第25話 優希改造大作戦 ④
神坂さんがこちらへ向かってくるが、出来るだけ知らないフリをする。今関わりたくない。
俺が全くそちらを向かないようにしていると、何故か神坂さんから話しかけられた。
「あの、すいません。お兄さん今暇ですか?」
「え?」
俺と気付かずに話しかけられたことにも驚いたが、久しぶりに見ると結構変わったなと思った。
学年で三本の指に入るにしては肌が荒れているし、何とか隠しているようだが、大分腹回りの肉付きが良くなっている。
俺がしばらく無言だった為、よく聞こえてないと思ったのか、もう一度同じ質問をされた。
「あの、今暇ですか? 良かったら私と遊びませんか?」
「いや、すいません。今人を待っているので」
そう言って目の前の更衣室を指さす。
俺の声を聞いても気づいた様子は無いので、それ程までに俺に興味がなかったのかと少し……、何かを感じた。
それと、一応録音する事にした。鳳くんの事が好きなはずだし、何か使えるかもしれない。
「それって彼女さんですか?」
「いや、そういう訳じゃないですけど」
「だったらいいじゃないですか。ね、行きましょうよ」
「いや、だから……」
彼女じゃないからと言って勝手にどこかに行って良い訳では無いし、それを平気でするのは最低では無いだろうか。
俺が頑なに拒否していると、俺の気を引くためなのか、俺の腕に胸を押し付けて横に座ってきた。
神坂さんは確かに胸は大きいが、別に正直どうでもいい。
大きいのが嫌いってわけじゃないよ? ただ、こんな人のモノ押し付けられても嬉しくは無い。
それでも俺が反応しなかったので、今度は無理やり俺を引っ張って行こうとし始めた。
「ちょっと、引っ張らないでください」
「だったら早く着いてきてくださいよ! こんな可愛い女の子に誘われてるのに、何が不満なんですか?!」
鏡をよく見たのかは知らないが、遂に本性を表した。
何が不満って、人を待っているのに無理やり連れていこうとするところだよな。
俺が困っていると、更衣室のカーテンが開かれた。姉ちゃんだ。
「ちょっと、あなた。何してるの?」
「げっ、詩織先輩……。この人を連れていこうとしているだけですが」
「彼、私の連れなの。やめてもらえるかしら」
「チッ、……分かりました。それでは」
そう言って神坂さんは大人しくどこかへ行った。姉ちゃんは偉大である。
「ごめんね、姉ちゃん」
「……あのクソ野郎、どの面下げて優希をナンパしてるの? それに今のあなたは大して可愛くなんてないわ。鏡見た事ないのかしら」
「あの、姉ちゃん?」
「あら、優希。大丈夫だった?」
「大丈夫だよ」
やはり姉ちゃんは神坂さんが嫌いらしい。珍しく姉ちゃんの口から「クソ野郎」が出た。
それまであまり気づかなかったのだが、姉ちゃんはしっかり水着に着替えていた。
白のフリルが着いたスカートのビキニだった。あまり露出も多くなく、姉ちゃんらしくていいと思った。
「姉ちゃん、水着似合ってるよ」
「そう? ありがとう!」
「似合ってる」と言うと、姉ちゃんは凄い嬉しそうだった。少し顔を赤らめて、フニャフニャとした笑顔をしていた。まぁ、事実だからね。
「ホントだよ。姉ちゃんのイメージにあってて、いいと思う」
「そう。一応他のもあるから、ちょっと待っててね」
笑顔のまま、姉ちゃんは更衣室に戻り、その後も何着か着替えていた。着替える度に俺が褒めたせいか、結局全部買ってしまったらしい。そんなに海行く予定ないのに。
☆☆☆
水着を買ったあとは、夕方まで姉ちゃんの服を買ったり、カフェに行ったりして過ごした。
今日買ったものは大体姉ちゃんが払っていたので、凄い出費なのではないかと思ったが、全然平気らしい。理由は分からないが、痛くも痒くもないらしい。
「姉ちゃん、今日はありがとう。楽しかったよ」
「そう? そう言ってくれると嬉しいわ」
「……そういえば、莉子って大丈夫なのか?」
そう。美容院を出ていった後、俺の方には連絡が来ていなかった。そんな遠くないので大丈夫だとは思うのだが、少し心配にはなる。
そもそも、莉子から連絡をしてくる事は、ここしばらく無いのだが。
「大丈夫よ。家着いたって連絡あったわ」
「そっか、良かった。…俺にもしてくれればいいのに」
「まぁ、仕方ないわよ。思春期と反抗期が丁度重なってるからね」
そう言われても、やはり寂しい。着いてきてくれたのは嬉しかったのだけれど。
「さぁ、優希。夏休みはまだまだこれからよ。一緒に楽しみましょうね」
「うん。そうだね」
そう。夏休みはまだまだこれからなのだ。もしかしたら莉子とまた前みたいに話せるかもだし、まだ楽しい事はいっぱいできるのだ。
そう思いながら、俺たちは帰路に着いた。
とりあえずこれで優希改造大作戦は終わりです。次話、みんなで遊びに行きます。
誤字脱字、アドバイスなどよろしくお願いします。




