第十二話 アイテムボックスは無限です~マナ・レクス様が食べたいもの~
王宮に戻ると話もそこそこに、部屋を用意して貰った。
僕のスキルを人に見せる訳にはいかないから、一部屋を借りて中に籠った。
(鶴の恩返しだな……)
さて、時間もないし避難食の支度をしますか。
【スーパーサンタ】を開いて何を作るか考える。
「腹が減ったぞ」
(そりゃ、これだけの魔法を使えばそうだよね)
くうの張った結界が、青白くキラキラと輝く空を見て思う。
時折、何かがはじけ飛んで、虹色に飛び散るのが見て取れた。
「避難食の用意もしないといけないし、簡単な物で良い?」
「ぬ、仕方がない。手を打ってやるから早くしてくれ」
渋々了承を貰い【スーパーサンタ】を開く。
一緒に避難食用の材料も買うか。
お昼ご飯用は、前に揚げてアイテムボックスに保存しておいた『オーク肉のカツ』を使ってカツサンドだ。
6枚切りの食パンを2袋と、とんかつソースを買う。
避難食は……。不安な時は温かい食べ物が良いな。
「よし! まずはポトフにしよう」
水分と塩分、栄養分を同時に摂取できるから、力がつくだろう。
水煮野菜(カレーの具)を60袋っと。そりゃ売り切れか。
じゃ、肉じゃがの具も買おう。
ウインナーを15束と、肉は魔物肉で良いな。
キャベツを5玉と玉ねぎを10個。
(玉ねぎ剥くの苦手なんだよな)
後は、顆粒のコンソメっと。
大量購入だから今回は[段ボール]で購入をポチる。
ドサッと荷物が飛び出した。
「先ずはダッシャーのカツサンドを作るからね」
~【カツサンド】~
■材料(2人分)
・食パン(6枚切り):4枚
・豚カツ:2枚
・バター:大さじ2〜3
・和がらし:適量(お好みでバターに混ぜる)
◆特製ひと手間ソース
☆とんかつソース:70ml
☆ケチャップ:大さじ2
☆白すりごま:大さじ2
☆蜂蜜:小さじ1
☆醤油:小さじ1/3
■作り方
1.☆を耐熱容器に入れ、600wのレンジで20〜30秒加熱して混ぜる。
2.バターとからしは混ぜておく。
3.食パンを、表面がうっすらきつね色になる程度にトースターで軽く焼く。
4.パンの片面にからしバターを隅までしっかり塗る。
5.①の特製ソースに、カツの全面(側面も含む)をさっと潜らせる。
6.カツをパンで挟みラップでピッチリ、少し力を入れて巻く。
7.重石をして5分経ったらラップの上からカットする。
※包丁をお湯で温めて水気を拭いてから切るとキレイに切れますよ。
「ダッシャー、お待たせ。カツサンドが出来たよ」
「待ちかねたぞ。いただきます! だ」
「はい、召し上がれ」
僕も片手で食べながら、段ボールで届いた食材を出していく。
だけど、料理をするにしてもオーブンも鍋もご家庭用なんだよね。
そもそもコンロがカセットコンロの2個使いなんだよ。
「何人分位必要なんだろ?」
「少しはテオの奴が用意するだろうが、百人分は軽く欲しいだろうな」
あっという間に食べ終わったダッシャーが、答えてくれた。
大人数を賄うにはやっぱり心もとないな。ダメ元でセオドア王に聞いてみるか。
暇そうにしているダッシャーと一緒に、セオドア王のところへ出向く。
「この街で、大型のコンロを売っているお店はありますか? 炭か、出来れば魔石が使えると助かるんですが」
「この国は、『ゆりかごの山フェリス』から流れ出る鉱石の種類が多岐に及んでいるので、魔石を使った魔道具の製作は発展していますよ」
「それは心強いです。それはすぐに手に入りますか?」
「今すぐにですか? 大型となると中々に難しいですね」
(怪しい雰囲気だぞ)
「街で売られている物は、庶民が使う、いわゆる家庭用の「魔石コンロ」がほとんどで、大型の手の込んだ「魔導コンロ」は受注生産なんですよ」
「今すぐ欲しいなんて、思いつきで買える様な代物ではないってことですか……」
「そうですね。「魔導コンロ」は、作るのに時間も掛かりますし、当然お金も掛かりますからね」
家庭用の魔石コンロなら、カセットコンロと変わらないもんな。でもカセットコンロはガスがすぐ無くなっちゃうんだよな。
魔石コンロなら、魔物から取れる石を使えば良いってことかな? 魔石なら、ダッシャーが狩って来た魔物から出たのがたくさんあるけど、使えるのかな?
部屋に戻ってアイテムボックスの【家電】を眺めて、どうやったら上手く使いまわせるか考えていると【金の身分証】から創造神『マナ・レクス』様の声が聞こえた。
「ホーホーホー。お主はまだ、アイテムボックスを熟知しておらぬようじゃの」
ホログラムでマナ・レクス様が浮かび上がる。
(アイテムボックスの原理の話しをしてるのかな?)
「僕に与えてくださったのが創造神様だから、何があっても不思議じゃないとは思ってますよ?」
「ホーホー」
「ただ、電源をどこから取っているのか? 特にホットプレートや炊飯器が、外に出して使えた時には驚きましたが、そんなモンかと納得しちゃいました」
「魔石コンロも魔道コンロも、家電と原理は同じですよ」
いつの間にか、くうに姿が変わっている。僕もアンになってるけど、真剣に考えすぎてて気づかなかったよ。
これが「慣れ」としたら恐ろしい。
(どう言うことだ?)
「【オーブン】や【冷蔵庫】はアイテムボックスの中にあるのでしょう?」
「じゃ、もう少しヒントじゃ。儂の与えたアイテムボックスじゃ。限度があると思うかの?」
「あっ! もしかして、アイテムボックスの中にあれば、家電にも広さの概念が無いってことですか?」
「ホーホーホー。そう言うことじゃ。便利じゃろ?」
「便利なんてモンじゃないですよ! 広さに限界の無い家電なんて、どんな魔導コンロよりも使えるじゃないですかっ」
「やっと分かったかの。ホーホー」
「電力は魔石ですか?」
「ただの魔石ではないぞよ。儂のパワーが詰まっておる『神輝石』じゃからの」
「『神輝石』とは何ですか?」
「魔力切れの心配など要らぬと言うことじゃ。ホーホーホー」
益々便利でどう表現して良いか分からない。でもフト気付いてしまった。
「マナ・レクス様はもしかして、この災害を予測していたってことですか? 僕が食事の手助けをすると?」
「…………そ、そう言うことじゃ」
何か間があったし、遠くを見ながらの返事に疑いながらも、今は突っ込んでる場合じゃないな。
「分かりました。ありがとうございます。早速ご飯の仕度に取り掛かります」
「頑張っての。また儂のところにも遊びに来るのを待っておるぞ」
(あ、そりゃここまで用意周到準備してくれて、何もなしで追い返されたら切ないよね)
「ここが落ち着いたら、また天界にもお邪魔させて頂きますね。『神授の森』が天界への門ですか?」
「儂が思えばいつでも呼び寄せられるが、その方がお主の都合で来られるじゃろ。それで良いぞ。ホーホー」
「では数日前に連絡しますので、食べたい物があったら遠慮なく言ってください」
一応、社交辞令的に言ってみた。
嬉しそうにニコニコしながら、思わぬ返事が来た。
「ホホ―! 先ずはチーズトーストを食したいぞよ」
そんな最初の頃に作った物を、ずっと食べたいと思ってたんだ。
可愛くてつい笑ってしまう。
「それなら今すぐにでも作れますよ。でも今僕はここを離れられないし、マナ・レクス様も顕現出来ないですよね?」
ピカッと眩い光に包まれて、マナ・レクス様が現れた。
(あらら、来ちゃった……)
急いで【スーパーサンタ】で食パンと溶けるスライスチーズと卵を買う。
「[チーズトースト]と[エッグトースト]と[ピザトースト]を1枚ずつで良いですか?」
「ホーホーホー♪ 充分じゃぞ」
「私は2枚ずつは欲しいところですね」
「くうは今カツサンドを食べたばっかじゃないの?」
「あれはあれ、これはこれですね。便利な言葉です」
(はいはい、分かりました)
全部で9枚か。早速、アイテムボックスのスペース無限を試してみるか。
せっせっせっせっとトーストの用意をして、アイテムボックスから【オーブントースター】を選ぶ。
――次々にトーストが吸い込まれてタイマーが回っている。
(外に出したら2枚しか入らないのに、ホントに広さの概念が無いんだな)
驚きながら飲み物の用意をする。
「冷蔵庫にミルクとオレンジジュースしか無いですが、リクエストはありますか? コーヒーと紅茶は出来ますよ」
「私はコーヒーにミルクを入れた、甘い『アレ』でお願いします」
「カフェ・オレね」
「儂もそれを飲んでみるかの」
自分の分のカフェオレも一緒に準備していると、ポンッと[チーズトースト]が飛び出した。
慌ててお皿で迎えに行く。
「アチチチッ」
お皿に乗せて備え付けのソファテーブルに並べて勧める。
「残りもすぐに焼けると思うので、先ずは[チーズトースト]をどうぞ」
「ホーホー、ふーふー。これは美味いの。香りも豊かじゃ」
「はちみつと黒コショウです。味変に良いですよ」
「ホーホーホー。美味いのぉ美味いのぉ」
次はポンッと[ピザトースト]が飛び出した。
今度はマナ・レクス様がお皿で受け取ってくれた。
「面白いのぉ」
タバスコも勧めると、くうが恨めしそうに見ている視線に気づいた。
「くうも味変する?」
「はい! はちみつと黒コショウは初めてです。それが良いです!!」
甘じょっば美味しい、最高の組み合わせだよねぇ~。
「はふはふ、アチアチ、ほむむむ」
「気に入った?」
「はちみつをもっと掛けてくださいませんか」
気に入ったのね。
「でも実は、僕はタバスコよりもこの[鬼びっくり あらびき とうがらし]が好きなんですよ」
と乱切りの鷹の爪がどっさり入った小瓶を取り出す。
「うほ~~。これは辛いのぉ。じゃが後引く旨さじゃ」
マナ・レクス様は気に入ってくれた様だ。
最後の[エッグトースト]が飛び出すと、くうがパクりと飛びついた。
「ファチチ。はふはふ。はふぅはふぅ」
「火傷するから一旦よこしなさい」
取り上げてアイスのカフェオレを渡す。
4等分にカットして、とろりとした卵黄を絡めたら少しふぅふぅして……。
「はい、あーーん」
(あ、ついいつもの調子でやっちゃった……)
ギギギギギーー。油切れした機械の様に振り返ると、マナ・レクス様の視線が痛い。
「儂のも切ってくれるかの?」
「モチロンですぅっっっ」
お皿に残った卵をパンで拭き取ってキレイに完食だ。
「ふむ、どれも美味かった。馳走になったぞい。時間も無いことじゃし、邪魔者はさっさとお暇しようかの。ホーホーホー、ホーホホ」
「違います違いますってばぁぁぁぁぁ」
空しく響く声を置いてきぼりに、マナ・レクス様は帰って行った。




