第百二十話 15人の赤ちゃんを寮のベッドに寝かせました~今夜は徹夜の予感~
生まれたばかりの赤ちゃんたちは、まだ手のひらにすっぽり収まるサイズだったが、すでにそれぞれのチームカラーの強い個性を発揮していた。
~ ガトー・ブランの側近~
パールホワイトの光をまとった子供たちは、生まれた瞬間からどこかお行儀が良かった。おくるみに包まれながら、小さな手を胸の前で可愛く合わせ、ガトーを見上げて「きゅ……」と小さく、規律正しく挨拶をするように鳴いた。
ガトーは「よく生まれました。我らの一群を統括する知性を磨きましょう」と嬉しそうに彼らを抱き上げた。
~ガレット・ブールの側近~
ハニーゴールドの光をまとった子供たちは、とても温厚で人懐っこかった。僕の手からローヤルゼリーを貰うと、嬉しそうにふにゃりと頬を緩め、引き渡されたガレットの指を小さな手でギュッと力強く握りしめた。
ガレットは「いい力だ。これから一緒に最高の大地を作ろうな」と目尻を下げた。
~グラッセ・ミュールの側近~
深紫色の光を放ちながら生まれた子供たちは、驚くほど寡黙でミステリアスだった。めったに鳴き声をあげず、おくるみの隙間からじっと大人の色気を漂わせるグラッセを見つめ、影のように寄り添おうとする。
グラッセは「ふふ、賢そうな子たち。すべてを見通す叡智を教えてあげるわね」と優しく微笑んだ。
~グラニテ・シトロンの側近~
クリスタルブルーの光を放つ子供たちは、生まれた瞬間から凛としていた。おくるみの中で小さな胸を張り、防衛指揮官であるグラニテを見上げて忠誠を誓うようにキリッとした目を向ける。
グラニテは「べ、別に可愛いなんて思ってないんだから! でも、私の軍勢に加わるなら厳しく育てるからね!」と顔を真っ赤にしながらも、愛おしそうに3人を優しく抱きしめていた。
~ガナッシュ・チェリーの側近~
瑞々しいルビーレッドの光から弾けるように生まれた子供たちは、とにかく元気いっぱいで賑やかだった! おくるみの中で小さな羽をパタパタと激しく動かし、「あうー!」「きゅー!」とお茶目に声をあげる。ガナッシュの周りをさっそく飛び回ろうとする姿はムードメーカーそのもの。
ガナッシュは「わあ、みんな元気いっぱい! アンセル様、僕、この子たちにたくさんお菓子のお勉強を教えます!」と大はしゃぎしていた。
それぞれのブレーンに3人ずつ預けられた15人の側近たちは、お兄ちゃんたちに抱っこされながら、とっても幸せそうに目を細めている。
◇◇
今夜もリリーは産卵という大役を控えている。5人のブレーンはそれぞれ各寮の3階にある側近フロアへ泊まり込み、初めての「子育て」をしながら夜を明かすことになる。
ーホワイト寮ー
3階の洗練された会議室の奥にある自室。僕が用意した純白のシーツのベッドに、ガトーは3人の娘をそっと、綺麗に並べて寝かせた。おくるみのシワを丁寧に伸ばしながら、ガトーはいつものポーカーフェイスの裏で、愛おしそうに静かに微笑む。
「素晴らしい、実に行儀の良い寝顔です。我らの一群を統括する知性として、明日から完璧に教育いたしましょう」
3人の赤ちゃんたちは、ガトーの純白の燕尾服の袖をちいさな手でギュッと握りしめたまま、すやすやと眠りについていた。
ーゴールド寮ー
ハーブの香りが漂うカントリー調の3階ロフト。ガレットはヘッドボードに愛らしいバラの細工が施されたベッドに3人を寝かせると、職人らしい大きな手で、子供たちの小さな胸元を優しくトントンと叩いていた。
「よしよし、よく飲んでよく寝る子は働き者になるぞ」
ガレットが温厚に笑いかけると、赤ちゃんたちは夢の中でふにゃりと幸せそうに頬を緩める。ガレットは今夜、ベッドのすぐ横に椅子を置き、夜通し3人の寝顔を見守るつもりのようだ。
ーパープル寮ー
薄暗いランプが艶やかに灯る、遮光されたミステリアスな隠れ家カフェフロア。グラッセはベッドに3人を寝かせると、長い指先で子供たちの額を優しく撫でた。
「ふふ、静かな夜ね。誰にも見つからないように、あなたたちには世界を覗く特等席を教えてあげる……」
グラッセのロングコートの裾に包まれるようにして、3人の赤ちゃんたちは物音ひとつ立てず、まるで影に溶け込むように深く、静かに眠りへと落ちていった。
ーブルー寮ー
お花畑の防衛マップが広がる、凛とした城塞のような3階作戦会議室。グラニテはベッドを前に、腕を組んでキリッと立ち尽くしていた。「いいかい? 君たちは明日から私の軍勢の指揮官になるんだからね! 寝相を乱すなんて許さないんだから!」。ツンとそっぽを向きながら厳しい規律を説くグラニテだったが、赤ちゃんの一人が「きゅぅ……」と寂しそうに声をあげた瞬間、顔を真っ赤にして大慌て。
「あわわっ、泣かないで! べ、別に心配してるわけじゃないけど……ほら、私の羽、あったかいでしょっ!」
グラニテは水色のナポレオンジャケットの襟元に慌てて3人をギュッと抱き寄せ、優しくあやしていた。
ーレッド寮ー
おもちゃ箱のようにポップで愛らしい3階のスイーツカフェ。ガナッシュは可愛いベッドの周りを、パタパタと忙しなく飛び回っていた。「わぁ! アンセル様、このベッドふかふかです! みんな、ここで寝るんだよ!」。3人の赤ちゃんたちもガナッシュに似てとにかく元気いっぱいで、おくるみの中から小さな手を伸ばして「あうー!」「きゅー!」とお茶目に声をあげる。
「明日になったら、アンセル様に教えてもらったハートのデコレーション、みんなで一緒に練習しようね!」
ガナッシュは早くもお兄ちゃん全開で、子供たちと一緒に賑やかに大はしゃぎしていた。
◇◇
15人の子供たちをそれぞれの寮へと送り届け、夜の静寂がお花畑を優しく包み込んだ頃、クイーン・リリーはいよいよ大役の時を迎えていた。
産卵の舞台となるのは、聖樹の室の大きな巣だ。
「あるじ様、これからあたしは、群れの未来を担う子供たちを産み落とすために室へ入るわ。特別なローヤルゼリーをたっぷり食べたから、今夜産む子たちもきっと素晴らしい子になるわね」
「うん。リリー、無理だけはしないでね。何かあったら大きな声を出すんだよ?」
僕が優しく微笑むと、リリーは覚悟に満ちた美しい瞳で頷き、ふわりと光の粒子を纏いながら聖樹の室の奥へと消えていった。
リリーが聖樹の室で聖なる大仕事に励む間、僕はガゼボの調理用テーブルの前に立ち、明日マナ・レクス様と約束しているお誕生会用のスイーツ作りに取りかかることにした。
「よし! まずはマナ・レクス様と約束したカステラだ」




