南アフリカIF戦線
2050年7月。アフリカ大陸において、本格的な戦闘が開始された。
発端は、中国を中心とする同盟国側による政治的・情報的介入である。複数のアフリカ諸国が影響下に置かれ、南アフリカを主軸とする連合体協力圏に対する攻撃が開始された。
北アフリカでは、エジプトをはじめとする国家群が同盟国側として軍事行動に参加し、南方への侵攻を開始する。
本戦線の主目的は、アフリカ南部に配置されたIF中継拠点の無力化にあったとされる。これにより、連合体側のエネルギー供給網を断絶することが意図されていた。
戦闘は大陸全域に拡散した。
ガーナ周辺では同盟国側が優勢を確立し、マダガスカル近海および南アフリカ周辺では連合体側が優位を保持したと記録されている。
戦術的特徴として、生物兵器および核兵器の大規模使用が挙げられる。
ゾンビウイルスはガーナおよびモロッコ周辺で散布され、核弾頭は主にエジプトおよびその周辺地域で使用されたとされる。
これらの兵器使用は、戦闘環境そのものを変質させた。
感染拡大と放射能汚染の影響により、サバンナおよび森林地帯は急速に縮小し、砂漠化が進行する。
また、密林および草原地帯ではゲリラ戦が多発し、戦線の固定はほぼ不可能となった。
当時、人口増加が続いていたアフリカ大陸において、この混乱は致命的な影響を及ぼす。
感染者は急増し、さらに複数の変異種が発生した。
これにより、既存の治療手段は実質的に無効化されたと考えられている。
同時期の中南米およびヨーロッパ戦線と合わせ、世界規模で森林資源の大部分が失われたとする記録も存在する。その消失割合は最大で約7割に達した可能性がある。
2050年9月。アフリカ戦線は、限定的ながらも均衡状態に移行する。
勢力圏はおおむね赤道を境界として分断され、
北部は同盟国側、南部は連合体側の支配下に入ったとされる。
この時期、各戦域において戦略の変化が確認される。
アメリカ合衆国はすでに本土防衛を優先する籠城戦略へ移行しており、日本、韓国、イギリスなどの主要連合体国家にも同様の傾向が見られた。
一方、ロシアおよび中東諸国においても防衛的姿勢への転換が観測されるが、シリアおよびイランを中心とした勢力は北部地域の維持に成功したとされる。
南部地域においては、南アフリカをはじめとする現地勢力が統治を継続した。
このアフリカ戦線は、記録上確認されている最後の大規模戦闘である可能性が高い。
以降、戦闘行為そのものが困難となる。
理由は単純である。
感染拡大と放射能汚染により、戦力の維持および指揮系統の確立が不可能となったためである。
戦線の詳細については、本記録においても断続的な妨害および欠落が確認されており、正確な再構築は現在に至るまで達成されていない。
ただし、確定的に言える事実が一つ存在する。
アフリカ大陸は、本戦争において最大の人的損失と国家消失を記録した地域である。
それ以外の詳細は、不明である。




