第39話 半監禁生活
莉子とショッピングモールに行った次の日から、俺は1週間以上殆ど監禁されたような生活をしている。
外出と言えばバイトに行くくらいで、そのバイトにも姉ちゃんと莉子が着いてくるのだから、俺に自由時間はほとんど無かったと言っていいだろう。
何があったかというと、姉ちゃんと莉子に家から出して貰えなかった、というか、離して貰えなかったのだ。
姉ちゃんと莉子の間で何か取引があったようで、一日交替で俺にくっ付いていた。
姉ちゃんが莉子より下手に出ていたのは驚いた。
まず一日目。
朝、起きると体の上に何かが乗っていた。
温かかったのでそれが人だということが分かり、姉ちゃんだと思ってたのに布団を捲ると、そこには俺の胸に顔を埋めた莉子がいた。
「莉子? どうしたんだ?」
「あ、優希兄起きたんだ。今充電中」
「はぁ、充電中?」
「そう。優希兄のエネルギーを補充してるの」
「あ、そう…」
いや、どういう事だ?
莉子が普通にくっ付いて来たのもそうだが、充電て。
そういう事を言うのは姉ちゃんの筈だが、莉子まで姉ちゃんと同じ状態になってしまった。
莉子はそのまま10分ほどその体勢でいて、満足したのか部屋から出ていった。
「…なんだったんだ?」
結局その理由が分からないまま、俺は着替えてリビングへ向かった。
リビングに入ると、そこには椅子に座っている莉子と、何故か2人分の朝食が1箇所、莉子の前に置かれているテーブルがあった。
「あっ、優希兄、ここ座って」
そう言って莉子は席を立ち、俺に自分が座っていた椅子に座れと言ってきた。
何故二人分がまとめて置いてあるのかは気になったが、朝食を食べに来たので大人しく椅子に座る。
すると、莉子が俺の上に座って来た。
「莉子?」
「どうしたの?」
「それはこっちの台詞なんだけど…」
莉子の様子がおかしい。
いつもならこの距離感は絶対に嫌がられるのだが、嫌がるどころか莉子の方から近付いてくる。
俺は別に構わないし、寧ろ嬉しいのだが、こうも突然変わるとやはり少し心配になる。
そんな俺の心配も他所に、莉子はまたいつもとは違う行動を執った。
「優希兄、あーん」
「へ?」
「ほら、口開けて」
「いや、なんでっ」
俺が理由を聞こうと口を開いた隙に、口に箸を入れられた。
口に入ったものを出すのはマナーが悪いので、俺はそれを食べた。
莉子は俺が食べたことに満足したのか、今度はその箸を俺に持たせ、
「今度は優希兄がやって」
「は?」
「ほら早く」
「あ、あーん」
莉子は俺が箸を近づけると躊躇いなく箸を咥えた。
そうした後に間接キスだ、と気づいたのだが、莉子は全く気にしていないどころか、箸に何かが絡みつくような、箸を舐めているような感覚が伝わってくる。
「莉子、本当にどうしたんだ?」
「んー? 優希兄はこういう私は嫌?」
「別にそういう訳じゃないけど…急に変わったからびっくりしたというか…」
「じゃあ別にいいよね? ほら、箸貸して」
莉子は箸を咥えるのを辞めて質問に答えた後、俺から箸を奪い、また俺の口に箸を突っ込んできた。
そんな事が食べ終わるまで続いたのだった。
朝食を食べ終わると、莉子は俺を引っ張ってソファに座らせ、テレビをつけた後に俺の膝の上に頭を乗せてきた。
「録ってあったやつ見るから、このままでお願い」
「それって長さは…」
「1時間くらいだから大丈夫だよ」
「そう…」
トイレとか行く間もなく今の状態になったので、少し不安は残るが、俺は莉子と一緒にテレビを見ることになった。
ーー1時間後。
「面白かったねー」
「そうだな」
思ったより面白かったし、特に尿意などに襲われることも無くてよかった。
そのまま離して貰えると思ったが、結局また捕まり、それから夜までずっと捕まったままだった。
夜になり、風呂に入ろうとすると、またしても莉子がやってきた。
「まさか…」
「そう。一緒に入ろ?」
本当に姉ちゃん化してしまったようで、風呂も一緒らしい。
先に入っていると、莉子が風呂に入ってきた。
小さい時とは違って、成長した莉子の体に、俺は思わず目を逸らしてしまった。
「…別に見てもいいんだよ?」
「いや、なんかマズイだろ。色々と」
同じ空間にいる以上仕方ないところもあるのだが、出来るだけ見ないように気をつける。
暫くすると、莉子も湯船に入ってきて、俺と向き合うような形で入ってきた。
「優希兄、ガタイ良くなったね」
「そりゃまぁ、もう高校生だからな」
「私はどう? 昔より色々成長したでしょ?」
莉子はそう言うと、胸の辺りに手を当てて、何か感想を待っているようだった。
これはなんと答えるのが正解なのだろうか。
正直に言っていいのか、答えない方がいいのか。
迷った末に、莉子が目を輝かせて待っていたので正直に答えることにする。
「えーっと、その…前より大人の女性っぽくなったというか、成長したというか」
「そう? 優希兄は私の事異性としてどう思う?」
「へ?」
「いいじゃん。教えて?」
また答えに困る質問を…。
さっきと同じく目を輝かせていたので、これもある程度正直に答えることにする。
「可愛いと思うよ」
「私の事好きになれる?」
「まぁ、異性として見ればなれるよ」
「そう。それだけ分かれば大丈夫っ!」
そう言うと、莉子はそれ以上何か言ってくることはなく、大人しく風呂に入っていた。
風呂から出て、いつもとは違う一日に疲れ、俺はベッドに向かった。
さすがに莉子もここまでは着いてこなかった。
俺はベッドに入るなり寝てしまった。
朝、またしても何かが乗っている感覚がする。
昨日と同じように布団を捲ると、そこには姉ちゃんがいた。
そして、昨日と同じように、今度は姉ちゃんに捕まる1日が始まった。
☆☆☆
2日目は姉ちゃん、3日目は莉子、と言ったような感じで、1日目と同じ事がかれこれ1週間以上続いている。
たまにバイトで外出する時以外は殆どが2人のどちらかと一緒だった。
まだ昨日と同じ生活が続くのかと思い、少しぐったりとリビングに向かうと、インターホンがなった。
ここまで来ると優希が可哀想にもなってきますね。
次話、訪問者です。
誤字脱字、アドバイスなどよろしくお願いします。




