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忌子物語  作者: あむ
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【41話】お外

ローバは今回の定期報告の際に、王宮からの手紙を受け取った。


戻ってくる道中の野営でその内容はすでに読んである。

そしてこれは隠居地のみんなにも関わることであった。


本来なら悩むことはないだろう内容だが、今は違う。


──

午前中の訓練が終わり、昼食の片付けが済んだ後。


解散する前にローバはみんなを集める。


「お知らせがあります。」

そうローバは告げる。


「実は今回の報告の際に、王宮からのお手紙をもらいました。」

一拍置くローバ。


「勇者候補であるティアラは本来、成人になる直前である13歳の直前に王宮に向かわなければなりません。

ですが、今回、王宮でティアラの成長を見たいと、王宮の貴賓として招待をしたいとのことです。

そのために騎士団を派遣する、ということです。」


「ほう、これはまた珍しい。そんで?それはいつだ?」

勇者候補は成人になる直前までは基本的に非公開だ。

これはこの王国で暮らしている誰でも知っている常識の内容である。


「その詳細は書かれていませんわ。ただ、そういった内容を伝える方を伝令として送るらしいです。」


「...そうか。」


「そこで、です。私とティアラはこの件に関して問題はございません。当事者ですので。

ですけど、正直...ラーク様のルナちゃんはどうされますか?

護衛で来る騎士団はまだ時間があるからいいとして、伝令の方です。

一応...ラーク様もご存知の通り一応ここは機密地域ですので。」


「...そうだな。俺は別に構わない。

ぶっちゃけその伝令が俺を見たところで問題は発生しないと断言する。

いや、断言は言い過ぎだが、一応俺の冒険者の権限があればな。

とにかく大丈夫だろう。

だが──」

自分は平気だと断言するラーク。


そしてルナを見る。

まっすぐな瞳でラークを見ていた。


「だが、こいつは違う。

悪いが、俺はおいといて、こいつが恨の抑制を完璧にしない限り、人様らが生活している場所にはいけない。

リスクが高すぎる。」

と言い切るラーク。


「そこでだ。」

ラークは提案する。


「もし、おまっ...ローバとティアラが大丈夫なら、ここで匿ってもらいたいんだが。」


「バレないとなれば、大丈夫かと思いますが。やっぱり恨が問題なのでは?」


「そう、だからルナは、ここしばらくアンクレットは絶対に肌身離さない。つけっぱなしだ。

訓練場にある恨の訓練のための柱はティアラの部屋に移動させる。

念のための措置だ。

もし光が漏れてもティアラの魔法の練習とかでごまかせる。

それを維持する。」


「なるほど。わかりました。ラーク様がおっしゃるのであれば、問題はないでしょう。」


「ルナ、お前は今も頑張っている。」


「はい。」


「だが、もっと頑張ってくれ。

もっと先になると思ったが、しょうがない。

できるだけ恨を抑えられるように、励め。

だからって焦ってはダメだ。」


「はい、がんばります。」


「また、今まではブロンしか来ないところだったからルナにも出迎えさせたんだが、それも今はダメだ。

しばらくは俺とローバがやる。

その間、お前はティアラの部屋にいろ。

食事やその他諸々は全部俺らが用意する。」


「...はい、わかりました。」

ルナは、不安そうに間をおいて返事をした。

その時、ふと頭にポンと荒く手が乗っけられる。

横に座っていたラークだ。


「大丈夫だ。俺は今まで通りお前を信じる。

だから、お前も今まで通り俺を信じろ。」

そしてクシャッと荒く撫でた。


「すまない。少しだけだ。」

なぜか謝るラーク。

ローバが近づいて、ルナの震えそうな手をそっと握る。


「ルナちゃん。怖がらなくても大丈夫よ。もし何かがあれば、大人たちに任せなさい。」

と優しくルナに応えてくれた。


「ルナは私が守るんだから!」

と抱きつくティアラ。

この三人を見て、ルナはいつの間にか不安そうな仕草はなくなっていた。


──

午後の訓練は中止となった。


ルナは大丈夫だと言っていたが、ラークとローバは中止させた。

ティアラもルナと遊びたいと手を引いて大門前に向かう。


休息を強行した理由はルナの精神状態も重要だからである。

ルナに、あなたはこの隠居地では招かざる者だと、改めて言ったようなものだ。

そしてルナはまだ子供である。

平気と言ったが、内心は決して平気な訳ない。


そんなルナのために午後の訓練は中止となり、ローバは美味しいものを作る。

ラークは早速訓練場の柱を抜き、ティアラの部屋に設置した。

外部の柱はおいといて、内部の柱や入口の柱をそれぞれティアラの部屋の角とドアの前に置く。

そして以前、ティアラがたくさん作った魔力結晶を入れる。

これからはこの魔力結晶は定期的に入れ替えなければならない。

なくても大丈夫だが、念のためである。


──

その夜。

ルナとティアラは一緒のベッドで横になっていた。


「ルナ、寝てる?」

ルナを呼ぶティアラ。


「うん?寝てないよ。」

返事をしながらティアラを見るルナ。


「あのね?私初めてなの。お外に出るの!だからすごくワクワクする!」

目をキラキラさせながら話すティアラ。


「うん、そうだね。きっと楽しいと思うよ。」

ルナにとっては外はいいところではない。

痛くて恐ろしいところであった。

あえて、それを言わずにただ相槌をうつ。


「うん!王宮はまたどんなところかな?

きっと素敵なお城と素敵な王子様とか、そんな人たちにお会いできるんだよね?」

「そうだね。」

短く相槌をうつルナ。


「私ね、外でしたいことがいっぱいあるの!例えば──」

話が続くティアラ。

外への羨望があるティアラはしたいことを、ごまんと並べる。

それに相槌をうつルナ。


ふとティアラが急にルナのほうに向いた。


「でも、やっぱり残念かも。」

「何が?」

「ルナと一緒に行けないじゃない。」

急に少し落ち込むティアラ。


「大丈夫。また次の機会があるよ。」

優しくティアラの頭を撫でるルナ。


「うん!次はぜっっったいに一緒に行こうね!」

とルナと約束するティアラ。


「うん、そうしようよ。」

「その時は、私の方がお外の先輩だからいっぱい案内するからね!」

と言うティアラ。

実のところ、ルナの方が先輩だ。

それからしばらく外に出ることへの話をする。


──しばらくして、ティアラは静かに寝息を上げていた。


「おやすみ、ティアラ。」

布団を掛け直し、仰向けになる。


──ルナとティアラの交わした約束は、最後まで叶えることはない。


──

天井を見上げる金色の瞳は、夜遅くまで閉じることはなかった。


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