第64話 誕生日パーティー
土日と大会があったため、投稿を休ませていただきました。
これで今学期に大きな用事はないため、基本的に毎日投稿できると思います。
パーティーハットを被った3人に連れられて、俺は椅子に座る。
目隠しをされて、頭に何かを被らされる。きっとパーティーハットだろう。
何やら物音がした後、俺は目隠しを外される。
「改めて、優希くん誕生日おめでとう! このケーキは私が作ってきたの。持ってきたときに優希くんに会ったからバレないか心配だったけど、ちゃんとサプライズにできてよかった!」
「これ一人で作ったの? 結構凝ってるけど」
「うん。張り切りすぎちゃって。あはは……」
目隠しを外されると、部屋のカーテンは閉められ、電気も消えていた。目の前には蝋燭の付けられた大き目のホールのケーキがあった。
中々立派なケーキだったので那月にそう聞くと、那月は少し頬を赤く染めて照れたように俯く。那月の言うとおりに張り切って作ったのだろう。
既に蝋燭には火がつけられていて、ちゃんと16本あるのを見て「結構多いなぁ」なんて思っていると、莉子に後ろから肩を叩かれる。
「優希兄、早くしないと蝋燭溶けちゃうよ?」
「ん、そうだな」
俺はできるだけ多く息を吸い込み、蝋燭に向かって吹きかける。同じことをもう一度してやっと火が消え、部屋のカーテンが開かれ電気がつけられる。
一人では食べきれないと思い、台所から皿を三枚持ってきて、8等分してそれぞれの皿にのせる。俺の分の皿はもともとあったため、そちらにも自分の分を取る。
「ん、美味しい」
「そう? それなら良かった」
甘すぎるという訳でもなく、丁度いい味だった。
少し緊張しているような那月にそう伝えると、安心したように笑って緊張を解く。
それに合わせて姉ちゃんや莉子もケーキを食べ始め、俺と同じように那月に美味しいと伝える。
一人4分の1ホールあったのだが、思ったよりすぐ食べ終わってしまい、姉ちゃんたちがプレゼントのようなものを持ってくる。
「私の分はケーキって事でお願い。プレゼント買いに行けなくて」
「いや、大丈夫。凄い美味しかったし、嬉しかった」
立派なケーキだったので、確かに買いに行けなかったというのも納得である。
「最近の優希の欲しいものが分からなかったから、在り来りな物にはなっちゃったんだけど、私たちからはこの2つを」
「開けてもいい?」
「うん、いいよ」
普段から色々貰っているので、欲しいものを言うことは無かったかもしれない。記憶を失っていた間もあったから、それもあるのだろう。
袋の紐を解き、中の物を取り出す。中には、革の長財布とショルダーバッグが入っていた。
「優希兄バッグとかそんなに持っていないし、財布も何年も前から変えてないでしょ?」
「確かにそうだな。ありがとう」
「喜んでくれたなら良かった」
財布を開いたりしながらそう答えると、莉子の言葉を最後に一言も聞こえなくなる。
おかしいと思い顔を上げると、安心しきって頬が緩んだ3人の姿があった。
1番伝えたいことを伝えようと思ったのだが、この状態で言っても大丈夫なのかと少し悩む。
だが、普通のときに言っても変わらないだろうと思い、俺は3人にそれを伝えることにする。
「……今、皆と一緒にこうしていられることが1番嬉しいよ」
中々恥ずかしい台詞なので、3人から顔を逸らして言う。
姿はよく見えないが、こちらに向けた視線が痛いほど突き刺さってくる。
注目されることによって更に恥ずかしくなってしまい、俺は自分でも顔が赤くなっているのが分かった。
3人が尚も言葉を発さないため、どうしようかと考えていると、足音が遠ざかっていくように聞こえ、俺は3人の方を向く。
3人は既に元いた場所にはいなくなっていて、それぞれソファやテレビの前の机など、別々の場所で蹲って何かを呟いていた。
「あの、姉ちゃん大丈夫?」
「あぁ…ダメよ、まだ優希を襲っちゃいけないの。記憶が戻ってないんだから」
「那月?」
「優希くんズルいよ……そんなの嬉しすぎる……」
「……莉子?」
「よくもそんなに恥ずかしい事を……でもそんな優希兄も好きぃ」
何だか勘違いがあるようだった。3人の反応にはこっちが恥ずかしくなってくるのだが、姉ちゃんの反応が気になる。
「記憶が戻ってない」と思われているらしい。記憶が戻ってからのことを振り返るが、確かにまだ誰にも伝えていなかった。
先に伝えておくべきだったかと思いつつ、3人に記憶が戻ったことを伝える。
「あー、その、記憶戻ったんだよね」
『本当!?』
「マジマジ。早く言えばよかったか」
「……優希!」
泣きそうな顔に変化していった姉ちゃんが、俺に飛びついてきた。
「ずっと言いたかった。優希に怪我させちゃってごめんなさい。優希が居なくなるって思うと、怖くて堪らなかった。
お願いだから、もう居なくならないで……」
「大丈夫だよ、姉ちゃん。別に俺は居なくならないから」
姉ちゃんは、自分が動けなかったことに責任を感じていたのだろう。姉ちゃんのせいだとは誰も考えていないものの、姉ちゃんは自分のせいで俺に怪我をさせたと感じていたのだろう。
俺は泣きついてくる姉ちゃんを宥めながら、少し嬉しくもあった。
俺の事を心配してくれる人がいる。俺の事を大切に思ってくれる人がいる。それだけで、俺の心の中は明るく照らされる様な気がした。
もう邪魔者はいない。これからは、心配事から解放されて過ごすことができるのだ。
改めてそれを実感し、俺は肩の荷が降りたのと同時に、3人のことについて少し頭を悩ませるのだった。
次話、姉の悩みです。
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