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第63話 戻ってきた優希

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 夢の中だったが気分が落ち込み、この夢が早く終わって欲しいと願う。

 すると、俺は唐突に現実に引き戻される。



「ーー優希くん、大丈夫?」


「んんっ……那月か。俺は大丈夫だ」


「本当? なんか(うな)されてたみたいだから、心配で」



 そんなに深い眠りではなかったようで、俺は那月に声を掛けられたことによってすぐ起きる。


 確かに、制服のまま冬用の布団に潜ったせいか、それとも悪夢を見ていたせいなのか。

 恐らくその両方なのだろうが、制服の中は汗でびしょ濡れで、額からも汗が垂れてきていた。


 それでも心配そうに俺を見つめる那月の頭をポンポンと叩き、笑顔を返す。



「それより、今何時? 俺どれくらい寝てた?」


「今は4時半くらいで、優希くんは1時間ちょっと寝てたかな。詩織先輩と莉子ちゃんも帰ってきたよ」


「マジか、気づかなかった。皆下に居る?」


「うん。下で待ってる。優希くんも、少ししたら来てね」



 那月が悪戯をしようとしている子供のようにニヤッと笑い、軽い足取りで部屋を出ていく。

 何故那月がご機嫌なのか分からず、俺は少し困惑してしまう。特に今日は特別なことがあったわけではない。強いて言うなら俺の記憶が戻ったことくらいだろう。


「少ししたら来てね」と言われたため、俺は10分ほどゴロゴロとしていると、下から「優希ー、もういいわよー」という姉ちゃんの声が聞こえたため、俺はベッドの上から降りて下に向かう。


 リビングの前まで来たが、その異様な静けさに俺は少し後ずさりする。那月は確かに下に来てと言っていたし、一階にそれ以外で集まる場所はないはずである。

 その筈なのだが、なぜこうも静かなのだろうか。


 悪戯をされたいわけではないが、他にどうすることもできないので俺はリビングのドアを開ける。


 すると、クラッカーの乾いた音と共に、キラキラと光るテープが飛び出してきた。そのあとに続いて、



『優希、誕生日おめでとー!』



 という、3人の声が部屋中に響き渡る。

 誕生日って、そういえば今日だったかもしれないな、と思いつつ、那月のさっきの態度にも納得がいく。サプライズをしようとして、俺の驚く顔でも想像してニヤニヤしていたのだろう。



「今の優希には実感がないかもだけど、今日が誕生日だったのよ」


「ちょっと前から優希兄のために準備してたの。どう? 驚いた?」


「うん、びっくりした。3人とも、ありがとう」



 そう返しながら、俺は姉ちゃんの発言について少し考える。

 記憶をなくしていた時の俺は、確かに誕生日に関する記憶がなかった。きっと、誕生日は元幼馴染の3人とも過ごすことが多かったから、思い出さないようにしていたのだろう。


 そして、記憶が戻ったことを言うタイミングを逃し、俺はテーブルに連れていかれる。


 どうしようかと悩みながらも、久しぶりの幸せな時間を嬉しく思うのだった。

次話、誕生日パーティーです。


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