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忌子物語  作者: あむ
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【49話】見送り

──翌日、早朝。大門前。


「行くわね。ルナちゃん。」

「はい、いってらっしゃい。お気をつけて!」

ルナとローバが大門の前にいる。

ルナの髪はポニーテールで整えられている。

当然だが髪留めは昨日もらったシュシュだ。


「うん、ルナちゃん、留守番よろしくね。この家のこと任せるわ。」

「はい。ちゃんと守ります。」

グッと拳を握るルナ。

それを見るローバ。


「あの...ルナちゃん。」

「はい?」

「...おいで。」

両腕を大きく開くローバ。

ルナはその意味を汲み取り、近づく。

ローバはそんなルナをギュッと抱きしめた。

何も言わず抱き返すルナ。


「いい?食べ物もちゃんと食べて、お勉強も一生懸命するんだよ?」

「はい、わかりました。」

「ラーク様はすぐこちらに戻って来るから、ラーク様と楽しく過ごしてね?」

「はい。」

──しばらくそのままいる二人。


「...ごめんね。」

「何がですか?別に謝ることは──。」

「ううん、私にはあるわ。だから、ルナちゃん、ごめんなさい。」

ルナの言葉を遮り謝るローバ。


「僕は本当に大丈夫です。」

「うん、そう。ありがとう。」

鼻をすする音がするルナ。


「必ずラーク様と一緒に...。」

「はい。」

しばらくそのままいる。


「──ローバさん、心配しないで。僕ってしっかりしているから安心って言ってたじゃないですか。」

笑いながら安心させるルナ。

離れようとする。


「そうね。ルナちゃんなら本当に安心できるわ。」

そっと離しながら笑うローバ。

目元には涙の跡がある。


「これからティアラとラークさんに追いつかなければならないんですよね?

早く行ってください。

僕は本当に大丈夫です!」

このままだと埒があかないんだろう。

ルナは安心させながら、送り出す。


「うん、そろそろ行くね。ルナちゃん。」

「はい。」

「元気にしていてね。」

「んもう──、早く行ってください。」

苦笑しながら言うルナ。


「うん、覚悟できたわ。じゃあ、本当に行くわね。」

ルナから離れて手を振りながら森の奥に行こうとするローバ。


「あのっ、ローバさん!」

急に呼び止めるルナ。

少々離れたところで振り返るローバ。


「ありがとうございます!」

大きくお辞儀するルナ。


「うん。こちらこそありがとうね。ルナちゃん。」

顔を上げにっこりと笑うルナ。

目には涙が溜まっている。


ローバもにっこりと笑う。

そしてそのまま振り返り歩き出す。


──しばらく。

ローバは大門から随分と遠くなったが、時折振り返るのが見えた。

それに合わせて大きく手を振るルナ。


とうとうローバの姿が森の奥に消えた。

ルナはしばらくその場に立っていた。


「──。」

無表情でボソッと何かを呟くルナ。

そのまま振り返り隠居地に入った。


──隠居地の中。

元々静かな場所ではあったが、その寂寞は更に増していた。


ルナはこの隠居地の中で一人でいた事が少なかった。


訓練やお風呂中にはラークがいて、

食事や家事にはローバが、

その他の時間はティアラが常に付き添っていた。


今は一人となった。

まだ十歳くらいの子供だ。

この寂寞感は耐え難いものがあるだろう。


だが、ルナは淡々と食堂に行く。

ローバと共にした朝食の後片付けを黙々とこなす。


その後、訓練場に行きいつも通りの午前訓練をした。

昼食を取り、昼寝をし、午後の訓練もする。


ボール投げとか組手の相手がいなくなったため、この間の訓練はラークが一人でできるように調整していた。

基本的には一人でできるように基礎訓練や剣術姿勢転換の時間が増えていた。

また組手の時間の間は、仮想の相手を頭で連想させ、それを相手に組手をするイメージトレーニングが新しく組まれた。


方法は簡単だった。

姿勢を構える。

目を閉じる。

頭の中で仮想の相手を思い浮かべる。

その相手の攻撃を身を動かして避ける。


仮想の相手はティアラだった。

そのティアラが徐々に強く、速くなる。


頭の中で相手の器量を実戦より強く設定する。

そういう訓練だ。


それが終わると、ラークが作った日課表をチェックする。


訓練場から出て、お風呂に向かう。

ラークがいないゆえにマッサージなどはない。

だが、お風呂の後に一緒に遊ぶティアラもいない。

ローバもいないため、夕食のお手伝いをする必要もなかった。

それゆえに、長く浸かった。


髪の毛を乾かすのは得意ではなかった。

いつもティアラとローバがしてくれていたのだ。

一生懸命水気を拭う。


その後、夕食を用意して食べる。

簡単にハムや野菜を挟んだサンドイッチや果物だった。


その後に寝室に入った。

そう初日が終わろうとする。


その時、テーブルの上にある紙が目に入った。

近づいて手に取る。


──ティアラが書いた手紙だった。


そっと封を開ける。

手紙を取り出す。

所々に乾いた跡があった。

見慣れた可愛い文字が書かれていた。


『──親愛なるルナへ。

初めてのお手紙です。

だから、どう書けばいいのかなと悩みながら文字を書いています。


ルナがこの手紙を見ているということは、おそらく私はもうラークと一緒にティアレン森の中かもしくはもう町に着いている頃でしょう。


さっきルナが倒れちゃって本当に驚いちゃいました。

ローバからは大丈夫だと聞きました。

でも多分私が出発する時までは起きれるかどうかわからないとのことだったから、だからお手紙を残します。


えっとね、やっぱり敬語は難しいです。

だから下手なお手紙でも見逃してほしいです。

だって初めてなんだもの。


このお手紙を書こうとしたら、ルナと初めて会った日を思い出しちゃいました。

着ていた服はボロボロで、荒れた髪の毛に、とても臭くて...。

最初は本当に森から紛れ込んで来た魔物か何かかと思っちゃった。


でも、実はとってもいい子で、何事にも一生懸命やる子だなって。

それにワガママな私にいつも合わせてくれたりね。

本当にありがとう。

あなたは私の自慢の家族です。


シュシュは今付けているのかな?

気に入ってくれたら嬉しいです。

ローバと話して、シュシュを作りました。

初めて作ったわりには可愛くなって、かなり自信作です。


それを見て私を思い出してほしいです。

言っても半年くらい後にまた戻ってくるけど。


今はしばらく離れてしまうけど、今度は絶対に一緒に行こうね。

王宮で機会があったら、ルナのことをお話したいと思います。

そうしたら次は堂々と一緒に行けるもん。

私は勇者候補です。

きっと許してくれます。


私たちの家、ちゃんとお留守番しててね。

ラークは意地悪だし、かなり幼稚だけど、ルナがいれば大丈夫。

ローバも言っていました。

あなたなら任せられるって。


でも、私はローバがそう言う前からルナを信じていました。


もうそろそろお手紙を閉めようと思います。


最後に、元気でね。

いつも元気だったのに、最後にそう倒れちゃうなんて...。

心配です。

しっかり食事もして、ラークと楽しい時間を過ごして、訓練も頑張って。


私が帰って来る日を、ルナとまた会える日を楽しみにしています。

だからルナも楽しみにしてて。


すぐに帰って来るから必ず待っててね。

お土産もいっぱい買ってきます。

大好きです。ルナ。


──ティアラ』


読み終えたルナ。

手紙を閉じて、大事にしまう。

表情は見えない。


ベッドの布団に潜り込んだ。

ひんやりした布団の中を感じて、一瞬ブルッと震えた。

そのまま縮こまって横になる。

目を閉じた。


普段なら十分だったベッドが今や随分と広い。


──


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