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第72話 お姉ちゃんウィーク 破

大分長くなりました。

 土曜日。今日は姉ちゃんとデートということで、俺と姉ちゃんの2人で水族館に来ていた。



「水族館なんて久しぶりだな。小学校以来かも」


「私もそうね。だから結構楽しみよ」



 できるだけ早く来たつもりなのだが、既に入り口には列ができていた。休日ということもあって、子供連れやカップルが多かった。

 十分ほど並んでパンフレットを受け取り、俺たちは水族館に入る。中は意外と暗くて、「そういえばこんな感じだった」と懐かしくなった。



「取り敢えず順路通りに見てこっか」


「そうね。まずはあっちよね」



 最初に見るのはクラゲの水槽。ふわふわと浮遊するクラゲとライトによって、神秘的な雰囲気が醸し出されている。


 姉ちゃんは初めて水族館に来た子供のようにきょろきょろと周りを見ていて、少し微笑ましい。



「クラゲって結構可愛いのね。とても綺麗」


「そうだね。こういうの見るとちょっとイメージ変わるね」



 姉ちゃんが嬉しそうに報告してくるので、俺は思わず頬が緩んでしまう。いくつかあるクラゲの水槽を一つ一つじっくりと見ていて、このままだと他の水槽を見れなくなりそうなので、俺は姉ちゃんに声をかける。



「姉ちゃん、次の場所行こ?」


「もう少し見てちゃダメ?」


「まだ最初だから。他のも見たいしね。それに、気に入ったならもう一回後で見に来れば大丈夫、ほら行くよ」


「きゃっ! そ、そうね。行きましょ」



 俺が姉ちゃんと手を繋いで歩き出そうとすると、姉ちゃんからは意外と初心な反応が返ってきて、俺も少し恥ずかしくなる。

 もう片方の手で頭を掻きながら姉ちゃんの顔を見る。暗くてあまりよく見えないが、少し頬が赤く染まっていて目を伏せている。


 恥ずかしがってムードをぶち壊すのは良くないので、俺たちはそのまま手を繋いで歩き出す。


 そのまま手を繋いでいくつか小さな水槽やトンネルになっているところを見て回り、次に見るのは大水槽。メインの一番大きな水槽だ。

 よく見る渦を巻いているイワシや、エイやサメのような大型の魚がいて、久しぶりに見ると中々に凄い光景だと思った。


 姉ちゃんもそう思ったのか、俺たちは暫く無言で水槽を見つめる。



「サメとイワシって一緒に居ても大丈夫なのかしらね? 食べられそうじゃない?」



 暫くすると、姉ちゃんが思いついたように疑問を口に出す。



「確かにそうだね。でも食べられてるのは見たことないよね」


「ね。不思議ね」



 姉ちゃんはそう言うと水槽のに近寄って行って、できる限り近くで見ようと水槽に顔を近づけていた。俺もそれに合わせて水槽に近づき、姉ちゃんの肩に手を置いて上から覆いかぶさるようにして水槽を見る。

 すると、下から小さく「うぅ……」という呻き声のような音が聞こえてきたため、俺は慌てて下を見る。


 上からなのでよくは見えないが、少なくとも姉ちゃんが耳を赤くして両手で顔を隠していることは確かだった。周りからも温かい視線を送られていて、またも恥ずかしくなってしまう。

 なんだか自棄(やけ)になってきて、俺が姉ちゃんの耳元で「姉ちゃんも可愛いよ」と囁くと、姉ちゃんは首筋まで赤く染めてしまったので、俺はやりすぎたと思い姉ちゃんを連れて人の少ないベンチのある所まで移動する。



「ごめん、なんか反応が可愛かったからつい」


「もうっ、そんなに可愛い可愛い言わないで! 恥ずかしいじゃない」



 姉ちゃんは顔を背けてそういうので、俺はまた意地悪をしたくなって、「可愛い」と呟く。



「優希のバカバカバカ」


「ごめんって」



 俺の意地悪に対し姉ちゃんは俺のことをポカポカと殴ってきて、俺は謝りつつもまたその様子に「可愛い」と呟く。

 すると姉ちゃんはまた耳まで赤くして、膝に顔を埋める。



「優希はズルいわ。今までそんなこと言ってこなかったのに、急に何度も何度も……」


「じゃあ言わないほうがいい?」



 俺がそう言うと、姉ちゃんは少しだけ顔を上げて、こちらを見る。



「そうは言ってないわ。ただ、恥ずかしかっただけで。そのうち慣れるわ」


「慣れられると困るなぁ、こういう反応もっと見たいから」


「今日優希おかしい。なんか積極的というか」


「もうちょっと自分に正直になろうと思っただけだよ」



 俺はそう言うとベンチから立ち上がり、また姉ちゃんと手を繋いで歩き始めた。




 ☆




 その後、昼食を食べたりイルカショーを見たりして、俺たちは家に戻った。最前列がいいという姉ちゃんの希望の元最前列に座った結果、見事に二人ともびしょ濡れになり、売店でお揃いのTシャツを買って着替えたりもした。

 最前列は濡れるのは分かっていたのに何故選んだのか不思議だったが、姉ちゃんは「これも醍醐味よ」としか言わなかった。


 家に帰ると少し莉子が拗ねていたので、来週以降どこかでデートに行こうと思う。お土産を上げたら少し機嫌は直ったが、まだ不満そうにしていた。


 そしてまた姉ちゃんと一緒に添い寝をして俺は眠りについた。




 ☆




 日曜日。今日はお家デートだそうで、つまりは家でゴロゴロするということだった。莉子は拗ねて友達と遊びに行き、両親は何を察したのか「久しぶりにデートに行く」と言ってどこかへ出かけて行った。仲が良さそうで何よりだ。


 何をするのかは分からないが、いつもより遅いペースで支度をし、10時を過ぎたところで俺と姉ちゃんの支度が終わる。



「さあ、これやりましょ、優希」


「へぇ、ゲームか」



 姉ちゃんは手にいくつかのゲームソフトとゲーム機を持ってきて、ゲーム機をテレビに接続し始める。姉ちゃんが持ってきたゲームは某兄弟のレースゲームと、大乱闘するやつだった。

 どちらも俺が得意な分野のものだったので、これなら姉ちゃんに負けないかもしれない。


 姉ちゃんが「練習したい」と言うので、俺は姉ちゃんの練習風景を眺める。レースゲームの方を最初にやるようで、少し慣れた動作でコントローラーを操作している。カーブで体が横に動くので、突っ込みたくなるのを我慢して俺はそれを見ていた。



「勝負よ、優希。手加減なしでいいわ」


「そう? 姉ちゃんがいいならいいけど」



 3、2、1の合図に合わせて、俺はスタートダッシュを決める。ところが少しタイミングを間違えてしまい、失敗してしまった。これは痛い。

 姉ちゃんはしっかりスタートダッシュを決めていて、既に先頭を走っていた。



「優希、そんなので大丈夫かしら」


「……覚えてろぉ?」



 そこから二周。俺は姉ちゃんと差を詰めることには成功したものの、それ以上差が詰まらない状況だった。このままだと負けてしまいそうなので、俺は奥の手を使うことにする。


 姉ちゃんがカーブに差し掛かったところで、



「詩織」


「ふぇ?! あっ!」



 相変わらず姉ちゃんの体はカーブで動いていたため、そのタイミングで動揺させることによって姉ちゃんはおれの腿の上にこてんと倒れてきた。その勢いでゲーム内でもキャラクターが落ち、その隙に俺は一位になり、そのまま一位をキープしてゴールした。



「やったー、勝った!」


「ズルよズル。無効よ! もう一回やりましょ」


「分かった分かった。次はやらないよ」



 姉ちゃんは悔しそうにそう言ってきて、どうやら俺は姉ちゃんに火をつけてしまったらしい。そのまま対戦は12時近くまで続き、俺が昼食を食べようと言ったことによって打ち切られた。

 ちなみに、俺の全勝だった。



「一回も勝てなかったわ……」


「ごめんって。次は手加減するから」


「それは嫌よ。代わりに、ちょっとして欲しいことがあるわ。後でお願いね」



 後でと言われたので今聞く必要もないと思い、俺は姉ちゃんと一緒に昼食を作って食べた。食器などを片付け終わったところで、俺は姉ちゃんがしてほしいことについて聞く。



「それで、何してほしいの?」


「んーと、頭撫でるのとバックハグと膝枕とそれから……。取り敢えずこれはやってほしいわ」


「多いな……」



 別に変なことでもないため断る必要も無く(そもそも断れない)、俺は姉ちゃんの希望で姉ちゃんの部屋でそれをすることになった。


 膝枕と頭を撫でるのは同時にやってもいいとのことだったので、まずはバックハグからだった。高校一年生なので、まだまだ成長期だ。数か月前と比べても俺の方が姉ちゃんより大きくなっていた。

 俺の足の間に座っている姉ちゃんのことを、すっぽり覆えそうになっていた(もともと姉ちゃんは小柄だが)。


 抱き心地もよく人の体温によって安心感もあり、とても落ち着くというか、気持ちよかった。暫くそうしていた後、姉ちゃんを離して膝枕に移る。


 姉ちゃんはこてんと俺の腿にうつ伏せで倒れてきた。膝枕ってうつ伏せでするものだっただろうか。疑問には思ったものの、それが姉ちゃんの希望とあらばそうするべきだった。撫でやすいと言えば撫でやすいので、そんなに悪くない。


 昨日の夜(土曜午前一時ごろ)に触ったときも思ったが、姉ちゃんの髪はさらさらとしていて触り心地がいい。その触り心地を堪能しつつ姉ちゃんの頭を撫で、姉ちゃんが起き上がろうとしてきたところでその手を止める。



「危ない、寝るとこだったわ」


「別に寝てもよかったのに」


「いや、寝ちゃいけない理由があるのよ。優希、最後のお願いね。私を優希から求めて」


「……へ?」



 さっき何か口ごもるように言っていたのはこのことだったのだろうか。昨日「これからは気を付ける」とか言っていた気がするのだが、嘘だったのだろうか。

 とにかく、その理由を一度聞いてみたかったため、俺は姉ちゃんに問いかける。



「なんで? 気を付けるって言ってなかったっけ」


「それはそうだけど。ほら、休日に誰もいない家でお家デートと言ったら、そういうことしないかしら?」


「そう言われても分かんないよ。三人が初めてだし」



 確かにうってつけの雰囲気ではあるのだが、経験がない俺からしたらそれがどうなのかも分からなかった。経験がないという点では姉ちゃんも同じはずだが。

 俺が納得しきれずに唸っていると、姉ちゃんが強引に俺が姉ちゃんを押し倒す形にされる。



「とにかく、恋人らしいことをしてみたいの。お願い優希」


「……分かったよ」



 恋人らしいことをしたいという本音が聞けたので、俺はそれに満足して、まずは姉ちゃんと口づけを交わすのだった。

次話、お姉ちゃんウィーク 急です。


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