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第百二十六話 ガナッシュはとっても勉強熱心~白こっぺパンの焼き上げ~

「さぁ、いよいよ大詰めだよ。白いコッペパンを作るから、よく見ててね」

「はい!」


 ガナッシュは元気よく羽をパタパタと震わせた。



~【白いコッペパン】~

■材料(普通サイズ6個分)

・強力粉:200g

・練乳:15g

・砂糖:10g

・ドライイースト:3g

・水:130ml

・スキムミルク:15g

・塩:2g

・バター:20g

・焼く前に振る強力粉:少々

■下準備

1.バターを室温に戻しておく。

2.二次発酵の後半でオーブンを160℃に余熱する。

■パンニーダーでの作り方

1.バター以外の材料をポットに入れ、5分間ニーディングする。

※最初は粉が舞うので低速で、まとまって来たら中速~高速にする。

2.ポットにフタをして10分間、寝かせる。

3.20分間ニーディングする。

  5分ほどして生地がまとまってきたら、バターを入れる。

4.40℃で30分間発酵させる。

5.ガス抜きのため中速で20秒間ニーディングする。

6.生地を取り出し、6個に分割にする。

7.表面を張らせるように丸め、ラップをかぶせ、10分間生地を休ませる。

8.とじ目を下に麺棒や手のひらの付け根で12cmほどに伸ばす。

9.生地の上下を中心で少し重なるように内側に折り、さらに半分に折ってとじ目をしっかり閉じる。

10.軽く転がして形をととのえたら、とじ目を下にして型に入れる。

※形がいびつだと二次発酵中に転がるので型に軽く押さえつけて入れる。

11.40℃で約30~40分、生地がひとまわり大きくなるまで二次発酵する。

12.強力粉を茶こしで振りかける。

13.160℃に余熱したオーブンを150℃に下げて16分焼く。

※8分ほどで焼き色が付きだしたらアルミホイルを被せる。

14.焼き上がったら網の上で冷ます。


 ◇◇


 一次発酵を終えた生地を小ぶりに成形すると、小さ目こっぺの焼き型へと嵌める。

 それを特製の「火山岩のオーブン天板」へと並べたらオーブンに入れて二次発酵だ。


 この【魔導一体(グランド)オーブン】にはちゃんと発酵機能も付いていて、僕が欲しい物を全て分かってくれるダッシャーはやっぱり凄いと思う。


 オーブンのその性能もそうだが、火山岩から切り出した天板の存在は無視できない。相乗効果で更に熱のあたりを柔らかく、均一に伝える最高の品だ。これなら低温でじっくりと、極上の柔らかさを保ったまま綺麗な「白生こっぺパン」が焼き上がる。


 ダッシャーがベルちゃんとらんちゃんを抱える様にカウチソファに寝ころびながら、「ふふん!」と誇らしげに鼻先を上げるのを横目で見送り、僕はオーブンのスイッチを入れた。


「二次発酵の間は何をするのですか?」


 とうに真夜中を過ぎた時間の中で、ガナッシュが疲れた様子も見せずにオーブンの周りをパタパタと飛びながら、キラキラとした瞳をして聞いて来る。


「中に入れる物の用意をするんだよ」


 白コッペに合わせるのは、みんなが大好きな王道の「あんバター」だ。

 あんことペアになるのは、特製の「ふわふわホイップバター」。


 まずは冷蔵庫から出した有塩バターを耐熱ボウルに入れてレンジへポイ。

 オーブンレンジは今はガナッシュのお手伝いの為にアイテムボックスから取り出して、テーブルの上に置いてある。中の様子を見ながら溶かしたいから丁度良い。


「600Wだと時間の加減が難しくて溶かしちゃうから、ここは『解凍モード』で……20秒」

「アンセル様、僕がボタンを押すお手伝いをします」


 ガナッシュのお手伝いをしてくれていたらんちゃんは、すっかりスヤスヤ夢の中だ。

 僕の指の上にガナッシュは両手を乗せて「せぇの!」

 ピッ、とボタンを押す。


 一度取り出して指で押してみると、まだ少し固い。さらに10秒追加。角がほんのり丸くなり、指が「すっ」と無理なく入る粘土のような固さになったところで即ストップだ。ここで完全に溶かして液体にしてしまうと、二度とふわふわにはならない。緊張する繊細な作業だ。


 柔らかくなったバターをゴムベラでボウルの肌にギュッギュッと擦り付けるように練り上げていく。塊が消えてツヤのあるマヨネーズ状になったら、一気にギアシフトだ。


「ここから空気を入れていくよ……せいやっ!」


 ゴムベラでバターを下から大きくすくい上げ、ボウルに叩きつけるようにリズミカルに激しく混ぜる。

 2分もすると、黄色かったバターが空気を含んで、まるでしぼりたての生クリームのように真っ白く、ふんわりとした質感に変化した。


「ガナッシュ、ここにこの『コーヒーフレッシュ』を入れるんだ」

「コーヒーフレッシュ……? 先ほどアンセル様が飲んでいらした『コーヒー』に入っていたのですか?」

「僕は普段はブラックか、ミルクを入れたカフェオレだから使わないよ。でも、少しだけクリームが欲しい時とか、コーヒーだけじゃなくて色々と使えるから便利なんだよ」


「一気に入れると分離しちゃうから、3回に分けて慎重に……」


 小さじ半分ほどを入れてはゴムベラで完全に馴染ませ、また少し入れては混ぜる。コーヒーフレッシュを加えることで、生クリームよりも手軽に、軽くてさっぱりとした口溶けのホイップバターになるんだ。仕上げにもう一度大きく空気を含ませるようにホイップすれば、極上のふわふわホイップバターの完成!


 使い捨ての絞り袋に、星型の口金をセットしてバターを詰める。手の熱でバターが溶けないよう、袋の結び目あたりを優しく扱う。


 ――チーン。


 静かな電子音が響く。


 二次発酵が終わったパン生地は型いっぱいに膨らんで丸々として可愛い。一旦取り出したら茶越しを使い、丸々とした愛らしい生地の表面に、強力粉を粉雪のように薄く、均一に振るい落としていった。


「こうして粉のバリアを張るんだ。ガナッシュ、ここからが一番大事だよ。白パンは焼き色をつけちゃいけないから、オーブンは160℃に予熱して焼く時に150℃に下げたら、15分~16分、優しく火を通すんだ。もし途中で色がつきそうなら、アルミホイルを上に被せて熱を遮るのもポイントだよ」

「なるほど……! 高温で一気に焼き上げるのではなく、低い温度で水分を閉じ込めるのですね。一つずつに違うコツがあり、覚えることが一杯でとても楽しいです。アンセル様」


 ダッシャーの切り出してくれた特製オーブンへ、優しく生地を滑り込ませる。


 数分後、甘く優しいパンの香りがガゼボのキッチンに漂い始め、狙い通り赤ちゃんの肌のように真っ白で、触れれば指が沈み込むほどモチモチの生コッペパンが焼き上がった――。


「見事な白さです、アンセル様……! まるでブランの羽のようですね」

「うん、大成功。じゃあ取り出すよ」


「普通のパンやケーキは、焼き上がりに台にドンと打ち付けて熱い空気を抜くんだけど、この白コッペパンは繊細だからショックは与えないんだ。優しく網の上に移して、ゆっくり冷ますのがモチモチの秘訣だよ」

「なるほど……。どこまでも優しく扱うのですね。勉強になります、アンセル様」



 どこまでも勉強熱心なガナッシュの、そのルビーレッドの髪を指先で優しく撫でた。


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