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第12話②

「ユキちゃん、ねえ、ユキちゃん」


 ポテポテとユキに着いてきたカイラが、甘えた声でずっとまとわりついてくる。

 背中にピトッとくっついたり裾を引っ張ったり……

 恐れるに足りないとか思ったけど、普通にこれは邪魔である。


 あと、ちょっと母性本能が顔を出しそうになるのでやめてほしい、とユキは思った。


「ねえユキちゃん、薬持っていっちゃうの?」


 甘え声で、しかし困惑したようにたずねるカイラに、ユキは、顔を合わせてニッコリと微笑んでみせた。


「私、このお薬が必要なの。カイラ様、譲ってくれますよね?」


「それはいいけど……」


「そして、少しだけお出かけします。引き止めたりしないで、ね?」


 ユキは、精一杯ぶりっ子して、カイラの頭を撫でてやった。そういえば、キスでもしてやれば鼻血出して倒れるんじゃなかったっけ。でもそこまでしてあげる筋合いもないし、それはちょっとオーバーキルだろう。


 カイラが頭を撫でられただけで真っ赤になっているスキに、ユキは治療薬を全て荷物に積み込み、さっさと立ち去ってしまおうとした。


 その時だった。


「嫌だ」


 そう聞こえたかと思うと、ユキは身体が動かなくなった。ふと気づくと、目の前に真っ白な何かが現れた。


「なっ……これは……トリモチ!!」


 身体がベタベタと、ネズミ捕りにかかったように動かない。魔法で取り除こうとしても魔法を弾いてしまい、取り除くことができない。


「ねえユキちゃん、行っちゃやだよ。ここにいてよ」


 カイラは、トリモチにかかっているユキに、泣きそうな顔でそう言った。


 ユキは慌てた。


 しかし冷静を装って急いでカイラに微笑みかけた。


「カイラ様がこんな事したのですね。こんな事されたら、私、カイラ様の事嫌いになっちゃいますよ。良いんですか?」


 ユキの言葉に、カイラは一切動じなかった。


「ダメだよ。俺がユキちゃんに嫌われても、俺はユキちゃんを行かせるわけにはいかない」

「カイラ様!」

「嫌だもん。ユキちゃんが悪い魔女になるのは絶対にやだもん」

「…………は?」

「ユキちゃんいい子だもん。ねえ、悪い魔女になったら、絶対いつか退治されるよ。俺はユキちゃんが殺されるのは絶対に嫌だ。ユキちゃんに嫌われても、ユキちゃんを守りたい」


「うるさい!!このベタベタ剥がせよ!!この甘ったれが!」


 ユキはとうとう叫んだ。


「やめてよ!どうせ誘惑魔法で私の事好きになってるだけのくせに偉そうに!私がいい子なわけないでしょ!!国を疫病で恐怖に陥れようとしている、疫病の魔女であるこの私が!!私の事を何も知らないくせに!!魔法に負けてるだけの偽物の好意のくせに!!」


「ユキちゃん……」


 カイラは、トリモチだらけのユキに近づいて、目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。


「確かに俺はユキちゃんの事何も知らない。でも俺はね、ユキちゃんが大好きだよ。多分この気持ちはユキちゃんの魔法の効果で、偽物の気持ちなんだっていうのは分かってる。でもどうしても、ユキちゃんを行かせるわけにはいかないんだ。ユキちゃんが大好きだから。それにね」


 カイラはユキの呪われている目をジッと見つめた。


「俺の中の、もうひとりの俺がずっと叫んでるんだよ。『絶対にこの女に、道を外させるな』って」


「は、はぁ!?」


 ユキは困惑して油断した瞬間だった。


 カイラはユキを抱きしめ、そのまま催眠魔法をかけた。しまった油断した、そう思ったときにはもう遅い。


「ユキ」



 最後に名前を呼ばれた気がした。



 あれ、ちゃん付けされなかったな、とユキは眠りに落ちる前にそう思った。


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