第48話 変化 後編
少し間違っているところがあったらすいません。
鈴谷side
彼、七瀬優希くんに連絡をしてから1週間が経った。
今までは2人で住んでいた家も、今では私しか居なくなり、寂しくなった。
と言っても、元通りに戻っただけなのだが。
まだ元妻と暮らしていた時の名残りがあり、2人分の食器などが残っている。
早く捨てなければならないな。
そんな事をぼんやりと考えながら、私は1週間前の出来事について想起した。
☆☆☆
自宅の来客用の部屋。私の向かい側には、蒼白な顔をした女性と困惑した顔の少年が座っている。
その後ろには、彼らの両親が立っていて、彼らを睨みつけていたり、呆然と立ち尽くしている者もいる。
「…さて、何でここに呼ばれたか分かるかな?」
「あ、あの、あなた…」
「すいません、何で呼ばれたか分からないんですけど」
妻は怯えたように私を見て、間男である鳳海星は少しイライラしているようにも見える。
鳳くんは、このメンバーや状況を見ても何が起きているか分からないようなので、おめでたい頭で何よりだ。
どうせハッキリ言うまで分からないと思うので、私は証拠から見せることにする。
彼らに向けてパソコンの画面を見せ、
「この動画を見れば分かるかな。鳳くん、私は君の隣にいる人と結婚しているんだよ」
「あ? …てことは、もしかして」
そこまで言った後に、彼らの両親も含め、その場にいる者全員に彼らがヤッている動画を見せる。
流石に鳳くんも何が起きているか分かったようである。
1本目の動画が終わったところで、彼が話し出す。
「あなたが旦那さんなんですか?」
「そうだね。今はまだそういうことになるかな」
「あなた…「今は」って…」
そう。今はまだ彼女と結婚しているが、不倫された上、犯罪行為まで犯した人と一緒に居たいとは思わない。
「まぁ、この事は別に重要じゃないね。ここからが本題だよ」
「…あの、すいませんでした! 俺は彼女に無理やりヤラされただけなんです!」
「え? …か、海星くん? 何を言っているの?」
「俺はそんなつもり無かったんです! でも、無理やりヤラされた上に、動画まで撮られたんです」
「ふむ」
呆れた男だ。私がこの動画を持っていることを疑問にすら思っていないのだろう。
私がこの動画を持っているということは、他の動画も持っているという事だということが分からないのだろうか。
妻はというと、鳳くんを魂が抜けたような顔をして見つめている。
別に証拠なんて沢山ある為、2人のメールでのやり取りを見せる。
「君から誘っているように見えるのは気のせいかな?」
「うっ…いやでも…」
「もう言い訳は大丈夫だよ。すいません、お願いします」
これ以上醜態を見せられるのも苦痛だったため、これまでずっと無言で座っていた隣の男に話しかける。
彼は私が依頼した弁護士で、慰謝料などの説明を任せている。
彼が話を進めていくにつれ後ろにいる彼らのご家族が青ざめていく。
当人達も当然青ざめていたが、鳳くんに関しては、まだ何とかなると考えているかのように見え、下を向いて何かを呟いていた。
話が終わると、鳳くんがまたも話し出す。
「あのーー」
「うちの愚息が申し訳ありませんでした。慰謝料はすぐにお払いします」
鳳くんが話し出すのを遮るように、彼の両親が口を開く。
そして、自分の両親に頼ろうとしていたのか、両親が「慰謝料を払う」と言った途端、驚いたように両親を見た。
彼の両親はまだ良識があるらしい。
それなのに、何故彼がこんな風になってしまったのか。非常に疑問である。
そして、妻の方では、妻が両親にしがみついて何かを懇願していた。
私の弁護士が話し終えた後、彼女は両親から絶縁されたようである。
元々そのつもりで来たのかもしれないが(話し合いの内容は事前に伝えていた。鳳くんは何故知らなかったのだろうか)、突然のことに彼女は驚いたようである。
彼女の両親は私に謝罪したあと、彼女に慰謝料を払わせると言い、それを聞いて彼女が一瞬ポカンとした後、両親にしがみついた。
彼女は今まで専業主婦であり、仕事などしていなかったため、そんな簡単に返せる訳では無いのだろう。
ちなみに慰謝料は、鳳くんに300万、妻に400万である(妻は鳳くんにそこそこお金を使っていたらしいので、その分多くなっている)。
どうせ離婚するため、妻に慰謝料を請求しても問題は無い筈だ。
最近は鳳くんだけだったようだが、調べてみると他の男の影が見えることが多々あった。そう考えると、もっと多くてもよかったかもしれない。
もし仮に納得しなかったとしても、証拠の動画や写真があるため、裁判になろうと怖くは無い。
寧ろ、未成年と致していたことや撮影をした事がバレてしまうため、不利になるのは目に見えている。
彼らが騒がしいので、1度彼らを静かにさせてから話を再開する。
彼女に離婚届を差し出し、
「判子押して貰えるかな?」
「ぅぁ、はぃ…」
今にでも消えてしまいそうな声で妻が返事をする。
一度部屋から出ていき、判子を取ってきてから離婚届に判を押す。
「じゃあ、財産分与についてだけど、ある程度私のものになるんだけど、いいかい?」
「な、なんで? そういうのって二分の一じゃ…」
「基本はそうだけど、この家は私が元から1人で住んでいたものだし、車とかだって私が元から持っていたものだからね。
私の収入も、今会社の事業に使っているからそこまで多くは残っていないよ。君が家にいる間、家事をしていただけではないようだし」
「…じゃあ、私の分は?」
「私たちの間で相談して割合を決めたいと思っているよ。君は有責配偶者ということになるからね」
彼女の両親にも確認を取り、割合は相談して決めることにする。
「家事をしていただけではない」ということに何も言ってこないので、本当にそうだったのだろう。少し残念だが、もう特に思うことは無い。
もともと、彼女は働いたことが殆どない。
私が一目惚れをして、そして彼女と付き合い、結婚した。
これが、彼女が大学4年生の時の出来事で、結婚を前提に付き合っていたため、働く気は無かったようである。
私は、学生時代に友人と起業した会社が大成功し、その頃には大分お金もあった。
今は新しい事業の資金が足りなくて、私の預貯金から役員借入金としてお金を出しているが、その事業もいい方向に向かっている。
会社は今も順調だし、彼女に働かせる気は無かった。
そのため、彼女に残る財産は殆ど無いと言ってもいいだろう。
結婚している間に大きな買い物をした覚えは無い。家も車も、結婚前に私が買ったものだ。
私の現在の預貯金を分けたら慰謝料を返すことは出来るが、妻の手元に残る金額は少ないと思う。
彼女は親に絶縁され、財産も決して多いわけではない。働いてもいない状態で離婚するという状況を理解したようで、急に慌てだした。
「わ、私が悪かったの。だから、やり直さない? ね?」
そう言って彼女は離婚届の端を掴む。
破られたり奪われたりして処分されたら大変なので、私は彼女の手から離婚届を取り上げ、
「無理だよ。私は君のことをもう愛していないからね。そして、もう二度と愛することは無いよ」
「そ、そんな」
そこまで言うと、彼女はガックリと項垂れてしまった。
その後はトントン拍子で話が進み、ある程度内容が決まった後でその場は解散となった。
鳳くんの両親が常に彼を睨み続けていたことを、彼は知っているのだろうか。
☆☆☆
優希side
ーー以上が、鈴谷さんから送られてきたメールの内容である。
その後、奥さんは家から出て行き、今は何とか両親の家に住まわせてもらっているという。
鳳の方も、どうなったかは知らないが、慰謝料は貰ったとの連絡が来た。
まぁ、鳳も家で何かしら両親から言われていることだろう。
取り敢えず、今日は金曜日だ。
明日は久しぶりにゆっくり出来るかもしれない。
とは言っても、まだ考えなければいけないことはあるのだが。
久しぶりの休みに心を踊らせていたが、俺の考えは甘かったようである。
土曜日と日曜日に、またしても面倒臭い出来事が起こった。
次話、訪問です。
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