い物を使う(重要)
3.砂糖を3回に分けて加えながら、ハンドミキサーの高速で一気に泡立て、持ち上げたときにツノがピンと硬く立ち、ボウルをひっくり返してもビクともしない、ツヤのある固いメレンゲに仕上げる。
4.メレンゲの1/3を卵黄ベースに入れ、泡立て器でグルグルとしっかり馴染ませる。
5.残りの半分を入れ、ゴムベラで泡を潰さないよう優しくさっくり混ぜる。
6.残りのメレンゲをすべて入れ、ゴムベラで底からすくい上げるように混ぜる。
※白い筋がうっすら残っているくらいで大丈夫。
7.グラタン皿の7~8分目まで生地を入れる。
※生地が余る様ならココット等に分ける。多すぎると溢れます。
8.170℃のオーブンで約25分じっくり焼き上げる。
9.表面がきつね色になり、中央に竹串を刺して何もついてこなければ焼き上がり。
◇◇
卵黄に牛乳とマヨネーズを入れて、泡だて器でグルグル混ぜたら、粉類を混ぜながら振るい入れて、更にグルグル。
冷やしておいた卵白にレモン汁を入れたらハンドミキサーで少し泡立てて、砂糖を3回に分けて入れたらしっかりとメレンゲを作る。
「これはサラダなのか? マヨネーズが入ったな」
「どっちかって言うとデザートに近いかな? マヨネーズを入れると乳化作用でしっとりふんわり膨らむんだよ」
メレンゲの1/3を卵黄のボウルに入れて、グルグル。
「少しだけ混ぜるのには理由があるのでしょうか? それにしてもあるじ様のキッチンワークは、いつ見ても美しいですね」
ハニーゴールドのシャツを腕まくりしたガレット・ブールが、2つのボウルを手際よく混ぜ合わせる様子を、職人らしいリスペクトの眼差しで見つめている。
「これは2つのボウルの中身の固さを揃えているんだよ。その方が混ざりやすくなるんだ」
「なるほど、一つ一つに大切な理由があるのですね」
残りのメレンゲを加えてサックリと混ぜ合わせたら、バターをたっぷり塗ったグラタン皿に流し込む。
「このバター、器にくっつかないようにするだけじゃなくて、塩気が甘さを引き立てて美味しくなるんだよ」
「ほぉ、バターだけでも美味そうだな」
「ダメだよ、ダッシャー。もう少しだけ待ってね」
ダッシャーの作ってくれた「火山岩のオーブン天板」にグラタン皿を並べ、【魔導一体オーブン】入れる。オーブンの密閉された空間の中で、器の中の生地が極限までふんわりと押し上げられていく。オーブンのガラス窓の向こうで、生地が型からはみ出るほど高く、まっすぐに膨らんでいく様子は圧巻の一言だ。
「ほほぉ、やはり我の魔導オーブンは素晴らしいな」
「たまには僕の腕も褒めて欲しいんだけどね」
「あるじ様、凄いです! もこもこと膨らんでいます。なぜなのでしょう?」
ガレットがパタパタと飛んできて、オーブンの中を覗き込んだ。
「凄いよね。メレンゲにたっぷり含ませた空気が、熱されて風船みたいに膨らんでいるんだ。おまけにさっきのバターの塩気が、この甘い香りをさらに引き立ててくれるはずだよ」
「美味しそうなの」「食べるの」
「まだもう少し待ってね。これは焼き上がったらすぐに食べないとしぼんじゃうから、先にトッピングを用意するよ」
大皿にこんもりと盛られたのは、驚くほどきめ細かく泡立てられた純白のホイップクリームだ。その傍らには、瑞々しいいちごやブルーベリー、おばあちゃんのはちみつが、今か今かと出番を待っている。
やがて、タイマーが心地よい音を響かせる。
――チーーン。
「あるじ様、焼き上がりました!」
ガナッシュ・チェリーがオーブンの扉を開けようと小さな躰で頑張っている。
「みんな! 席に座って、ナイフとフォークを用意してね」
「お腹空いたの……!」
「空いたの……」
ダッシャーの背中から飛び降りたベルちゃんとらんちゃんが、潤んだ瞳で見つめて来る。そのすぐ後ろでは、ダッシャーが「まだか、まだか」と大きな羽をソワソワと羽ばたかせて待っている。
(ダッシャーはともかく、この子達の目力には負けちゃうんだよなぁ)
「焼き上がったからすぐすぐね。でも熱々だから少し冷まさないと食べられないからね」
「お手伝いします!」
ガナッシュと力を合わせてオーブンの扉を開く。
扉を開けた瞬間、卵とバターの甘く香ばしい香りが爆発するように広がった。
「わあぁぁっ! すごいですっ!」
待ちきれないとばかりに、ガナッシュがオーブンの周りをパタパタと飛び回った。




