第79話 初詣
そろそろ本編は完結です。
【お知らせ】
金曜日は投稿をお休みさせていただきます(翌日大会のため)。よろしくお願いいたします。
年末を大掃除などをして過ごし、石崎らも含む六人で初詣に行くこととなった。
先に俺と石崎の2人で神社まで行き、女性陣が来るのを待つ。元旦ということもあって、たくさんの人が神社の中へ入っていく。冬の寒さと冷たい風によって体が冷え、何もせずに待っているというのは案外辛いものだった。
「さ、寒いなぁ、優希ぃ」
「おう、寒いな」
「なんで平気そうなんだよ。寒くて凍りそうなんだけど」
石崎は少し縮こまって震えていて、どこから見ても凍えている人にしか見えなかった。相当寒さに弱いらしい。
何だか可哀想になったので上着を一枚かけてやると、何故か潤んだ目で見つめられてしまう。
「優希……イケメンだな」
「お前に言われても嬉しくない。寒いの苦手ならもっと着込んでくればいいのに」
「冬ってできるだけ薄着でいたくならないか?」
「小学生かよ」
着込んでこなかった理由のくだらなさに呆れてつい突っ込んでしまった。急に上着を返してもらいたくなったのだが、何とかなりそうだったのでとりあえずは貸しておくことにする。
クリスマスプレゼントで貰ったマフラーを巻いていたので、想像以上に温かかった。
それでも多少は寒かったため、暫く石崎と身を寄せ合って待っていると、女性陣が到着したようだった。下に向けていた顔を上げると、そこには着物を着た四人が立っていた。
「ごめんね、瀬川さんのお母さんに着付けてもらってたら遅くなっちゃって。寒かったよね」
「いや、大丈夫。着物似合ってるよ」
「ありがと、優希くん」
華やかな着物にうっすらと化粧をし、髪を結いあげている那月たちに、俺は素直に感想を口にする。いつもと違ってうなじなどが見えていて、心成しかいつもより色っぽいように見えた。
俺が躊躇いなく彼女を褒めた横で、石崎は少し頬を赤く染めてもじもじとしていた。何も言おうとしない石崎にしびれを切らしたのか、瀬川が少し怒気を孕んだ声で石崎に声をかける。
「ねえ、私には感想無いの?」
「え、あっ、凄い似合ってると思う。可愛いよ」
「よろしい」
石崎の回答に瀬川は大げさに頷き、気を取り直したようにこちらを向く。どうやら満足したようだった。
「さて、まずは明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』
「よしっ、じゃあ初詣行こっか」
「切り替え……」
なんとも儀礼的な新年の挨拶をして、そのまますぐに初詣の列に並ぼうとする瀬川に少し得体のしれない何かを感じたが、気にせずにそのあとに続いて列に並ぶ。人が多くはぐれやすいため、あまり離れないほうがよかったからだ。
まだ恥ずかしそうにしている石崎を瀬川の隣に押し込み、その後ろに四人で並ぶ。一応那月とは手を繋いでおいて、姉ちゃんと莉子で手を繋いでもらった。
慣れない着物のせいか、それとも人に押されてか、時々転びそうになることがあり、少し心配になったので、手を繋いでいてよかったと思う。
そうこうしているうちに俺たちの順番が回ってきた。
「さあ、これで私の願いをっ……」
「ちょっと待った。五千円は多くない? 普通五円玉じゃ」
「いいのよ。神頼みでもこの願いは叶えたいのよ」
五千円を投げ打ってまで叶えたいことが何なのか気になったが、後ろにも大量の人が待っているため特に止めたりもせず五円玉を賽銭箱に投げ入れる。
隣から聞こえてくる「優希兄優希兄優希兄……」という呪文のようなセリフを無視して、俺は自分の願い事をした。
☆
少し人の少ないところまで移動し、願い事をした後は大抵と言っていいほど行う「何お願いしたの?」という質問が始まる。
普段ならあまりとやかく聞かないのだが、流石に五千円を使ってまで願うことには興味が沸いたため、俺は姉ちゃんに質問することにする。
「詩織は何お願いしたの? 五千円も使って」
「秘密よ。こういうのは叶うまでは言っちゃ駄目なの。でもまあ、五千円はそれだけ私の気持ちが籠ってるってことよ」
「こういうのって金額は関係ないんじゃ?」
那月から鋭い質問が飛んでくる。しかし、姉ちゃんはこれに対してもいとも簡単に答える。
「私の自己満足よ。自己満足だとしてもそれが叶ってほしかったの。それよりも、ほらっ、あそこにおみくじあるわよ。やりましょうよ」
「賛成。これは誰が一番運持ってるか勝負だよ」
姉ちゃんが指さした先には確かにおみくじがあり、瀬川が真っ先にそれに向かって歩き出す。これも定番のイベントなので、初詣でやりたいことの一つだった。ちなみに去年は小吉と微妙だったので、今年こそは吉くらいは引きたいものである。
それぞれ一回ずつおみくじを引いて、さっきの場所に戻っておみくじを見る。この時点で、瀬川はあまり良くなかったことが確定した。おみくじを見た瞬間肩を落としたからだ。
声のトーンが落ちた瀬川が「じゃあ下から順にいこうか……」と言い、案の定瀬川が手を上げる。
「凶だった……なんか幸先悪い」
「まぁ、所詮運だからな。そう気を落とすなよ」
「それは運が良かったから言えるんでしょ? 結構沈むよこれ」
凶なんて寧ろ珍しいため、逆に幸運とも言える。俺も今まで凶を引いた人は数えるほどしか見たことがない。
次に手を上げたのは那月だった。
「私は小吉だったよ。まぁ、真ん中くらいだね」
「あ、俺も小吉」
石崎が小吉と聞いて手を上げる。その様子を瀬川が少し恨めし気に見ていたが、小吉もそんなに運が良いほうではない。
その次に続いて莉子が「中吉だった」と手を上げ、最後に俺と姉ちゃんが大吉で手を上げる。
「二人も大吉か。寧ろ大吉の方が出やすいみたいになってるな」
「いい感じね」
「詩織姉も優希兄もいいなー。私も大吉が良かった」
「さっきも言ったけど、運試しみたいなものだからな」
そうは言いつつも内心結構嬉しいのだが、これを言うと瀬川に何か言われそうなので、黙っておくことにする。
内容を見ていくと、恋愛のところに「未来に幸福あり」と書かれていて、今以上に幸せなことがあるのかとも思ったが、そう書かれていると思うと幸せな気持ちになってくるのだった。
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