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第85話 鳳海星は今 前編

久しぶりの投稿になりました。まだ12月に入るまでは忙しいと思うので、また間が空くと思います。よろしくお願いします。


内容に違和感などありましたらご報告頂けるとありがたいです。

 ……テレビから、事故のニュースが流れている。どうやら、俺と同じ年齢の女性がホームから転落して列車に轢かれたらしい。可哀想だ、とも思う。だが、それ以上に俺は今の生活を送っている自分が可哀想だった。


 何故か壁にカビが生えた狭いアパート。家具と言えば冷蔵庫とテレビ、ベッドくらいしかない。まともに家事をしたことがなかったせいで、1度だけ料理をしたキッチンは謎の異臭を放っている。


 バイトをいくつも掛け持ちして、食事も抜いて、スマホも持たず、とにかく色々なものを削って何とか今の生活を保っている。肉体労働や日雇いの仕事をして、深夜や朝に帰ってくるなんてこともザラだ。

 どうしてこうなってしまったのか? そんなの、あの忌々しい事件のせいに決まっている。あいつのせいで俺の生活は滅茶苦茶だ。



 ☆



 シャバに出たところで、結局生活が良くなるわけじゃない。高校は退学。実家にも戻れなかった。もっとも、実家の状態もあまりよくなかったのだが。

 家の塀には俺や家族への暴言が山ほど書かれていて、生ごみや腐敗臭がした。



「ねぇ、あれ鳳さんちの息子さんじゃないの?」


「本当ね。あぁ怖い怖い」



 俺は聞こえてきた話が気になって後ろを振り向いた。癪だった。俺を悪者みたいに扱いやがって。



「うわっ、こっち向いた」


「凶悪な顔。ねぇ、もう行きましょ。目をつけられたらたまったもんじゃないわ」


「そうね。行きましょ」



 そう言うと、おばさん共は俺から逃げるように小走りに逃げて行った。



 ……くそっ、くそっ、くそっ! 俺のことをなんだと思ってやがる! 誰彼構わず標的にしている無差別殺人犯じゃないんだ。そんなことするわけないだろうが!


 俺は謎の物体を蹴り飛ばした。靴にそれがへばり付き、俺は足をブンブン振る。すると、どこからか嘲笑の声が聞こえてきた。瞬間、カッと頭に血が上り、俺は大股で素早くその場を離れた。靴はいつまで経っても汚れが取れず、若干の異臭を放っていた。



 ☆



 ……何故、俺がこんな目に合わなければならない? 俺が何をした? 何度もその疑問が浮かんでは、消えていく。


 俺は、今でも自分の行動が間違っていたとは思わない。

 絵里も言ってたんだ。「海星は間違ってない。間違ってるのは、悪いのは全て優希だ」って。

 捕まる前に計画を立てたとき、絵里はそう言ってくれた。だから、俺は後悔していない。間違っているのは世間の方だ。俺たちを貶めたのはあいつだ。なのに俺たちばかりが責められる。


 それに、結局俺は計画を実行しただけで、絵里が考えたんだ。瑠璃もノリノリだった。俺だけが悪いか? 間違っていたか?


 少なくとも、過去の俺は、何一つとして間違っていなかった。



 ☆



 高一の時、俺は優希を嵌めた。今更絵里に告白しようとするなんて、正直ムカついた。過去にあいつに感じていた劣等感は、いつの間にか消え、優越感になった。

 寧ろ、見下していたと言っていい。だから、あいつをコテンパンにして、二度とそんなことが出来ないようにしようと思った。


 当日、優希の姿をじっくり見た。最近は、目に入っていてもそこにピントはあっていなかった。漫画で言えば顔すら描かれない、モブのような存在だ。

 久しぶりに見たあいつは、なんか……陰キャだった。長い髪で目が隠れているだけでなく、校則通りに制服を身に付けている。常に下を向いていて、正直、俺たちに釣り合ってはいなかった。

 過去に憧れたあの優希、劣等感を感じていた優希ではなかった。


(そんなんで絵里に告白しようとするか? 普通。鏡見たことあんのかよ)


 そうやって内心バカにしながら、俺は優希と当たり障りない会話をした。


 そして、優希を嵌めた。優希のあの時の顔は最高だった。苦痛や裏切りに顔を歪める、あの顔は。

 あいつが消えて、ここから俺たちはもっと勢いづいていくんだ。そう思っていたのに。次の日から、俺たちの華々しい未来に暗雲がかかり始めた。


 中野先輩や優希の姉である詩織さんが出てきた。優希がイケメンに戻った。俺はスタメン落ちした。絵里は太った。瑠璃は肌が荒れた。俺たちは、一軍ではなくなった。


 許せなかった。信じられなかった。


 夏休みまでの、あの日々が嘘のようだった。

 毎日夜遅くまで遊び歩き、時には絵里や瑠璃とホテルで寝たりと、自分達中心の世界がどこまで行っても続いていた。

 それなのに、その道を照らす光が無くなり、目の前は闇に包まれた。


 その闇の中で、絵里が小さい光を灯した。



「優希が死んじゃえばいいのにね? ……海星」


「……んぁ? あぁ……そうだな……死ねばいい、死ぬといいな。……殺せばいいのか……」



 あいつが死ねば、全てが丸く収まるんだ。あいつが居なくなれば……。

読んでくださりありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新再開きた! 事故?を知らなかったという事は海星は無関係としても……
[一言] 典型敵な幼稚猿児嗜好かと。(• ▽ •;)(個人敵庭竿を使い勝手の悪い長さに切り揃えて、自分勝手に濁り汁だせないようにしてから幼稚猿児煮業とマグワイヤーさせてあげると良いのではと。そうすれば…
[一言] こいつらマジで終わってる プライドが邪魔してるのか謝罪はなくむしろ○すことしか考えられないのは逆恨みにも程がある 悪いのは自分という自覚なし 瑠璃編でもあったが優希が悪いの一点張り 体だけ高…
感想一覧
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