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第百十一話 底板と側板とフタで1つの家族です~晩ご飯はお月見レンチンカルボナーラ~

 思い出の小さな魔石は木樽の底板に嵌め込み終わり、僕たちがフタへと『調湿と調温の保管魔回路』を組み込み、ルシアンさんがその『先嵌めの条件』を身をもって実感したその頃――。


 森の材木置き場の、より森に近い場所には、ふわりふわり、ゆらりゆらりと低い位置で底板が漂う異様な光景が広がっていた。


 材木の積み込み場では、王宮職員やギルド職員たちが慌ただしく作業をこなしている。セオドア王は森に近い場所でルシアンさんが底板へ魔石を嵌め、ダッシャーたちがフタへの魔回路の書き込みをするその様子を、真剣な面持ちで見ていた。その為に、王宮職員たちはこちらを直視しないように気を配り、一方、ギルド職員たちは――。


「まあ、アンセル様と神獣様のやることだしな……」

「あぁ、いちいち驚いてたら身が持たない」


 誰もこちらを気に留める様子はない。


 だが、ふわり……ゆらり……。目の前を横切る底板たちにはさすがに手を止めた。


 ――そこには、なんとも可愛い奇跡が巻き起こっていた。

 魔石を嵌められた底板たちが、まるで意思を持ったシャボン玉のように、「ふわふわ、ゆらゆら」と宙へ浮き上がり、楽しそうに森の中を漂い始めたのだ。


「うおっ!? おいおい待て待て、底板たちがふらふらと空を散歩し始めやがったぞ!」

「なるほど、まだ側板が嵌っていないから、一人だけだと軽くてフラフラしちゃうんですね」

「これ、アンセル様は納得しちゃうレベルの現象なんですか?」


 副ギルドマスターのキースさんが1枚、また1枚と底板を回収しながら歩いて来る。


「この木樽は底板と12枚の側板と、最後にこのフタが重なることで、言ってみれば1つの家族として完成するんですよ」

「えっと――、何だって?」


「お花畑的な言い回しでは分からぬぞ」

「うぅん――、底板が『自身の対』となる側板とフタをロックするって説明しましたよね?」


「あぁ、それも俺には良く分かんねぇ原理だがな」

「つまり、底板のお父さんが居ます。子供が側板で、フタがお母さんです」

「はぁ!? 益々分かんねぇな」


「とにかく! お母さんの目がまだ届かないので、お父さんがフラフラしている――そう言うことですよ」

「お父さんとお母さんの例えは分かるがよ。……まぁ良いか」


 ルシアンさんとキースさんが納得したのかしてないのか? これ以上は僕のお花畑では説明は出来そうにない。

 そんな話しをしている最中にも、ふわふわと底板は自由に飛び続ける。


 あまりにふわふわと心地よさそうに浮き回るものだから、中には楽しげに風に乗って、森の奥の木々の隙間へとふらふら紛れ込んでしまう迷子の底板まで現れた。

 すると、森の奥に迷い込もうとする小さな底板の背を、トレントの大きなお母さんが、木漏れ日のような優しい枝先で「こらこら、迷子になっちゃダメよ」と優しくなだめるように包み込み、材木置き場へとそっと押し戻してくれたのだ。


「ははは、この底板はあの木が好きなのかも知れないですね。このフタの中に、あの子が居ると良いね」


 トレントに押し戻された底板は、嬉しそうに回転しながら僕の腕の中に飛び込んできた。

 それをキースさんが回収していく。


 そうこうしている内に、空が夕暮れの色に染まり始めた。

 まだ、森の材木置き場には、底板とフタ、それに数十枚の側板が残されていた。


(うーん……、やっぱりギリギリで明日に持ち越しかぁ……)


 そう少しだけ名残惜しそうに、急速に紫色へと染まっていく西の空を見上げた、その時だった。

 ふっと――結界内を包む太陽の光が、まるで時間を巻き戻したかのように、明るい昼間のそれの輝きと色合いへと切り替わったのだ。


「えっ……!? 空が、昼間に戻った……?」


 隣に立つダッシャーが空を見上げている。


「パパなの」


 きゅいっとらんちゃんが教えてくれる。


「あと少しなのだろう?」

「ありがとう。ダッシャーは凄いや。僕が思っていることをすぐに感じ取ってくれて、難なくやってくれちゃうんだもんね」

「あぁ、助かる。これなら組み立て場で荷下ろしする者も、明るい光の中で安全に、作業が出来るだろう!」


 セオドア王が友の粋な計らいに、感謝を伝える。


「さぁ、じゃあ後は皆さんにお願いして、僕はサクッと作れる晩ご飯の用意をしちゃいます」

「腹が減ったぞ」「ご飯なの」「ミルクなの」

「俺も頑張った!!」


 どさくさに紛れてルシアンさんが返事をする。


「では、小鍋で出来るタイプのパスタを使って、サクッとカルボを作りま~す」


 レンチンパスタケースにパスタと水・牛乳・コンソメ・バター・カットしたソフトサラミを入れて、5分チン。

 一回出してチーズと生クリームを入れたら、クルクル混ぜて更に1分半チン。


 取り出したら良く混ぜてお皿に盛り付けたら、卵黄をポンして黒コショウを振ったら【簡単お月見カルボ】の完成です!



~【お月見レンチンカルボナーラ】~

■材料(1人分)

・パスタ(3分タイプ):100g

・ソフトサラミ:2枚

・水:140ml

・牛乳:60ml

・生クリーム:60ml

・ピザ用チーズ:大さじ3

・コンソメ:小さじ1

・バター:5g

・卵黄:1個分

・粗びき黒こしょう:適量

■下準備

1.ソフトサラミは半分に切り、さらに1cm幅に切る。

■作り方

1.パスタケースにパスタ、水、牛乳、コンソメ、バター、ソフトサラミを入れる。

2.600wのレンジで5分チンする。

※フタはしない

3.取り出し、チーズと生クリームを加え、全体を軽く混ぜる。

4.600wのレンジで1分30秒加熱し、全体をフツフツと温める。

5.ケース内で手早くしっかりと混ぜ、チーズを完全に溶かしてソースをとろっとさせる。

6.お皿に盛り付け、中央に卵黄を乗せ、黒こしょうをふって完成。

※ソフトサラミは塩気が強い為、塩は入れてませんが、味の薄いハム等を使う場合は味を見て塩を適宜加えてください。



「これは後で僕たちが食べるので、時間経過なしボックスに仕舞っておきます」

「は!? 俺には食べさせてくれないのか?」


 ルシアンさんが食い気味に突っ込みを入れる。


「母様たちにレシピを教えるので、後は共同キッチンで作って貰ってくださいね」

「何だよ。冷たいな」

「僕たちは、今からクイーン・リリーのところに行きたいんです。もう本当ならとっくに夕方を過ぎてるから、心配してるといけないので早く行かせてください!」


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