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第84話 神坂瑠璃の後悔

元幼馴染パート入ります!


色々考えていたら投稿が遅くなってしまいました。申し訳ありません。

 昔からずっと、それこそ出会った時から鳳海星(おおとりかいせい)のことが好きだった。

 優希の後ろに隠れていても、そこが可愛くも思えたし、今思えばあんなことをする海星は貴重だっただろう。


 優希たちと一緒にいつつ海星にのめり込んでいると、いつの間にか中学になっていた。中学になりよりカッコよくなった海星は、次第に告白されることが増えていった。


 私はそれを見て我慢できなくなり、衝動的に海星を呼び出して告白した。

 海星は私の告白を受けてくれた。これはまだ中学に入って数ヶ月しか経っていない時だった。


 そこから段々と優希と遊ぶことが減り、神楽坂絵里(かぐらざかえり)と遊ぶことも少し減った。私自身それを少し寂しく思うところもあったが、2人と遊ばない日常に慣れていった。


 そしてまたしばらく経った頃、海星が絵里とも付き合いたいと言い出した。それはちょっと、と躊躇っていたら、海星から別れるぞと脅されてしまった。

 私はどうしても海星と別れたくなかったため、モヤモヤする気持ちを隠してそれを許した。


 3人で付き合っていると、それは案外悪くないものだった。絵里とも仲良くやれていたし、海星は私たちを平等に愛してくれたと思う。


 その頃からだろうか。優希を邪魔だと思うようになったのは。

 偶にご飯を作ってくれるのには感謝していたが、私たちが海星と付き合っていることにも気付かず遊びに行こうと誘ってくるのは迷惑だった。


 勿論、その事を伝えていなかった私たちにも非はあったのだろう。何も知らない人に怒るのはお門違いだ。そんなことは分かっていても、無性に優希に対してイラついた。

 優希が絵里を好きなのは知っていたから、絵里に遊びに行こうと誘ったのはおかしいことではなかったのだろう。


 私はそのイラつきを隠しながら過ごし、無事に中学を卒業し高校に入学した。




 ☆




 高校に入学して2ヶ月ちょっと経った頃、優希からこんなメールが送られてきた。



『俺、明日絵里に告白してみる』



 短い、たったこれだけのメールだったが、逆にそこから真剣さが感じられ、私は少し焦った。ここで変な拗らせ方をしたら面倒だと思った。

 だから私は、海星と絵里に相談することにした。


 優希だけが居ないグループチャット。



『ねぇ、優希から明日絵里に告るってメール来たんだけど。どうするの?』


『俺にもそんなの来たな』


『マジで? 今更優希に告白されてももう遅いなぁ』


『よしっ、俺にいい案がある』


『マジで? どんなの?』


『それはーー』



 海星の提案を受け、私はそれを実行することにした。いい機会だと思った。咄嗟に思いついた事だろうけど、これで面倒な関係から解放されるかもしれないと思った。

 優希を完全に突き放せば、もう関わってくることは無い。そんな安直な考えで私は優希を貶めることにした。




 ☆




 夏休みが終わってから、私たちと優希のポジションは少しずつ入れ替わり始めた。


 優希がイケメンの卵だったとは思わなかった。元々見た目に気を使う方ではなかった優希が少し整えただけで、海星と同じくらい、いやそれ以上カッコよくなっていた。


 それに対して、私たちは少しずつ色々なことが振るわなくなった。

 海星は部活、絵里は体重、私は肌が少しずつ変化していった。学校でも私たちに関わる人は減り、段々と孤立して行った。


 そうしてしばらく経ったあと、それが優希の弁当のせいだと思った。私たちは、基本的に食事に気を使う方ではなかった。なんでも出来ると思っていたのだ。


 1ヶ月近く大して部活をしなければ、勿論以前のようにやることは出来なくなる。食生活が整っていたからそれが酷くなかっただけだ。

 1ヶ月近く暴飲暴食を繰り返していれば、勿論太るし見た目が悪くなる。優希が気を使ってくれていた。

 1ヶ月近く大して気を使うことも無くジャンクフードを食べていれば、肌だって荒れるだろう。私にも、優しかった。


 それに気づいた時には、既に遅かった。今更優希に泣きつく気にもなれなかった。今まで優希を下に見ていたことによるプライドが、私たちの邪魔をした。


 結局優希にまともに謝ったり頼むことも出来ないまま、時が過ぎていった。




 ☆




 そして今。私は冷たい檻の中に閉じ込められ、ただひたすらに自問自答し続けていた。

 何が間違っていたか、どこから間違っていたのか。少なくとも、1つは分かる。


 私たちは、やり過ぎたのだ。優希は幼馴染を見捨てないと過信していた。結局上から目線で頼んだところ断られ、それに対して怒った海星の計画を実行に移した。


 杜撰な計画だった。ただ、怒りに駆られて何かに取り憑かれたように実行に移した計画は、優希に対して憂さ晴らしをするためのものだったのだろうか。海星にとっては、それ以上でもそれ以下でもなかったのだろう。


 私は捕まったあと、正直に全てを話した。だが、海星はひたすらに優希が悪いんだと言い、絵里は私は何もやっていないと言っていたらしい。

 一番冷静だった私は、他の2人より少しだけマシな待遇だった。



「優希に謝りたい」



 誰も居ないところでそう呟いたとて、誰もこの言葉を聞き入れてくれる訳では無い。ましてや、優希を貶めようとしていた私がどうにかできることでは無いだろう。


 それでも、私は優希に謝りたかった。


 優希に会うのは怖い。でも、海星に異常な程に拘って優希に酷いことをしてしまったことを謝りたかった。優希が色々としてくれたことを当たり前だと思っていた私が情けなかった。


 だから優希に一度だけでもいいから会いたかった。




 ☆




 数年の月日が経ち、私は刑務所を出た。


 まともに暮らせるとは思っていなかったが、それでも誰かの役に立ちたいと思った。だけどその前に、私にはやるべきことがあった。


 ずっと後悔していた。今こそ、ようやく謝ることができるかもしれないと思った。


 連絡先は、案外直ぐに教えて貰えた。優希の両親に謝りに行ったとき、特になにか気にする様子もなく連絡先を教えてくれた。



「あの……いいんですか?」


「別にいいわよ。あの子たちったら最近こっちに顔も見せないのよ。神坂さんも前より大分変わったようだし、機会位は上げるわ。その代わり、もし会えたらたまには戻ってくるように伝えておいてね」


「は、はい」



 昔から、割と放任主義のお母さんだった。本人たちで解決することが大切だ。どうしようもない時は私が助けてあげる。そういうスタンスの人だったことを思い出した。



「……でも、そうね。別にあなた達を許したわけじゃないのよ。ただ、若い時には幾つも間違いを犯すわ。その間違いを理解して、どこが間違っていたのか考える。そして今後そんなことがないようにしていけることが大切だと思うの。あなたは、それが出来ると思っているわ」


「……ありがとうございます。もう二度と、こんなことはしません」



 私はそう宣言して優希の実家から離れた。


 そして、1ヶ月後。私は優希に連絡を取り、会う約束を取り付けることが出来た。




 ☆




「久しぶり。元気……だったかは分からないけど」


「……うん」



 会う場所は今優希が暮らしている家。つまり、優希らがほぼ同居しているところだった。だから勿論周りから詩織さんと莉子ちゃんと那月さんが私を睨みつけていた。



「まずは、ごめんなさい。あの時は、海星に流されるままに優希を傷つけて、挙句の果てに人として最低なことをしてしまいました。

 謝っても謝り切れるとこじゃないし、許されるべき事でもないと思う。でも、謝りたいと思って来ました。ごめんなさい」



 私はそう言って頭を下げる。すると、そんな私を覚めた目で見ている莉子ちゃんが呆れたように口を開く。



「それってさぁ、謝ったことで自分の罪を軽くしたと思いたいだけなんじゃないの? 結局優希兄じゃなくて自分のこと考えてるんでしょ?」


「えっ……」


「だってそうじゃん。本当に悪いと思ってるなら優希兄が会いたくないかもしれない可能性は考えなかったの? 今回は優希兄は特に気にしていないみたいだからいいけどさ。もうちょっと考えるべきじゃないの?」


「莉子、神坂もそんなつもりじゃなかったんだろう。そんなに怒らないで」



 莉子ちゃんに指摘されて、ハッとした。

 檻の中の私は、ひたすら罪の意識に苛まれていた。だから少しでも優希に謝りたいと思った。それは、莉子ちゃんの言う通り自分の罪を軽くしたいだけだったのかもしれない。


 だとしたら、私がここに来た理由の一番奥深くにあるのは、自分が許されたいという最低な理由なのかもしれない。



「……確かに莉子ちゃんの言う通りかもしれない。でも、同じ間違いを犯さないように来たの。長居はしないから、せめて話だけでも」


「うん、大丈夫」



 あぁ、私はなんてことをしてしまったのだろうか。優希に対して過去の自分への謝罪と告白をしながら、私は考える。


 こんなにも優しく私の話を聞いてくれている、罪人の話を聞いてくれている人に、私はなんてことをしてしまったんだろうか。

 昔の私はバカだ。優希の優しさを踏みにじっていた。これが私の、人生で最大の後悔だ。




 ☆




「じゃあ、元気で」


「ありがとう。優希も元気でね」



 優希はどこまでも優しいのか、私を駅まで送ってくれた。私は改札の前で深く優希に対し頭を下げ、振り返らず駅のホームに向かった。


 また後悔は増えてしまったが、それでも今日来て良かったと思う。


 夕方のホームには人が多く、一番前に並べていてよかった。今日のうちに戻って、明日からはまずバイトの面接を受けたい。


 そんなことを考えながら待っていると、アナウンスが入り、そろそろ電車が来ることを告げる。私が顔を上げると、背中に強く衝撃が走る。



「……え?」



 電車が、ブレーキの音をホームに響かせながら近づいてくる。電車が目と鼻の先になった時、私は悟った。


 これが私への罰なのだ。許されようとした私への、罰なのだ。

 電車がぶつかり酷く耳に障る音がし、体がひしゃげるような感覚と共に、私の意識は闇へ引き摺り込まれて行った。

読んでくださりありがとうございます。神坂瑠璃編でした。流されてやってしまったという理由だったので、一番最初にしました。


最後はやはりバッドエンドになりました。次話、鳳海星編です。これ以降は何話かに分けるかもしれません。


評価していただけると励みになるので、ぜひ☆☆☆☆☆といいね、ブックマークよろしくお願いします。



また、私の予定が落ち着き次第再開します。X(Twitter)で情報を出すかもしれないので、下記のアカウントをフォローなどして頂けると幸いです

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[気になる点] 殺人未遂で死にかけたのに住所教える親もそうだが、この子の思考が罪に苛まれてる殺人犯以下なのも悲しい。 罪に苛まれてる殺人犯だって、謝罪の手紙から入ってそこから刑務所で面会して謝罪と入る…
[一言] まぁ普通に考えたら同じ捕まった組のどちらかが犯人なんだろうなぁ…
[一言] 何となくお姉ちゃんの気がする。 優希側であの事件の一部始終を見ていたのはお姉ちゃんであり、直後の3人に対する怒りは相当だったから。
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