第36話 帰宅
「んぅー、もう朝?」
「あ…姉ちゃん、起きた?」
「うん、おはよぅ優希。…顔色悪いけど、大丈夫?」
「あ、あぁ…大丈夫だよ」
まあ、大丈夫では無い。
何度か寝てみようと思ったのだが、その度に2人の内どちらかが動いたり(胸に顔が挟まれたり、上に乗られたり)とかして、結局寝ることは出来なかった。
2人に挟まれた状況を我慢したことにより、精神がすり減ったり、寝不足だったりと、全体的に調子は悪い。
別に2人のせいでは無いので、出来るだけ調子が悪い素振りを見せないように気をつけなければならない。
「ふわぁぁ、優希くんおはよ」
「あぁ、おはよう」
「顔色悪いね? 大丈夫?」
「大丈夫だ。それより、離して貰ってもいいか? 朝食作りに行かないと」
姉ちゃんは途中で離してくれたのだが、那月がキツく抱き着いて来たため、ほとんど動けなかったのだ。
「あ、ごめんね?」
「いや、大丈夫」
那月は少し照れたような素振りを見せると、大人しく俺の事を離してくれた。
今までならもっと恥ずかしそうにしていたのだろうが、那月は落ち着いているようだ。何か心境の変化があったのだろう。
那月が離れてくれたので、俺は朝食を作りにキッチンへ向かう。
まだ7時過ぎなので、他の2人は起きていないみたいだ。
シンクの中には、キレイに中身が無くなったカップ麺のカップが残っていた。
昨日最後に見た時には無かったので、石崎が夜食にでもしたのだろう。
体調が優れないため大したものは作れないが、全員が揃う前に、できるだけ素早く準備をした。
朝食が出来上がったため、他の4人を呼びに行く。
那月と姉ちゃんはすでに起きていたので、早めに出てきた。
瀬川と石崎の方が何故か全く起きてこない。何故だ? 昨日は特に物音とかはしなかったから、大人しくしていると思うんだけとな。
「おーい、入るぞー」
何度呼んでも来なかったので、一応声をかけてから部屋に入ることにする。
部屋に入ると、2人はまだベッドの上にいた。1人は固まっていて、もう1人はまだ寝ていた。
「石崎、大丈夫か?」
「優希ぃー、助けてくれぇ」
固まっていたのは石崎の方で、寝ている瀬川に抱き着かれて動けないでいたのだ。
石崎が全く動けなさそうだったので、瀬川を起こすことにした。
「瀬川、起きろー」
「うぅん…翔太ぁ?」
「違う、優希だ。早く起きろ」
「やだぁ、眠い」
ダメだこりゃ。昨日は普通に起きていたのに、何でこうなった。
瀬川を起こすことも諦め、手を離させることにした。
結果的に言うと、相当な力で抱きついていたため、一筋縄では行かなかったが、俺も男なので、何とか引き剥がす事に成功した。
「優希、ありがと……あのままだと死んでたかも」
「まぁ、取り敢えず飯できたぞ」
「おう! ちょっと待っててくれ」
石崎が部屋から出ていったので、瀬川を起こすことにする。
「おーい、もう起きてるんじゃないか?」
「………バレた?」
「どこからかは知らないけど、あそこまで強く抱き着いてたら分かる」
「あはは……それじゃ、ご飯できたんだよね? 待ってて」
「……はぁ、分かった。早く来いよ」
瀬川が抱きしめる力は、寝ているとは思えないものだった。
☆☆☆
その後、俺たちは朝食を食べてしばらくゆっくりした後、荷物を纏めて帰り支度をした。
「いやー、結構楽しかったね!」
「そうね」
「まぁ、色々あったけどな……」
「やっぱり優希くん体調悪い?」
「いや、大丈夫だ…」
本当の事を言えば、今すぐに寝たい。
元々徹夜とかはした事がなかったので、結構キツかった。
頭重いし、体バキバキだし…。
「まぁ、俺は優希の作った飯食べれてよかったな!」
「お前ここまで来てそれか」
石崎は飯が1番らしい。ただ、それが1番ではなくなる日が来るのもそう遠くは無さそうだ。
「じゃあ帰るか」
「そうだね」
俺たちは電車に乗り、自分たちの町へ戻った。
俺は電車の中で爆睡してしまったから分からなかったが、電車に乗っている時は結構楽しかったらしい。
☆☆☆
家に着いたら即行で寝ようと思ったいたのだが、そうは行かないらしい。
玄関には妹の莉子が待ち構えていた。
「優希兄、遊び行こ」
「えぇ……俺疲れてるんだけど」
うっ。文句を言うと鋭い目付きで睨まれた。
段々と学校での姉ちゃんに似てきた気がする。
「分かった分かった…行くよ」
「そう? じゃあ準備してくるから、待ってて?」
俺が一緒に行くと言うと、途端に莉子は元気になった。
俺は正直憂鬱だったが、拒否する気にもなれなかったので、一緒に行くことにした。
次話、莉子と遊びに行きます。
誤字脱字、アドバイスなどよろしくお願いします。




