第04話 鏡裏の恋文、送信完了
ダイニングテーブルに座っている。手元には白い皿が一つ。中は空だ。
セレナはメイドに軽く手を振った。料理は要らないと伝える。
「……少し、食欲がなくて」
メイドが怪訝そうに部屋を出る。ドアが閉まる音。
彼女はすぐに立ち上がる。椅子の脚が床を引っ掻く。
胸の中で鼓動が走る。まだ早い。
手を伸ばす。壁に掛けた装飾鏡を外す。
鏡の裏に、薄桃色の紙が貼り付けてある。
そっと剥がす。四隅に蝋がついている。
「……ここなら、誰も見つけられない」
彼女の声は低く、乾いている。
机の上に手紙を広げる。窓の光が文字を照らす。
「親愛なるG様へ」──優雅な筆跡が、指先の震えと重なる。
胸が苦しい。呼吸が浅くなる。
彼女は首を振る。今は感情に流されるときではない。
仮面のペンダントを握りしめる。温かさが掌に染みる。
もう一方の手で、魔法の鏡を取り出す。
鏡の表面を、手紙の上にかざす。ゆっくりと動かす。
紙全体が、鏡の中に青白く浮かび上がる。文字も、折り目も、すべて。
「……撮影完了」
彼女の息が、鏡を曇らせる。
指で円を描く。「証拠画像、送信」
鏡が微かに震える。青光が手紙の上を滑る。
次に別の操作。指先が鏡面を叩く。
「緊急相談。不倫を超える陰謀の可能性」
返信を待つ。時間が粘りつくように長い。
胃がしゃくのように疼く。冷たい汗が背中を伝う。
鏡が震える。文字が浮かぶ。
「了解。専門家と協議へ。画像を分析」
続いて別のメッセージ。
「送信経路、安全確認済み」
セレナは深く息を吸う。肺が冷たい空気で満たされる。
「……これで、大丈夫」
しかし、胸の鼓動は収まらない。指先が冷え切る。
彼女は手紙を再び鏡の裏に隠した。蝋で固定する。
装飾鏡を元の位置に掛け直す。少し歪んでいる。
手で押さえて調整する。指先に埃の感触。
「ご夫人、本当に何もお召し上がりにならないのですか?」
ドアの外から、メイドの心配そうな声が聞こえる。
「……後で、軽いものを」
セレナはそう答える。声は平静を装っていた。
メイドの足音が遠ざかる。
彼女はテーブルに手をつく。膝がわずかに震える。
鏡をもう一度覗く。新しい文字が浮かんでいる。
「協議中。待機を。危険を感じたら即退避を」
セレナは小さく頷く。拳を握りしめる。
爪が掌に食い込む。鋭い痛み。
「……もう、逃げない」
彼女の囁きは、誰にも聞こえなかった。 ダイニングテーブルに、白い皿が一つ置かれている。中は空だ。
セレナはメイドに軽く手を振った。料理は要らないと伝える。
「……少し、食欲がなくて」
メイドが怪訝そうに部屋を出る。ドアが閉まる音。
彼女はすぐに立ち上がる。椅子の脚が床を引っ掻く。
胸の中で鼓動が走る。まだ早い。
手を伸ばす。壁に掛けた装飾鏡を外す。
鏡の裏に、薄桃色の紙が貼り付けてある。
そっと剥がす。四隅に蝋がついている。
「……ここなら、誰も見つけられない」
彼女の声は低く、乾いている。
机の上に手紙を広げる。窓の光が文字を照らす。
「親愛なるG様へ」──優雅な筆跡が、指先の震えと重なる。
胸が苦しい。呼吸が浅くなる。
彼女は首を振る。今は感情に流されるときではない。
仮面のペンダントを握りしめる。温かさが掌に染みる。
もう一方の手で、魔法の鏡を取り出す。
鏡の表面を、手紙の上にかざす。ゆっくりと動かす。
紙全体が、鏡の中に青白く浮かび上がる。文字も、折り目も、すべて。
「……撮影完了」
彼女の息が、鏡を曇らせる。
指で円を描く。「証拠画像、送信」
鏡が微かに震える。青光が手紙の上を滑る。
次に別の操作。指先が鏡面を叩く。
「緊急相談。不倫を超える陰謀の可能性」
返信を待つ。時間が粘りつくように長い。
胃がしゃくのように疼く。冷たい汗が背中を伝う。
鏡が震える。文字が浮かぶ。
「了解。専門家と協議へ。画像を分析」
続いて別のメッセージ。
「送信経路、安全確認済み」
セレナは深く息を吸う。肺が冷たい空気で満たされる。
「……これで、大丈夫」
しかし、胸の鼓動は収まらない。指先が冷え切る。
彼女は手紙を再び鏡の裏に隠した。蝋で固定する。
装飾鏡を元の位置に掛け直す。少し歪んでいる。
手で押さえて調整する。指先に埃の感触。
「ご夫人、本当に何もお召し上がりにならないのですか?」
ドアの外から、メイドの心配そうな声が聞こえる。
「……後で、軽いものを」
セレナはそう答える。声は平静を装っていた。
メイドの足音が遠ざかる。
彼女はテーブルに手をつく。膝がわずかに震える。
鏡をもう一度覗く。新しい文字が浮かんでいる。
「協議中。待機を。危険を感じたら即退避を」
セレナは小さく頷く。拳を握りしめる。
爪が掌に食い込む。鋭い痛み。
「……もう、逃げない」
彼女の囁きは、誰にも聞こえなかった。
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