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第74話 二学期終了

 そのまま特に何事もなく二学期が終わり、ファミレスで打ち上げをすることとなった。年末年始は行事が多くて忙しいため、石崎や瀬川を含めた6人で集まれる機会はそう多くはない。

 石崎と瀬川も付き合っているし、クリスマスや正月はあまり会えないだろう。女性陣は積極的なので、正月はともかくとしてクリスマスは無理だろう。


 そういうわけで、今日は打ち上げをすることになった。姉ちゃんも指定校推薦を貰って、既に合格と分かったので、後はゆっくりするつもりだと言っていたので、受験に追われているということはない。



「はーい、じゃあ二学期お疲れー! 乾杯!」


『乾杯!』



 瀬川が簡単に音頭を取り、全員で乾杯する。俺の側の席だけぎゅうぎゅう詰めで、狭くて身動きが取りづらい。



「二学期は大変だったねー」


「まぁそうだな」



 具体的に何が大変だったのかは口にしなかったものの、全員が瀬川の言葉に頷く。

 噂だと、周りの目に耐えきれなくなった元幼馴染たちの両親はどこかへ引っ越していったという。左遷されたとかいう話もあったが、実際のところどうなのかは分からない。


 お祝いの場で暗いことを口にするわけにもいかず、誰もそれ以上そのことに触れずに二学期を振り返っていく。



「やっぱ優希の変化が一番じゃない? 実は女子の間で隠れて優希狙ってる子とかいたよ?」


「へぇ、そうなんだ」


「反応薄……全く興味ないって顔じゃん」



 瀬川がジュースをストローで吸いながらそう言う。好意的に見てくれた人がいたのは嬉しいが、それは俺の外見だけを見て言われているのだと思うと、複雑な気持ちになる。

 俺は自分の外見に関して驕りたくはない。外見だけで判断するのも、されるのもよくないというのはよく分かっている。


 俺がほぼ無反応だったのを見て、石崎が次に話し出す。



「その分、優希を妬んでるやつもいたぞ? だって中野先輩と付き合ったって噂が流れたんだもんなぁ」


「それはまぁ、仕方ないというか。那月は可愛いし人気だからな」


「優希くん?! 嬉しいけど皆の前で言われるのは恥ずかしいよ」



 横を見ると、那月が頬を赤く染めて俯いていた。那月の隣に座っている姉ちゃんがそれを見て意地悪そうな笑みを浮かべ、那月を俺の方に向かって押す。



「きゃっ!」


「うおっ、大丈夫か?」


「う、うん。大丈夫です……」



 那月が俺の方に倒れてきたため、俺が那月を受け止めて顔を覗き込むと、那月は更に顔を真っ赤にして両手で顔を覆ってしまった。


 それを見て石崎が呆れたように頬杖を付き、



「優希、お前顔を自慢しないのはいいけど顔がいいのは自覚しろよ。顔面の暴力だ」


「……? 何それ」


「まぁ、分かんないならいいけどさ」



 更に呆れたようにため息をつき、「三人ともご愁傷さまです」と言って那月以外の姉ちゃんと莉子の顔を見た。二人はその視線に応じるように頷き、俺のことをじっと見つめてくる。

 別に悪いことをしたわけではないのに、謎の圧を掛けられるとこちらが悪いことをしたみたいで、少し居心地が悪い。


 那月を起き上がらせた後も何故か全員に見つめられたため、俺は急いで話題を変える。



「詩織は! 大学決まったから三学期は自由なの?」


「まぁ、一応学校は行こうと思ってるわ。できるだけ優希と一緒に居たいもの。四月からは少し離れちゃうからね」


「詩織姉、たまには帰ってこれそう?」



 莉子が少し表情を曇らせて聞く。



「何とかして時間は取るわよ。別にそんなに帰ってくるのが大変な距離じゃないからね。それに、皆と離れたくはないと思ってるのよ……」


「詩織姉……」



 莉子はやはり姉が離れていくのを寂しく思っているのか、まだ暗い表情のままだった。姉ちゃんもあまり明るい表情ではなく、姉ちゃんの発言が本心だということが分かる。

 大学に行くために引っ越すため、必然的に姉ちゃんと離れる時間は長くなる。少なくとも、俺が頑張って姉ちゃんの通う大学に受かることが出来なければ、何年離れることになるのかわからない。


 ここは俺の頑張りどころである。



「詩織先輩、多分一年後には私がそっち行くから一年は頑張ってね」


「那月も同じところを?」


「私もできれば推薦取りたいけど、同じところ受けるかな。優希くんもそうだよね? ね?」


「お、おう。頑張る」



 那月が何を考えているのか何となく想像でき、元々そのつもりだったとはいえその圧に動揺しながら答える。

 石崎と瀬川はそのやり取りを見てこそこそと何か話始め、満足したのかまた別の話題を話し出そうとする。

 すると、仏頂面の莉子が、



「さっきから皆高校の話ばっかり。ズルい」


「莉子ちゃんはまだ中二だもんね。早く同じ高校来れるといいけどねー」


「私優希兄と一年しか同じ学校に居られない……みんなズルい」


「私だって一年だけよ?」



 姉ちゃんがそう言ったことによって、莉子は俺と那月の膝の上を乗り越えて姉ちゃんの腿に顔を埋め、その様子に他の全員が微笑ましいものを見るような目で笑った。


 そこからは途中瀬川が食べてたものを吹き出すというハプニングはあったものの、和気あいあいとした雰囲気で打ち上げが進んだ。

 打ち上げをしている中で、冬休みが始まったんだということをふと感じたのだった。

次話、クリスマス旅行です。


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